ある骨董品店の長い夜 |
国土の七割を砂漠で覆われた、エリモス公国。その首都であるサイロに『真理探究会』と看板を掲げた、一軒の店があった。怪しい店ではない。ただの、骨董品店だ。 砂の侵入と、焼くような陽光から内部を守るため、分厚い石で造られた店。 その店内は、中央に応接用のソファーと机がある以外は、四方八方に古今東西の骨董品がびっしりと飾られていた。 時刻はまだ日差しの厳しい、昼。ソファーには、二人の人物がいた。 「いやあ、流石はアイシェ様。文化庁からまた表彰されたそうで、私も鼻が高いですぞ」 「いえいえ、これも全て聡明な、サハム様の援助のおかげですわ」 一人は、この骨董品店のスポンサーで、豪商のサハム。恰幅の良い体格の中年男性だ。そして、もう一人は、美しい金髪の女性。この骨董品店の店長でもある、アイシェ。見た目は二十二、三に見える。 二人の穏やかな会談を、カウンターの後ろからシャフルは見つめていた。男性にしては、小柄な黒髪の少年。年は、十八。しかし、目つきだけは妙に鋭い。 シャフルは資料の整理をしながら、会話の様子を盗み見する。スポンサーとの会談は、いつだって店にとっては大事なものだ。 特にエリモス公国の骨董品店は、通常の商売稼業だけではなく、遺跡の調査や発掘、遺物の収拾や保全も手がけているため、資金はいくらあっても足らない。文化庁から、表彰されるような功績をあげていれば、自然と経費は増大するのだ。 「では、今日はこれで。更なる活躍、期待しておりますぞ」 「身に余るお気遣い、嬉しく思いますわ。これからも、よろしくお願い致します」 契約延長、ということで会談は無事に終了したらしい。和やかな雰囲気のまま、二人が立ち上がったので、シャフルもすぐにアイシェに近寄っていった。 「それでは」 最後にしっかり、包み込むようにアイシェと握手をして、サハムは笑顔のまま店を出ていった。アイシェとシャフルは、ドアが閉まる音がするまで頭を下げて見送る。 シャフルは腰を曲げたまま、思った。そう、社会では、相手との深い信頼関係が何よりも大切なのだ。 「ちっ」 ……。 「ちっ?」 思わず、復唱。しかし、聞き間違えようの無い舌打ちが耳に入る。シャフルは、青い顔をして、舌打ちの発声源に視線を向けた。 「あの、店長?」 頭をゆっくりと上げた、店長アイシェは、サハムが遠ざかるのを確認し、そして。 「あの腐れハゲじじい、さらっと十万ギニー削りやがって。くっそ、見た目どおりに腹が太い野郎だわ。帰るついでに脂汗流しまくって、脱水症状で死ねばいいのに」 一度見れば忘れない整った顔、長い睫毛、淡い青の瞳。笑えば花と咲き誇り、多くの男性を魅了する美人店長アイシェ。その完璧すぎる顔が、極悪囚人さながらに歪んでいる。毎度のことながら、いつ見ても、この変貌は酷い。 「あの人、スポンサーですからね? 丁重に扱って下さいよ。例え、本人がいないところでも!」 「あんな金の豚、過去の遺物の価値なんて一ミリも分かっちゃいないのだから。罵倒してやるくらいしか、使い道がないわ」 アイシェはもう一度、舌打ちをしながら、手洗い場に移動した。蛇口を開き、おもむろに手を洗い始める。それはもう貴重な水を盛大に消費しながら、念入りに。 「ちょっと、店長……水も、ただではないですよ」 シャフルの心配を余所に、アイシェは徹底的に手を洗浄していく。 「店長〜」 「うるさい。うるさい、うるさい。これが洗わずにいられるか。どこで、ナニを触ったか分からない、中年親父の手と握手したのよ」 「いや、そんな生ゴミを触ったみたいに言わなくても」 「不潔でしょ、精神衛生的に! 加齢臭がうつったら、どうしてくれる!」 「加齢臭は感染しないですって。というか今、確実に、中年男性全てを敵に回しましたよね」 「良いわよ、別に。可愛く泣くか、甘い上目遣いで見つめれば、許してくれるでしょ?」 手を拭きつつ、そう言い捨てる彼女を見つめ、シャフルの口角がひくひく、と痙攣する。こんな風に思われながら、握手されたと知ったら、きっとサハムさんの心が折れるに違いない。 怖い。女って、すごく怖い。 幸いにもシャフルは早期に、女の怖さを目の当たりにした。誰のおかげか、語る必要はないだろう。 政府機関から表彰までされ、文化的に貢献し、容姿端麗、言うことなしの女性がこんな人格破綻者だとは。 不機嫌そうにタオルを投げ捨てて、アイシェは冷めた視線を向けてきた。思考を読まれたようで、シャフルは肝を冷やす。 「あんたも、早く作業に戻りなさいよ。地下の資料整理、まだでしょ」 シャフルが頷くと、このグズ、と追い討ちをかけられた。どうして、こんなところに就職してしまったのだろうか。根本的な疑問が襲ってきたが、今更、どうしようもない。アイシェの厳しい目つきに、急かされるようにして、シャフルは移動を始めた。 ちょうどその時、入り口の鈴が鳴って、若い男性客が入ってきた。 「いらっしゃいませ〜」 愛らしい声と、天使の微笑みが客を迎える。男性客の頬が、赤く染まった。 最早、達人の域に達している切り替えの早さ。何も知らない男性客は、きっと本当に天使か、女神に会った気分なのだろう。 地下へと続く暗い階段を降りながら、シャフルは聞こえないように深く溜め息を吐いた。 騙されるなかれ。あれは、天使でも女神でもない。 あの性格はきっと、悪魔のようなおぞましい何かが憑依している。 「犠牲者がまた、増えたか……」 店の売り上げの少なくない部分が、アイシェ恋しさに訪れるリピーターによるものだとシャフルは知っている。 階段の途中で、シャフルは思わず目を閉じた。 下心を利用される哀れな男達に、黙祷。 骨董品店『真理探究会』の本当の姿は、地下のスペースにあった。店頭に展示しているものなど、この店が持つ、数々の貴重品のほんの一部に過ぎない。幾つもの小部屋と大部屋に仕切られた、地下の冷たい空間にほとんどの品が収められていた。 その中でも、よほど貴重な遺物があるのか、地下の突き当たりにある部屋は、分厚い鉄の扉で閉ざされていた。勤め始めて二年になる、シャフルもまだその部屋には入れてもらったことはない。 資料整理や、簡単な鑑定は任せてもらえるようになったが、まだ信用されていないのかもしれない。 そう考えると、シャフルは何故だか気分が暗くなる。 そんな冷たい、鉄の扉に目をやりつつ、シャフルは大部屋の一つに足を踏み入れた。独特の臭いが、鼻を衝く。その部屋には何体もの遺体が、仰向けに並んでいた。 アイシェが気に入らない奴を抹殺し、保存している霊安室というわけではない。 ここは、ミイラ室なのだ。 エリモス公国は、何千年も前に存在した、古王国時代の遺跡が残る珍しい国だ。砂漠に覆われ、乾燥したこの場所では、古くから死者をミイラにして埋葬する習慣があった。今は、遺体損壊罪になるので誰もそんなことはしないが、遥か昔はそれが一般的だったのだ。 王や、王朝の重臣のミイラは、当然の如く、公国博物館が管理・保全する。