終端からの始まり |
絶望と狂気が手を取った世界で 勇気と希望が消えた 常識と無垢が死に絶え 悪意と狂気が高笑いをし 残虐が産声を上げた 人々は瞳に闇を纏う そんな光届かぬ世に 純白の翼と光を纏った少年と 漆黒の闇色の翼と深淵を纏った少年が現れた 創造主の気まぐれか 光と闇を纏った少年は無二の親友で 皮肉にも同じ少女を愛していた 光を纏った少年はその光で 人々の心に希望を芽吹かせて行った 光の少年の周りには 共に立ち上がった理性と誇り 少年の誕生と共に目覚めた常識と真実が 少年と共に人々を光へと導いて行く そんな少年のもとに人々は自然と集まった 闇を纏った少年のもとには 纏う深淵故に誰一人残らず 代わりに絶望と恐怖・悪意に狂気 そして闇の少年と共に生まれた残虐だけが変わらずに居た 二人の少年を知る少女は 闇を纏った孤独な少年の傍らで少年の孤独を癒す事を選んだ 光と闇の闘いが表面化した時 絶望と狂気が光の少年を滅ぼそうと挑んだが光の力で消え去り 変わりに希望と勇気が生まれた 悪意と狂気が怒り狂い襲い掛かるが 纏った光の力で浄化され 愛と無垢に生まれ変わった 光は世界に満ちて行き 闇の深さは浅くなり その姿を消して行く 最後まで抗った残虐は 光の少年の手によって消滅し 後から善が蘇った 闇が衰え、光が強さを増した世界 残ったのは闇の少年唯一人のみ 光を纏った少年は一騎打ちを望んだ 少年たちは勝敗を知っていた 自らが纏う力故に 大人になり切れぬ歳の子らは しかし 互いの運命《さだめ》を受け入れていた 少年たちは純粋であるが故に賢かった 自分たちの運命《さだめ》がこの世界の行く末を握る その事を魂の奥底で自覚していたのだ 哀しいかな なんと理不尽で無慈悲な理か かくして分かり切った戦いの幕が上がる 力の大半を失った闇の少年は 力の増している光の少年に敗れる 闇色に輝く剣《つるぎ》の刀身が折れ 光輝く剣《つるぎ》は霧散した 戦いの終わりを告げるは 互いの分身たる剣《つるぎ》の在り様のみ 背負う運命《さだめ》とは対照的に その終わりを告げるは余りに静かな幕引き すぐ傍らで全てを見届けた少女は 一掬の涙《いっきくのなみだ》で顔を彩った 少女の本心とは真逆に 少女の生は闇の少年の願いで新しい世界を生きることになった 少女は余りに哀しく優しい願いで 光溢れる生を与えられた 闇の少年の死によって闇は人々の心から消え去った世界で 希望と勇気が人々を前へと歩かせ 常識と誇りは人々と一体となり 愛は人々の輪に溶け込み 無垢は人々に愛され護られた 『英雄』 と称されるようになった少年は 生きる事を強いられた少女と共に生きる道を願った 少女の悲しみを知るが故に共に居る事で癒そうとした しかし 少年《えいゆう》の立場と少女が捧げる涙の主が 少年《えいゆう》の純朴なまでのささやかな願いさへ許さなかった 少女は少年の想いを知るが故に 少年に向けられる精一杯の笑顔と感謝の言葉 それのみを残し永遠に少年の前から姿を消した ささやかな願いさえも認めれなかった少年《えいゆう》は 誰にも告げずに姿を消した 残された人々は 『英雄』 の不在を嘆き 少年《えいゆう》のささやかな願いさえ拒んだ己らを悔やみ 『英雄』 の行方を懸命に探した しかし 『英雄』 の行方は用として知れず 人々は 『英雄』 の行方を諦めた人々の中から 『英雄』 としての光の少年は消え 純粋な 『英雄』 像のみが残った時代 一人の人間として最後まで一人の少女を愛し続けた少年の 最後を看取ったのは原始と終端で 無垢だけが少年の死に気づき悲しみの涙を流した 誰も訪れぬ森の最果て 空に最も近い場所に一人の墓がある 墓は誰が作ったのか誰の墓なのかも知られずに ただ森の最果ての空に最も近い丘の上に佇んでいた 眠る者の名も刻まれていない墓にはただ一言 「僕が愛した女性は唯一人」 その言葉のみが墓に眠る者を語っている |
音羽
2013年12月26日(木) 22時16分19秒 公開 ■この作品の著作権は音羽さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.1 翠春 評価:40点 ■2014-02-06 05:07 ID:yk3giTsa7KU | |||||
初めまして、翠春と申します。 読ませていただきましたが、面白かったです。特に後半、すごく情景が目に浮かびました。何だかファンタジー系ゲームのオープニングで流れてきそう。 ただ一つ、最後の墓の一文「僕が愛した女性は唯一人」というのが、ちょっと平凡というか、今までの文章に合っていない気がします。口伝形式ですから、もう少し詩的に飾っても良いんじゃないかなと。 全体的にはすっきり読みやすい、いい作品だと思います。 |
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総レス数 1 合計 40点 |
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