春の夢
 わたしは、ステンドグラスをはめてある扉の前にいる。
 七色の光がこぼれ、乱反射した色彩が、頬や手を染める。
 この先には何があるのかと反芻してみる。
 答えなど何もないのかも知れないし、何か求めているものがあるのかも知れない。絶えず、問いかけながら、期待している心は、扉のノブを握りしめ、向こう側の世界へと歩みを寄せる。
 緑の蔦に絡まる庭。多量子に満ちた世界は、万華鏡を広げたように、視点の変え方で、見え方が違う。ある視点ではまっすぐに、また別の視点では歪んで見える。こうした空間認識の違いが、白日夢のような定まらない定量的ではない場所に誘う。
 遠くに見える月は、重なりがだぶり、若干ズレて見える。まるで、赤子の折り紙のように、輪郭がぼやけていて、小さな数ミリのズレの折り返しが、先端にいけばいくほど大きな狂いになったように見える。
 赤茶色いトパーズの月は、輝きと透明感を誇示しながら、光の落ちたダウン照明のように、辺りを薄く照らしている。
 木々は、眠りを妨げられ、夜風にさらされながら、カサカサと乾いた音で木の葉を揺らした。
 夜に咲く月見草の白い花たちが、小さく囁くようにして、風と共に踊っている。
 まるで、目の前に広がるあぜ道の道しるべとして―――わたしは、柔らかな絨毛の土を踏み、足早に先を目指す。支えの無い身体は、空気に足を取られそうで、気をつけながら、慎重に心を落ち着かせて歩く。
 眠りの浅いまどろみは、自分を見失わせてしまう。
 ルイス・キャロルが書いた不思議の国のアリスのように。アリスは一体この世を忘れて何に惹かれてしまったのだろう。うさぎの後を追いかけながら。
 ただし、わたしの世界では、うさぎも、チェシャ猫も、いかれ帽子屋もいない。
 ただ歩いている。歩いているだけなのだ。
 ナイチンゲールの小さな鳴き声を頼りに。
 この庭の先に何かあるという手ごたえに似た確信があった。
 木々を抜けると、一人の少年がいた。
 少年の瞳は、右側が黒く、左側がエメラルドグリーン。頬には涙型の装飾がついている。手には、鳥籠に入れられたナイチンゲールを持ちながら。
 春の青嵐が、わたしと少年を包み、わたしは目が開けられなくなった。
 少年がわたしの手を握る。


 

 ベットの上には、鳥籠を持ったピエロの人形が横たわる。
 側で眠っているわたしが起きるのを待ちながら、夜と朝が交わる時間に。



 
青空
2016年03月26日(土) 03時24分11秒 公開
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No.2  青空  評価:--点  ■2016-04-24 03:55  ID:HKNVg/ZgRqk
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 こんばんは!(==ね、眠い。うわー眠い。→寝れないので隅がたまっている。

 こんな夢を見てください。あなたはだんだんこんな夢がみれる〜〜〜〜〜〜〜

 雰囲気で酔わせたいタイプなので(−−;ほ、本当か? ちなみに、上は催眠療法(−−; 酔っぱらうときは決まって乗り物酔い。乗り物乗って小さい本読むときは決まって軽くえずきます。

 ズケズケ突っ込まれても少しぐらいしかお返しできませんが、だってハードルが高いしとビリギャルが言いそうな台詞で、目を横流ししませう。

 ありがとうございました。
No.1  時雨ノ宮 蜉蝣丸  評価:40点  ■2016-04-20 23:10  ID:eFOY3cHRZZU
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こんばんは。
風景が美しい、まさに春の夢。
最初のステンドグラスで、うっかり外は昼間なのだろうと思ってしまいました。透けているのは月光なのですよね、明暗(昼夜)がそこでごっちゃになりそうです。とはいえ、こういう物語にズケズケ突っ込むのはナンセンス。
万華鏡、月、庭、鳥籠、ピエロ。あぁなんかもう、好きな物ばっかり。雰囲気で酔わせるのが好きなのですが、酔わされるのも大歓迎なので。

こんな夢が見たいです。ありがとうございました。
総レス数 2  合計 40

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