なので、骨董品店が所蔵するのはそれ以下の階級に属するものだけだった。とはいっても、保存状態が良ければ、低階級のミイラでも充分に考古学的価値はあるし、有力な貴族階級のミイラを所蔵することも多々あった。 さて。どの棚から資料の整理をしようか、と一息吐いたところで、シャフルはミイラ室の奥から異様な声が漏れてくるのに気付いた。 怨念とか、亡霊とかそういうものではなく。それは、囁くような、甘く、切ない、何と表現して良いのか非常に言い難い……、いやおそらく、一言で済むのだが、日中にそんな声が聞こえるものかと考えさせられる、声。 聞かなかったことにしたいが、ここは天下の骨董品店『真理探究会』である。こんなもの日常茶飯事、冷静に対応できないようでは一日で精神崩壊する場所なのだ。 シャフルはとりあえず、適当な石壁を思いっきり蹴り飛ばした。ごおん、と鈍い音が周囲に反響する。 「あー、痛いなー、足をぶつけてしまったみたいだー」 反響に合わせて、完全に棒読みで、シャフルは大声を出した。奥で、ひぃと息を飲む音がする。しばらく待っていると、栗色のツインテールがひょっこりと顔を覗かせた。続けて、白い頬を赤くさせた可愛らしい少女の顔が、恨めしそうにこちらを見つめる。 「ファルさん、仕事して下さいよ。そんなところで、油売ってないで」 「別に油売ってないもん、ちゃんと仕事してたもん!」 愛称ファル、正式名ファルナーズは、手をぶんぶん振って抗議する。見た目は、十六という年齢さながらに可愛い。しかし。 「じゃあ、何をしていたんですか」 「いやあ、このマフムート様とめくるめく時間を……じゃなくて、損壊がないかチェックを」 めくるめく時間って。ミイラにマフムート様って。というか、着衣を涼しい顔で直すな。 「恋人できませんよ」 口角を痙攣させながら、シャフルは皮肉る。 「良いもん。リアル男子なんかに、興味ないから」 能面のような表情で告げるところを見ると、本当に興味がないらしい。その代わりに、ファルは眼下のミイラ(マフムート様)をうっとりとした目で見つめた。 「リアル男子は糞しかいないのに、どうしてあなたはそんなに。マフムート様。はあぁ、マフムート様、あなたはどうして、マフムート様なの?」 かつてのリアル男子が、ミイラな気もするがそこは触れないほうが良いだろう。 大体察しはつくと思うが、ファルは店長の妹だ。 「姉妹そろって、変人か」 シャフルは、ミイラに夢中な少女を、白い目で眺める。あの姉にして、この妹あり。本性を完璧に隠し通す姉と、本性に気持ち悪いくらい忠実な妹。 ろくでもない。本当にろくでもない。この三名で『真理探究会』は、フルメンバーなのだから、笑えない。 表彰を送った文化庁の選考委員が二人の本性を知ったら、卒倒するだろう。この姉妹こそ、エリモス考古学史に残る汚点ではないのか。密告してやりたいぐらいだ。 何だかんだ、と理由をつけて一向に上に戻ろうとしないファルを放置して、シャフルは手際よく資料をまとめ終えた。それでも、数時間はかかっただろうか。頃合いを見て降りてきたのか、シャフルが大部屋から出ようとしたところで、アイシェが現れた。 「ああ、シャフル。今から、狩りに行くから付いてきて」 「狩るって」 いつものやつか、とシャフルは苦笑を通り越して、呆れる。文字通り、狩るのだけれど。もう少し、穏便な言い方はないのだろうか。 「ファル。その間、店番頼んだよ」 ええ〜、と不満を口にしながら、ファルはようやくミイラから離れた。姉に文句を言いながら、従う妹。至極、真っ当だ。こういうところは、普通の姉妹らしくて、まあ評価してやっても良い。 そうだ。普通にしていれば、この二人は何も言うことがないくらいに理想の姉妹なのだから。 「ああそれと、ファル、ミイラ好きは良いけどオナ……」 「何が評価してやっても良いだ! 全然、評価できんわ!!」 シャフルは頭を抱えながら、アイシェの最後の言葉を大声で消去した。前言撤回、この姉妹に普通なんてない。望んでも仕方がない。 「なによ、オナ」 「言わな〜い!! 美女がそんなことさらっと言わな〜い!!」 「変な奴。まあ、いいわ。さっさと準備して」 どっちが、変な奴だ。冒頭から株を下げまくっているヒロインのくせに。シャフルの心の呟きは、勿論、届かない。 促すように踵を返す、アイシェの後を、シャフルは疲れたように付いて行った。 「更生する場所、間違えたかな……」 小さく発したシャフルの声は、前後の姉妹には当然、聞こえないまま、壁に吸い込まれた。 二年前。サイロの市場。 「やべえ、あいつ本物だ。ずらかるぞ」 仲間の少年、ザイルに呼びかけられて、シャフルは品物を届けようとした足を止める。仲間が、盗品を売りさばくために、開いていた出店に一人の女性が立ちはだかっていた。 「これ、ほとんど、盗品でしょ? 巷で噂の盗掘団っていうのはあなたたちのことね」 乾いた風が、彼女の金の髪を揺らす。 「おい、シャフル!」 ザイルに再度呼ばれても、シャフルはその女性から目を離すことができなかった。 「盗んで掘って、盗んで売って。恥を知りなさい!」 考古学者、なのだろう。本気で、怒っている。でも、自分たちのような盗掘団の端くれは、こうでもしないと金を手にできないのだ。 「うるせえよ、上流階級の学者様がっ! 知った風な口を聞くな!」 シャフルの気持ちを代弁するように、出店の仲間が声を荒げる。彼女は、腰に手を当てると大きく息を吸い込んだ。そして。 「貧しい自分たちは、盗みしかできないって言いたいの? はっ、甘えるんじゃないわよ。遺跡を盗掘できる力があるのに、盗品を売れる力があるのに、どうしてその力を真っ当に使おうとしないの。やろうと思えば、骨董品店にでも、遺跡調査の手伝いでも、自分の力を売り込めるでしょうに。一つ一つは小金でも、集まればそれなりの仕事になるわ。それしかできないなんて、言い訳よ。真っ当にやるのが、面倒くさいだけでしょ? そんな曲がった根性で遺跡や遺物に触れないでくれる? 盗掘なんて、過去への最大級の侮辱だわ。過去を大切にしない人間に、明るい未来があるわけないでしょ」 動けなかった。 ザイルを含めた仲間は、もう周りにはいない。それでも、足が動かなかった。 輝いて見えた。 それは、シャフルが初めて見た眩しさ、だった。同時に、その眩しさに引き込まれた。気付けば、シャフルは路地の日陰から一歩踏み出していた。遮るもののない陽光が、肌を焼く。熱い。痛い。 でも、どこか心地良い。 警吏に後始末を任せて、その場を去っていく彼女の後をシャフルは必死に追いかけた。汗を流して、人とぶつかっても気にせず。決して、見失わないように。 その日の内に、シャフルは『真理探究会』の門を叩いた。 それが、シャフルとアイシェが初めて出会った日。 シャフルが、まともに生きようと決めた日、だった。 日がだいぶ傾き、大地を燃やすような陽光がやや大人しくなる夕方。この頃になると、サイロの町は俄かに騒がしくなる。