庭園 |
夢のように暖かな空。緩やかに続く庭園。青と緑の空間。白いパラソルの下のテーブルに僕はいる。 硬くなった日々の隙間。少しだけ柔らかな昼下がり。 コーヒーをホットで、サラダクレープに、ポテトチップ。 塩気のあるポテチに、コーヒーは良く馴染む。風が少しだけ吹いて、喫茶店の昇りを揺らしている。もちろん、南風だろう。庭のすみっこに並んだパンジーは、紫や黄色だけではなく、赤のものまで整列している。 あとは君がいればパーフェクトなんだろうけど、一生出会えないのはわかっている。それでも僕のことを追い続けるのだろうか。僕はなんだか走るのが億劫になって、何時の間にかふらふらと自転車を漕ぐ癖がついた。 少しずつ日々が変わっていく。自分も変わっていく。 でも、まるで今は何も恐れる必要もないほどの晴天に風が、そんな気持ちを緩めてくれている。 僕は変わっていくのが怖かった。あの子に注ぐ情熱が、どうしても減っていくことも、嫌だった。 でも、今は「良い方に」、うーん、「温かい方に」変わっていけたら良いなと思う。 椅子の背もたれに寄っかかって、大きく伸びをする。深呼吸があくびに変わっていく。 君に見せたかった景色を、どれだけ僕は映し出せただろう。きっとまだまだ、なんだ。宝物のような風景を、少しずつ、少しずつ、増やして、リュックに詰めて行こう。色んな絵の具を拾って明日へと塗って行こう。まずは色鉛筆から。 空になった白の食器をカウンターに持っていき、僕はまた銀の自転車に向かう。 |
えんがわ
2021年12月17日(金) 16時24分44秒 公開 ■この作品の著作権はえんがわさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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