日中の、地獄のような猛暑を避けて引きこもっていた住人たちが一斉に町に繰り出してくるからだ。 町の北西にある、巨大な三つの遺跡群、通称ピラミスの落とす長い影に守られるようにして、一人二人と自宅から繁華街に出かけていく。これが、このサイロのいつもの光景だった。 市場へ向かう人の列の中に、シャフルとアイシェもいた。 整理の間に、もうこんなに時間が経ったのか、と三角錐の形をしたピラミスを見上げながらシャフルは思った。 彼の少し横を、アイシェは悠然とした歩調で進んでいく。並んで歩く二人の様子は、まさに貴婦人と下僕。道行く人はシャフルになど目もくれず、ひたすら通り過ぎるアイシェに視線を向け続ける。男性はおろか、女性まで頬を染めて、振り向く様を延々と見せ付けられると、店内にいる時よりもはっきりと感じてしまう。 この性悪店長の、顔面の破壊力を。 憧れ、と現実というのは、いつでも心を悩ませる代物らしい。 「店長。動転して言い忘れてましたけど、美人が下ネタ言うのは止めた方が良いですよ」 愚痴の一つも言いたくなって、シャフルはぼそっとアイシェに告げた。その瞬間、陽光よりも眩しい営業スマイルがシャフルを照らす。 「え、何のことかしら。私、ちょっとそういうの分からないわ。変なこと言うのね、シャフル君って」 アイシェは頬に手を当てて、くすりと笑う。周囲から、どよめきが聞こえたのは決して幻聴ではないだろう。 仕草から、声色、表情に至るまで全て外出用に整えられている。 「俺、女性不信になりそう……」 胃がきりきり痛むのを感じながら、シャフルは呟く。 二年前の純情を返して欲しい。あの時、この人、格好良いと思ってしまった自分を。 そんな葛藤で苦しむ部下を放っておいて、アイシェは骨董品の出店の前で、何度も立ち止まった。 ああ、また始まったか。シャフルは、今のうちから手の筋肉を揉み解して、予想される未来に備えておく。 「へい、好きなだけ見ていってくれよ。掘り出し物も、あるかもしれんしな!」 出店の店長は、気さくに声をかける。 「あら、じゃあ、少し見せて頂こうかしら」 アイシェは、にこにこ笑いながら、その場に屈んだ。シャフルは、そっとこの出店の冥福を祈る。 店長アイシェには、特殊な能力がある。 絶対鑑定眼、もしくは、絶対観察眼、とでも言えるだろうか。 どの高さの音か、聞いて分かる絶対音感と似ているかもしれない。アイシェは、遺物を一目見ただけで、それがどの程度の価値のものかすぐに分かってしまう。その考古学的価値、市場でどういう値が付くか、そういうことが瞬時に判断できる。本物か、贋作かの鑑定など朝飯前。数百年前の贋作でも、見分けられる。 だから、掘り出し物を探す必要もない。 「これも良いわね〜、あら、これも良さそう」 食材を適当に選ぶような、そんな素早さでアイシェは次々と目に付いたものを手に取っていく。その全てが、掘り出し物だ。 出店の店長の顔が、徐々に強張り、青ざめ、涙目になり、最終的に魂を抜かれたように虚ろになる。鑑定している素振りもないのだから、文句の付けようもない。 「あんたは、盗賊か」 元盗掘団の一員が言える義理でもないが、これはまさしく狩り、だ。相手側に、抵抗する手段のない、ワンサイドゲーム。 短時間の間に、出店を巡り歩き、アイシェは掘り出し物の搾取を続けていく。勿論、シャフルが荷物持ち、だ。両手に抱えきれなくなった頃、アイシェはようやく狩りを終了させた。 「ちょろい、わ」 よほど満足したのか、アイシェは少し地を見せる。 「店長。俺、店に戻ってこれ、置いてきます」 シャフルは呆れ顔で、両手のブツを少し揺らす。こちらの持てる重量など、きっと考えずに買ったに違いない。かなり、重い。 「そう。じゃあ、私は、先に本番の狩りに行っているわね」 「本番って……」 意味深な台詞を残して、アイシェはさっさと立ち去ってしまった。シャフルはその背中を眺めて、深く、深く、嘆息した。 本番ではないのに、狩られてしまった出店の店長たちがあまりに不憫だ。 「さっさと置いてくるか……」 疲れた気分で、反転するシャフル。その進路を、男が遮った。その顔を見て、シャフルは首を絞められるような感覚を覚える。 見知った顔。冷たい瞳。 「よお、シャフル。二年振りだな」 「ザイル……」 嫌な汗が、シャフルの頬を伝った。ザイルは、シャフルを暗い路地裏の方へ追いやる。 「いつも、あの女と一緒だからな。心配したぜ、兄弟」 粘り気のある、不快な笑顔をザイルは向けてきた。 バレている。シャフルは、一瞬で悟った。その可能性は、常に頭にはあった。かつての仲間が、市場でシャフルを見つけていたとしても不思議はない。今まで、接触してこなかったことが、奇跡なのだ。 「裏切った」 低いザイルの呟きに、シャフルの手が震える。何も言わず、盗掘団を抜け出した自分は確かに裏切り者だ。 「なんて、疑ったこともあったけどなあ」 ザイルは、明るい笑顔でシャフルの肩に手をのせる。意図が掴めず、シャフルは首を捻った。 「いや、前からお前は頭の良い奴、だと思っていたさ。やるじゃねえか、兄弟」 ザイルの顔が、近付く。 「骨董品店に潜入とは、流石、俺らの一員だぜ」 「っ……」 そういうことか。シャフルの顔から、血の気が引いた。 「『真理探究会』とは、目の付け所が良い。あそこには、良い品がごまんと隠されているらしいから、な。まあ、信用されるのに二年くらいはかかるわな」 ザイルは、シャフルの様子を観察しながら、そっとアイシェの買った掘り出し物に手を伸ばした。 「それはっ」 駄目だ。触れるな。 思いの外、大きく吐き出されたシャフルの声に、ザイルは手を引く。 「おいおい、盗りはしねえって。こんなものより、もっと良いものがあるだろ。お前の店には。欲しいのはそれだよ」 交換条件だ。店の貴重品を盗んで、戻ってきたら許してやる。もしくは、店から大々的に品物を盗み出す手引きをさせるつもりなのかも、しれない。 「明日の夜、ここで待っている」 ザイルは、シャフルから少し離れながら告げた。 シャフルは、舌が張り付きそうな渇きを感じながら、何とか声を出す。 「持ち出すのに、時間がかかる。簡単じゃ、ない」 「いいぜ、でも明日の夜以降だと噂が広がるだろうな」 びくっと、シャフルは身体を震わせる。ザイルの口の端が、吊り上った。 「盗掘団のメンバーが、『真理探究会』にいるって。素性が知れたら、お前はどうなるんだろうなあ。なあ〜、シャフル」 崩れる。 アイシェに、隠し事が露見すれば、確実に。 やっと手に入れた、真っ当な生活は音をたてて。 「恐い顔するなって。期待してるぜ、兄弟」 ザイルは軽く手を振ると、路地裏の闇に消えていった。人通りのない、暗い空間をシャフルは歯を喰いしばって、見つめることしかできなかった。 全てを変える覚悟で、シャフルはアイシェの店にやって来た。彼女に伝えた、働きたい、という想いは嘘ではなかった。 けれど。 シャフルは、全てを伝えたわけではなかった。 自分が、盗掘団の一員だったという、その真実だけはどうしても口に出せなかった。 言えば、拒否されてしまうと思った。だから、二年間、隠し続けてきた。 過去の自分とは関係のない自分を見て、アイシェは雇ってくれたはずだ。 そう、シャフルは感じている。それで良い、そう思っていた。 サイロ郊外の遺跡発掘現場。シャフルは沈んだ面持ちで、そこに立っていた。店に荷物を置いて、今、到着したばかりだ。 目の前では、ちょうど砂に埋もれた壁画の発掘が行われていた。砂避けのテントや、石垣に守られた遺跡の一画が、かなりの深さまで掘り進められている。それでも、壁画の上部までしか覗いてはいなかった。下に、どんな絵が描かれているのか。砂を取り出し、掘ってみないことには分からない。その作業を、夜通し行う予定になっていた。 アイシェは、現場の責任者として、作業を見守っている。 その表情は、暗くなっていく周囲とは対照的に輝いていた。彼女にとって、掘り出し物探しより、発掘の方が心躍るから、だろう。そういう意味では、こちらの方が本番の狩り、と呼ぶに相応しいのかもしれない。 壁画を傷つけないように、慎重に、砂が取り除かれていく。焦れるほど、少しずつ、少しずつ、掘っていく。 まだ見えない、真実の姿を見るために。 まだ知らない、真実の姿を知るために。 泥と、砂に汚れているのに、どの作業員も、生き生きとしている。 シャフルはその様子を眺めながら、胸が苦しくなるのを感じた。 暴かれたくない、真実もある。そっと、そのまま、埋めておきたい秘密もある。 もう、掘らないでくれ。砂を掻き出す手を見て、シャフルはそう思ってしまった。 静かに、眠らせておいてくれ。 祈るように、手を組んで俯く。 店長は、自分の過去を知ったらどうするのだろうか。 居候している一階の、物置部屋からは叩き出されるだろう。それから、警吏に通報するだろうか。 いや、それよりも。 楽しそうに、発掘を見つめるアイシェの表情にシャフルは目を向けた。 この店長に、失望した顔で見られる。心の底から、呆れられた瞳で。 耐えられない。 自分が、壊れる。 「っ……」 真実を告げても、告げなくても、シャフルの生活は変わってしまう。声にならない呻き声を、シャフルは押し殺した。 「明日の夜には、もう少し見えるかもね」 シャフルの姿に気付き、アイシェが近寄ってきた。シャフルは思わず、目を逸らせてしまう。 「明日の夜……」 重く呟いたシャフルの横で、じゃらっと音が鳴った。アイシェが、自分の衣服から鍵の束を取り出した音、だった。 「預けておくわ。地下室の鍵よ」 シャフルは目を見開いて、アイシェを見つめる。アイシェは僅かに微笑んで、見つめ返してきた。瞳の奥で、何を考えているのか、シャフルには分からない。 「明日の朝、鑑定番号223、マフムート・イブン・アザールのミイラを公国博物館に移譲するので、よろしくね」 「どうして」 「私、明日の夜まで、ここにかかりっきりだから。ファルに任せるところだけど、ミイラ相手じゃ、あの娘、絶対に手放さないでしょ? だから、あなた」 アイシェは、躊躇う素振りも見せず、シャフルに鍵の束を渡した。 受け取った、シャフルの手が震える。 どうして、よりにもよって。 こんな時に。 「俺は……」 「朝の八時には、引き取りに来るはずよ。準備、しておいて」 店長は、信じている。 嬉しいはずなのに。温かい信頼が、今、この時は痛い。 「店長」 作業の指示に戻ろうとした、アイシェの背にシャフルは呼びかける。アイシェは答えを待つような、眼差しをシャフルに向けた。 「……っ」 次の句を、シャフルは切り出せない。 「いえ、何でも……ないです」 唾と一緒に、シャフルは出かかったものを飲み込む。 「そう」 アイシェは、寂しそうに前を向くと、そのまま作業に戻っていった。 一人で立つシャフルの手には、重い鍵の感触だけが残った。 ファルが、寝静まる時間を見計らって、シャフルは仮眠から起床した。足を曲げなければ入らない寝床から、這いずりだして、移動用の小さなランプを点ける。手元にあった、上着を二重に着込んだ。夜は、意外と冷えるからだ。 階段下の部屋は、そのまま立ち上がると天井に頭をぶつけるので、少し背を屈めながら、自室から出た。 忍び足で、地下室への扉に向かう。どれが地下室の鍵かは、すぐに分かった。 かちり、と音がして鍵が開く。 暗い階段が、いつもより暗く思えた。 音を響かせないようにして、シャフルは暗闇の底へと下りる。地下の収蔵室は、不気味なほど静かだった。 シャフルが歩くのに合わせて、廊下がランプの明かりで照らされる。ミイラ室に入ろうとしたところで、シャフルは足を止めた。淡い光に、浮かび上がるように、突き当りの鉄の扉が目に入ったからだ。 あの先に、貴重品がある。 無意識にシャフルの指は、衣服の中の鍵束を触っていた。もしかしたら、あの扉の鍵も、この中にあるかもしれない。 気に病むことはない。盗んで、持ち出しても。元いたところに、戻るだけの話しではないのか。影が、影の中に帰るだけ。 周囲の暗闇が、囁いた気がした。 お前が、真実を隠しているように、アイシェもお前に見せていないものがある。その程度の信頼、ではないか。 ランプの中の、炎が大きく揺れる。 別なものを見るように、シャフルは分厚い塊を睨みすえた。鉄の扉は、何も答えてはくれなかった。 昼だというのに、『真理探究会』の店内は、陰鬱な空気に包まれていた。シャフルは、仏頂面でカウンターの裏の椅子に座っている。その頬には、くっきりと平手の痕が残っていた。 「ひどいよ、シャフル君」 応接用のソファーに鼻紙を山盛りにしながら、ファルは涙声で呟いた。 「ひどいのは、どっちだ」 頬を擦りながら、シャフルは呟き返す。 作戦は、完璧だった。 寝坊の常習犯、ファルが起きてくる前に、ミイラを引き渡してしまう。静かに、地下室からミイラの梱包された木箱を搬出し、後は、付属品を手渡すだけ。しかし、最後の段階で、ファルに感づかれた。 そこから先は……、阿鼻叫喚というか、何というか。 鬼のような、ファルの形相を思い返して、シャフルは身震いする。世の中には、思い出さなくて良い記憶もあるものだ。 ひとしきり暴れたファルが、応接ソファーでかれこれ二時間、恋人との別れを悲しんでいる。とりあえず、それさえ覚えておけば問題ない。 「うっ、ううっ。マフムート様……、遠くへ行かれてしまって」 「博物館まで、たかが二十分の距離ですけど?」 ソファーから、固められた鼻紙が投げつけられた。 「遠距離恋愛なんて、無理! 絶対に、うまくいかないもの!」 「ああ、はい。そうですか」 シャフルの生返事に、再び鼻紙が襲ってくる。 「シャフル君には、分からないんだよ。大事なものが、なくなる気持ちが」 分かりますよ。 出かかった言葉が、口の中で行き場を失う。 恨めしそうな目で、こちらに歩いてくるファルを見つめながら、シャフルはそれを噛み殺した。 「お姉ちゃんもいないし、私も散々な気分だし、今日はもう閉店」 ファルは鼻をすすりながら、二階に上がっていく。流石に、シャフル一人で接客はできない。溜め息を吐きながら、シャフルは入り口の鍵を閉めて、閉店と書かれた板をドアノブにかけておいた。 そのまま、シャフルはカウンターに腰を下ろす。乱暴な座り方に、椅子が軋んだ。 ファルの態度に、いらついたわけではない。 自分が、情けなかっただけだ。 ミイラ一体で、騒ぎ立て、ぼろぼろと涙を流すファルが羨ましかっただけ、だ。 変わりたい、と思ってここへ来たのに。自分は、店長やファルのように一生懸命になれるものを何も見つけていない。 これを知りたい、と本気になれるものが……ない。 「ふぅ……」 溜め息を吐いて、シャフルは店内を見回した。見慣れた品物、一つ一つに思い出がある。後悔の念と共に、シャフルは味わうように回想を始めた。 「ん」 閉店してすぐに、アイシェから無造作に突き出された封筒をシャフルは受け取った。 アイシェの店に飛び込み、働き始めてから、ちょうど一ヶ月後の夕方だった。 「これ……何ですか?」 シャフルの問いに答えるように、彼女の眉間に皺が寄る。 「店という性質上、あんたに払わなければならないものよ」 回りくどい言い方だな、と思いながらシャフルは中身を確かめる。紙幣が、二枚ほど入っていた。 「ぅ……あ」 シャフルにとって、まっとうな形での、初めての給金。 唇が無駄に動くけれど、言葉が出てこない。動揺なのか、感動なのか、手も震えた。瞳も輝いていたことだろう。 シャフルの脳裏に、盗掘団での出来事が甦った。 あれは、まだ盗掘団に入って間もない頃。両親を亡くして、何となく、盗掘団の下働きをしていた十歳の頃。 盗掘した遺物が、高値で売れ、『仲間』たちが宴会を開いていた夜のことだ。シャフルの目の前で、大量の肉や魚が、美味そうに並べられている。シャフルは、『仲間』がそれを惜し気もなく食うのをただ見ていることしか、できなかった。 盗掘団の内部は、上下関係がはっきりしている。どんなに盗掘団の景気が良くても、下働きの小僧が、美味しい分け前にありつけるはずもない。 大人の『仲間』が、泥酔して、宴会が終了した深夜。その時間帯になって、シャフルたち、下働きの食事は始まった。 『仲間』が食い散らかした、残骸のような食物を胃に流し込んでいく。 涙を流して、骨をしゃぶりながら、シャフルは思った。ああ、ここには『仲間』も、居場所もない、のだと。 過去の惨めさを思い返すと、目の前の紙幣二枚が本当に宝物に思える。 良い意味で、予想外のシャフルの反応にアイシェは戸惑いを見せた。彼女自身は、少ない、と文句を言われると思っていたのかもしれない。 「いっ、居候だし、寝食はこっちが面倒見てあげてるんだから、大分引かせてもらったわよ。悔しかったら、もっと役に立つようになりなさい!」 対応に困り、捨て台詞を残して、アイシェは立ち去ろうとする。 「店長」 何か伝えたくて、シャフルは呼び止めた。横顔だけが、こちらに向く。 気の利いた言葉は思い浮かばなかった。それでも。 「あっ、ありがとう……ございます」 アイシェの口元が緩んだのを、シャフルは見逃さなかった。 笑った、ようだった。 積み重なった封筒に触れ、シャフルは手を離す。 衣服や、日用品で使う以外は、ほとんど使うことなく貯まってしまった給金。 結局、何に使うか決められないまま、部屋の引き出しに収納されたままになっていた。もう辺りは、暗くなっている。とうとう、夜が訪れる。 長い回想から、シャフルは目を覚ました。 引き出しを閉め、部屋の明かりを消す。 ここからいなくなるから、金は必要になるだろう。理屈はそうでも、シャフルは封筒を持ち出す気にはなれなかった。 この給金には、大事なものが詰まっている。それを、これから行くところには持ってはいけない。奪われたくないし、汚されたくもない。 だから、おいていく。 そっと、外套を手に取ると、戻ることのない部屋の扉を閉めた。そのまま、静かに店内に移動する。 薄暗い店内で、シャフルはゆっくりとカウンターの引き出しを開けた。アイシェが、いつも大事なものを入れている引き出し、だ。 そこへ、ずっと持っていた鍵の束を落とした。重い感触が、手から離れる。 「ふぅ」 一息吐いて、シャフルは入り口へ向かった。 思い返すことは、全部、時間をかけて思い返した。飲み込めないものも、飲み込んだ。 遺物のある地下室には、午前中の引渡しの時から入らなかった。 心は、決まっている。 手には、何も持っていない。何も、懐には入れていない。 それで、良い。 扉を開けると、夜の冷気が肌を刺した。白い息が虚しく、宙に散っていく。 ここへは、もう戻れなくても。 けじめ、だけは。 振り返ることもなく、シャフルの姿は、夜の闇の中に消えていった。 人通りの絶えた、市場の裏通りにザイル達はいた。四人。意外に、少ない。 「おお、シャフル。待っていたぜ」 陽気に声をかけながら、ザイルの視線は、素早くシャフルの両手に注がれた。そして、気付く。 「何も持っていないみたいだが?」 シャフルは、頷いた。 「ああ、持っていない」 ザイルは、可笑しそうに腹を抱える。 「いやいやいや、冗談きついぜ。流石、二年も焦らしてくれるだけはある」 絡み付くような仕草で、ザイルはシャフルに近付いた。 「まあ、持ちきれなかったんだろ? どこに隠してあるんだ? それとも、店まで手引きしてくれるのか?」 首を横に振る。シャフルは、静かにザイルを見つめた。 「お前らに、何も渡さない」 ザイルの表情が、変わった。襟首を掴まれる。 「どういうことだ」 「どうもこうも、俺はもう盗まない。お前らのところにも、戻らない」 言い終わらない内に、シャフルは地面に転がっていた。口から、血の味がして、ようやく殴られたことに気付く。 痛い。 「おい、お前は頭の良い奴だろ? 考え直せ。でないと、悪い噂が広がるぜ?」 腰を折って、顔を近付けてくるザイル。シャフルは、その顔を睨み返した。 「勝手に広めれば良い。俺は、あの店から抜けてきた。もう、関係がない。いくら広めようと、もう何の意味もない」 「こいつ」 忌々しそうに、ザイルは唾を吐きかけると、シャフルの胴を蹴り上げた。 激しい痛みと、吐き気に、シャフルは咳き込む。 「うっ……」 呻いたシャフルの頭に、木の靴が押し付けられる。踏みつけられた、と少し遅れて気付いた。 「調子に乗るんじゃねえぞ、クズが。自分だけ真っ当になったつもりか? は、何様のつもりだよ」 汚い地面に、シャフルの顔面を擦り付けるように、ザイルは足を動かした。小石がシャフルの肌を傷つけ、出血する。 「夢見てんじゃねえよ。俺たちみたいなクズは、死ぬまでクズなのさ。まともに働くなんて馬鹿じゃねえの? 何が、もう戻らないだ。お前は、元から逃げ切れてないんだよ! 身の程を知って、はいはい言う事を聞いときゃ良いんだよ!!」 違う。 シャフルは、潰されそうな上からの圧力を押し返しながら、視線だけをザイルに向ける。 「その目は、何だ。あぁ?」 再度、腹部を蹴られる。嘔吐しながら、シャフルは燃える瞳でザイルを見つめ続けた。喧嘩で勝てる力は、シャフルにはない。最初から、分かっていることだ。 意地だけは、通す。 どんなに、罵られても、傷つけられても。アイシェとファルと過ごした、二年を心から消させない。 屈することだけは、しない。 「どうも二年で、だいぶ太くなりやがったな。おい!」 かなり痛めつけても、睨み続けるシャフルに業を煮やしたのか、ザイルは他の三人を呼ぶ。 「再教育してやる」 一方的な、暴力が始まる。すぐに、痛みすらなくなった。霞む視界の中で、シャフルはザイルの方向だけを必死に見据える。 地面を、襤褸のように転がりながら、シャフルは思った。 きっと、これは罰だ。 真実を隠し、目的もないまま、ここまで生きてきたことの。 ごめん……なさい。 ここにはいない人に告げた謝罪は、殴打と、罵倒の騒音にかき消された。シャフルの意識は、そこで途切れた。 淡く光る世界を、シャフルは見ていた。 眼下には、いつもの食事の光景がある。暴言を吐くアイシェ。それを宥める自分。その様子をからかう、ファル。 あの時は、困った……いや、面倒くさいとさえ思っていた日常の一場面。 どうして。 どうして、離れてしまってから、懐かしく想うのだろう。 「……」 遠くから、呼びかけられた気がして、シャフルは振り向いた。誰かが、耳元で囁くようなそんな声。息遣いが、間近に感じられる。 淡い光が、急に眩しい、白い光に変わった。入ってきた強い光に、シャフルは開けた目を細める。何の変哲もない、天井が最初に見えた。 「っ……!!」 自分は、どうなったのだろう。 そう考える前に、シャフルは嫌な寒気を感じた。仰向けに寝ている自分の横から、はぁはぁ……、と気色の悪い喘ぎ声がしている。 シャフルは寝台の反対側に移動しつつ、危険な気配の正体に視線を向けた。 「ファルさん」 名前を呼ばれて、ツインテールの少女は伸ばしかけていた手を止めた。 「ちっ、目覚めたか」 「何、しようとしていたんですかね?」 「包帯直そうとしていただけだよ〜」 そう言われてシャフルは、身体の各所が包帯で巻かれていることに気付いた。軋むように、身体が重く、そして痛い。薬品の臭いや、状況から、シャフルはここが救護所であることを察した。 「本音は?」 「包帯で巻かれている男子を見ていると、自分を抑えられなくて……って違うからっ!!」 いつもの調子で尋ね、いつもの調子で返される。その普通さに、シャフルは胸を衝かれた。同時に、どうして彼女がここにいるのかという疑問が生まれる。 「何で、ファルさんが」 シャフルが言い終わらない内に、ファルは悪戯っぽく微笑んだ。 「店長代理(私)に断りもなく店を抜け出したから、シャフル君の後を付けていたの」 上手く抜け出したつもりだったのに、とシャフルは溜め息を吐く。少し、気が楽になった。 「勝手に、出ていっちゃ駄目なんだぞ」 ごつん、と肩にファルの打撃が入る。打撲に響いて、シャフルは呻き声をあげた。 「気付いていたなら、止めて下さいよ」 そうすれば、こんな擦り傷や打撲をせずに済んだかもしれないのに。 「私が巡回中の警吏を呼んだから、その程度の怪我だったんだよ? 後、救護所の手配をしてあげたのも私なんだから。それに」 シャフルは、続く言葉を視線で促す。 「男の覚悟を邪魔しちゃ、悪いでしょ?」 ファルの言葉が、シャフルに染み込む。全て、知られている気がして、シャフルは口を開いた。言えなかった自分の過去が、言えそうな気がした。 そのシャフルの顔の前に、ファルは手を突き出して、発言を止めた。 「それ、を最初に言う相手は私じゃない」 ファルは、にこりと微笑む。 「シャフル君の『それ』をずっと聞きたかった人が、骨董品店で待っているよ」 アイシェの顔が浮かんで、シャフルは言葉に詰まる。隠しているつもりだったのに、結局、見透かされている。 「いつから……気付いていたんですか?」 「働き始めてすぐ、かな。私のは、ただの勘だけど。お姉ちゃんは、もっと早く、はっきり見破っていた気がするよ」 考えれば、店長アイシェは絶対観察眼の持ち主なのだ。常人が隠しているものの、一つや二つ、即座に見抜けて当たり前なのかもしれない。 シャフルの思考を読んだのか、ファルも苦笑した。 「もっと早く打ち明けられるようにすれば、シャフル君も悩まずに済んだのにね。本人が、自分から言うまで何もするな、ってお姉ちゃんが厳しくて」 滅茶苦茶なように見えて、自分のことをきちんと考えていてくれた。ずっと前から、そういう人だと知っていたのに。自分は。 アイシェの好意が分かるほど、至らなさが心に喰い込む。 「さてと」 スカートの裾をはたき、ファルは立ち上がった。もう帰るのか、とシャフルは思わず態度で示してしまう。ファルは、はにかんだ表情をした。 「これからどうするかは、シャフル君が決めること。私は、必要ないでしょ」 でも、と言葉を切って、ファルはシャフルの瞳を見つめる。 「お姉ちゃんにだけは、必ず会って、話しをしてね」 複雑な感情がぶつかって、シャフルは顔を伏せた。すぐに頷けない自分に、嫌悪感が這い上がってくる。 「本当は、お姉ちゃんもここに来るって言い張ったんだけどね。それだと、シャフル君の気持ちが整理できないって、無理矢理、置いてきたの」 ファルの柔らかい表情を、シャフルは口の端を震わせながら見上げた。 どうして。どうして、この人たちは俺を放っておかないのだろう。 どうして、手を伸ばし続けるのだろう。 「俺なんかに、何で、こんな良く……してくれて」 少しの間、そして。 「お父さんとお母さん、落盤の事故で亡くしてから、ずっとお姉ちゃんと二人だったから。シャフル君がいると、お義兄ちゃんがいるみたいだったよ」 背を向けて、出口へ歩いていたファルの横顔がこちらを向く。 笑っていた。 「シャフル君に良くする理由? 簡単だよ」 シャフルは、しばらく出口をじっと見つめていた。ファルの姿は、もうそこにはない。けれど、去り際の言葉だけは、いつまでも耳に残っていた。 だって、もう家族だから。 ファルの言葉と、アイシェが待っているという事実が、シャフルを寝台から動かした。けれど、どういう顔をして、何をアイシェに話せば良いのか。そのことで悩んでしまい、結局、何度も救護所の出入り口と、自分の寝ていた病室の前を行き来してしまった。 その様子を見ていた医師に、まだ体調が良くないのではないのかと疑われ、もう一度診察されそうになって、ようやくシャフルは救護所から脱出した。 それからも、長い道のりだった。 救護所から骨董品店まで、大通りを歩いていけば辿り着く。その間、シャフルは何度も来た道を引き返したり、建物の日陰に隠れて思案したり、と時間を浪費した。 まだ、盗掘団の奴らがいるかもしれない。そんな真っ当な理屈をつけて、怪しまれるくらい慎重に歩みを進める。 本当は、盗掘団よりもアイシェ自身に会うのが恐いのに。 道に残る、幾重にも重なった自分の足跡を見て、シャフルは溜め息を吐いた。 ファルと話していたのが、昼頃だというのに、気付けばピラミスの長い影が町を覆っていた。もうそんなに日が傾いたのかと、自分の決意の弱さに舌打ちしながら、シャフルは最後の坂をゆっくりと下っていく。 会って、何を話せば良いのだろう。 まずは謝るべきだろうか。 盗掘団にいたことを黙っていました。ごめんなさい。いや、最初から重過ぎるような気もする。 勝手に、店を出ていきました。ごめんなさい。 これが、無難だろうか。 さて、謝った後はどうすれば良いだろう。 店に残りたい気持ちと、もう迷惑をかけられない、という気持ちがぶつかり合う。 過去をある程度、知られているなら。悩む必要もなく戻れば良いのではないか。 戻らないと決めたあの決意に、嘘をついて? 本当に、それで良いのだろうか。 ぐるぐると想いを巡らせている内に、『真理探究会』と掲げた懐かしい看板が見えてきた。日はとっくに暮れてしまい、窓には温かい光が灯っている。外は、大分、気温が下がってきていた。 「……」 骨董品店の窓に張り付くようにして、大通りを観察していた人影が店内に消えたのを見て、シャフルは足を止めた。 きっと、店長だ。 シャフルは何とも言えない気分で、窓を見つめる。その目の前で、こっそりと覗き見するように窓の端から、アイシェの横顔が現れた。 「っ……」 「……!」 二人の視線が重なる。どちらも怯えたように身体を震わせたものの、視線だけは外さない。外せ、ない。 伝えたい言葉、懐かしい想いが、シャフルの奥から湧き上がってくる。 店の外と、内。二人を隔てているのは、窓ガラス一枚だけ。アイシェの唇が何かを言おうと、僅かに動いた。けれど、透明な壁のせいで、言葉は聞こえない。互いに見えているのに、届かない。 シャフルの中で、何かが動いた。 緊張しながら、扉に近付き、閉店という札のかかったドアノブを回す。鍵に弾かれる音がしたが、すぐに中から鍵を外す音がした。 厚い扉が、ゆっくりと開く。 シャフルは、そこで気付いた。 ああ、そうか。大切な人の言葉が聞きたいなら、聞こえる場所まで近付けば良い。 「店長」 シャフルに一言かけられ、アイシェの目尻に涙が浮かんだ。安心したようにアイシェは、柔らかく笑う。しかし、すぐに自分の顔が緩んでいるのに気付いたのか、いつもの無愛想な表情に引き戻した。 「遅い」 不機嫌丸出しの、声色にシャフルは思わず苦笑する。いつも通りの、接し方。それが、ただ嬉しかった。自然と、彼女の前で頭が下がる。 「勝手に、店を飛び出して、すみませんでした」 「むぅ」 素直な謝罪に、アイシェは頬を膨らませる。怒った顔をしながら、アイシェは心配そうにシャフルの身体に巻かれた包帯を一瞥した。シャフルがその視線に気付くと、アイシェは頬を染めて、そっぽを向いた。 「言うことは、それだけ?」 棘のある言い方の裏に、シャフルはアイシェの想いをはっきりと感じた。ファルの時と同じ、温かい気持ちが心を満たす。 シャフル君の『それ』をずっと聞きたかった人が、骨董品店で待っているよ。 救護所での言葉が甦った。 あんなに言い辛かったのに。今なら。 「実は、俺、盗掘団の一員でした。辞めさせられると思って、ずっと黙っていました。すみませんでした」 アイシェの瞳に溢れていたものが、頬を伝った。それを見ないようにするため、シャフルは深々と頭を下げる。 見ていなかったことにして、自分の心にしまっておこう。そう思った。 「知っていたわよ」 少しの間を置いて、憮然とした声が返ってくる。 「知っていたんだから」 「ずっと、知っていたんだから」 繰り返した、アイシェの語尾が震える。様子を少し見ようと、上体を起こしたシャフルの胸元にアイシェは飛び込んできた。 目の前でふわりと宙に舞う、彼女の金髪。そこから、花の香りが流れてくる。 世界が、止まった気がした。 「遅い」 いつもより近くで、その声が聞こえる。 「言うのが、遅い」 「ごめんなさい」 こつん、とアイシェの額が頭突きを喰らわせる。その衝撃で、胸のしこりが砕かれたような気がした。 「絶対観察眼をなめないでよね。最初から、何を隠しているか察しはついていたわ。自分から言うまで待っていたんだから。でも、家族のように接しても、私の本性を見せても、打ち明けてくれないし」 二度、三度と優しい頭突きを浴びながら、シャフルは悔しそうに笑う。どうして、わざわざ性格が悪いところを見せるのかと思っていたけれど。こちらを安心させようとしていたようだ。それに今更、気付くなんて。 「時間がかかっても、って思っていたら私の不注意のせいで、あんたが昔の悪い知り合いと接触しちゃうし。店の鍵を渡して、安心させようと思ったら、責任感じて出て行くし! おまけに怪我するまで酷いことされるし! 何でこんなに上手くいかないの? 何これ、呪い? 怪しい骨董品集めた報い?」 言うだけ言って、顔を上げたアイシェの前で、シャフルは静かに首を振る。 そうじゃない。 「たぶん、ほんのちょっと……ずれていただけです。店長も、俺も」 言いたくても言えなくて、悩んでしまった自分。言って欲しいのにそう言えなくて、気を回し過ぎたアイシェ。どちらも、同じだ。 相手を思う気持ちが、空回りして、擦れ違ってしまっただけ。 「生意気よ、下っ端店員のくせに」 アイシェの表情が、和らぐ。綺麗だ。心の底から、そう感じた。 互いに見つめたまま、頬を染める。 「あ〜あ〜、お熱いことで」 聞き慣れた声に、二人は慌てて身体を離した。応接用のソファーに、いつの間にかファルの姿があった。 「ファル! あんた、いつから」 「『言うことはそれだけ?』ってお姉ちゃんが言ったあたりから」 ほぼ最初から見られたと分かり、アイシェの頬が朱に染まる。シャフルも気まずくなって、あらぬ方向に視線を向けた。 「一人で暴走気味でしたよね〜お姉ちゃん。まさか、大切な妹を忘れていたわけじゃないですよね〜?」 「そっ、そんなわけないじゃない」 冷や汗を流すアイシェを見て、シャフルは口元を緩ませる。これは、忘れていたに違いない。 「気持ちは分かるけど、シャフル君に一目惚れしたからって何でも許されると……」 ファルが最後まで言い終わらない内に、アイシェが口封じのために猛然とソファーに跳び込んだ。 「きゃあ、お姉ちゃんこわ〜い」 ファルは、猫のように攻撃をかわすとシャフルの背に身を隠す。 「助けて下さい。お義兄ちゃん」 舌を出して悪戯っぽく笑いながら、ファルの瞳にも涙が溜まっていた。 ああ、ファルも心配してくれていたんだ。そのことがよく分かって、シャフルも微笑む。アイシェも文句を言いながら、ファルを追い詰めるようなことはしなかった。 温かい空気が、骨董品店を満たす。 「さて、店員が揃ったところで、準備は完了ね」 ほっとしたのも束の間、アイシェが和んだ空気を引き締めた。 「準備……何の?」 当然の疑問が、シャフルの口が出てくる。姉妹の口の端が、凶悪に歪んだ。 「狩り、だよ。シャフル君」 「悪戯が過ぎたお子様には、お仕置きが必要……ではないかしら?」 まさか、盗掘団に何かする気なのだろうか。容赦なく元の仲間を痛めつけた、ザイルの冷たい表情をシャフルは思い出す。 「無茶です! 俺がいた時だって、三十人はいたのに」 女性二人と、怪我人一名が勝てる相手ではない。そう思う、シャフルに、アイシェはずいっと顔を近付けた。 「あんたがやられて、黙っていられるほど『真理探究会』はお人好しじゃないの」 「でも、どうやって……」 思い止まらせようと呟いた言葉を聞いて、アイシェは衣服から何かを取り出した。不敵に笑いながら、それをシャフルに見せる。 シャフルが置いていった、アイシェの鍵束だった。 アイシェを先頭にして、三人は地下室へと向かった。小さなランプを灯しながら、階段を下りていく。 アイシェとファルの後姿が、どことなく楽しそうに見えるのは気のせいではないようだ。二人に先導されて、地下の廊下を歩いていく。どの部屋にも立ち止まらず、突き当りまで来て、ようやく足が止まった。 「ここは……」 シャフルは、息を飲む。分厚い、鉄の扉。『真理探究会』の貴重品が収蔵された、特別な部屋。何も持ち出さない、と扉の前で決意した場所だ。 「あんたには初めて、見せるわね」 くすっと笑いながら、アイシェは鍵を差し込んだ。鈍い音をたてながら、扉が開く。 シャフルは、目を白黒させて立ち尽くした。 部屋一面に並んでいるのは、貴重な骨董品……ではなく。 「全部……武器ですか」 ミイラ室と同じくらいの大部屋。その空間に所狭し、と武器が置いてあった。いや、正確に表現するなら、銃器だ。磨かれた鉄の光が目に入り、素人目にもよく整備されていることが分かる。 「はは……」 貴重品ではあるけれども、想像とは方向が違ったようだ。これなら、盗掘団相手にも何とかなりそうな予感がする。 「ほら、手伝って」 アイシェは、台車に載せられた棺を指差す。姉妹二人は手際良く、銃器や、銃弾を棺の中に入れていった。この国の骨董品店から棺が出てきても、大して驚かれはしないだろう。 中に、何が入っているのかは置いておいて。この方法で、銃器を外に持ち出すつもりらしい。それにしても。 「これ、人、死にますよね?」 棺の中の散弾銃らしきものを見ながら、シャフルは尋ねる。それくらいの威力はありそうな、重厚な造りの銃だった。 「大丈夫よ、ゴム弾使うから」 アイシェは銃弾をシャフルに示しつつ、言葉を繋げた。 「でも、まあ、当たり所が悪いと軽く骨にダメージはいくかもね」 「いや、軽くないし」 怯えるシャフルの横で、ファルがスコープ付きの狙撃銃を棺に入れる。散弾銃より一回りも、大きい。 「手加減するし、心配しなくて良いよ。シャフル君」 「ファルさん……」 そうだ。ファルは、救護所に来てくれたように、気が利く良い娘で……。 「私が、後方から、包帯男子(予定)を大量生産してあげるから」 前言撤回。 うふふ、と奇妙な笑い声を漏らすファル。シャフルは、深く溜め息を吐いた。 呆れるしかない、二人の残念さ。でも、どこか嬉しい。 悪態をついても良い場所に、二人が自分を置いてくれるから。 かなりの重量になった棺を、三人で地下室から運び出し、外に用意してあった荷車に載せた。 「さて、行きましょうか」 アイシェの号令で、荷車は進んでいく。夜の冷気は、昨日と変わらない。それでも、シャフルは寒さを感じなかった。むしろ、どこか胸が躍っている自分を感じていた。 はあ、はあ、と荒い息遣いが砂漠に響く。 砂に足を取られながら、呻くシャフルの横をアイシェは涼しい顔で歩いていた。 彼女は、何も持っていない。代わりに、シャフルは全身に銃器と弾薬を巻きつけ、両手で防御用の鉄盾を装備していた。つまりは、荷物持ちだ。怪我人にも容赦のないところが、実にアイシェらしい。 前方に、遺跡のような煉瓦造りの建造物が見えたところで、アイシェは止まるように合図した。 盗掘団のアジトが、町外れの砂漠にあるということで、わざわざ出向いてきた。途中までは荷車を利用し、後は、歩いて。何故、姉妹が盗掘団の居場所を知っているのかは、謎だ。 砂が銃器に入ると困るので、抱えたまま、シャフルは休憩をする。アイシェは、体力を削らせたシャフルを気にすることもなく、後方に向かってランプを振る。応じるように、小さな光が返ってきた。 「ファルが、配置についたわ」 後ろの小高い砂丘に、狙撃銃を構えたファルがいるはずだった。後方から、支援射撃をする作戦だ。 「あんな遠くから、大丈夫ですかね?」 「月も出ているし、あの娘なら狙えるわよ」 小声で答えつつ、アイシェはシャフルから散弾銃を受け取る。そのまま、流れる動作で銃弾を装填すると、安全装置を外した。 「慣れてますね……」 「まあ、ね。帰ったら、その辺の事情も話すわ」 アイシェの不意の笑みに、シャフルは顔が熱くなるのを感じた。 「とはいっても、厄介なところに住み着いたものね」 アイシェの視線の先を、シャフルは見る。煉瓦で組み上げられた、古い遺跡に見えた。内部から、明かりが漏れている。 「本物の遺跡、ですか」 「ええ」 「俺がいた時から、そうでした。遺跡を根城にすれば、軍も、簡単に手出しできないから」 「遺跡・遺物大国だもの。傷をつければ、騒ぎになるわ。それを逆手に取るなんて、ひねくれた連中ね」 シャフルは顔を伏せる。アイシェの手が、肩にそっと触れてきた。 「顔見知りもいるでしょ? ここで待っていても良いわ」 「いいえ」 シャフルは、首を振った。 「一緒に行かせて下さい」 けじめも。過去と向き合うことも。一人では、無理だった。でも。この人たちが、側にいるなら。 「良い返事ね」 アイシェは金髪を揺らしながら、腰に手を当てた。 「撃っている最中、私は無防備だから、あんたに守りは任せるわ」 こくり、と頷いてシャフルは自分とアイシェの前に盾を構えた。任せてくれることが、今は素直に喜べる。涼風が、心にも吹いている。 「遺跡を傷つけない戦い方もあるわ。慢心を、盛大に後悔させてやりましょう」 前に向かうよう、アイシェが合図をする。後ろに、大切な人の温かさを感じながら、シャフルは静かに歩を進めた。 人の声が聞こえる、ぎりぎりの距離まで近付いたところで、二人は止まる。 アイシェは風向きを確認すると、円筒状のものを三つ、遺跡の側に投げ込んだ。少しの間を置いて大量の煙が、筒から噴出し始めた。煙は、風に運ばれ、遺跡を覆っていく。 「さあ、中から出てきなさい。ドブ鼠ども」 美人が出してはいけない類の笑い声が、後ろから聞こえる。 「店長」 非難めいた呼びかけに応えず、アイシェはシャフルの頭を強引に押さえつけた。そのまま下手投げで、何かを放り投げる。 直後、物凄い炸裂音が周囲に響き渡った。耳が鳴り、舞い上がった砂が二人に降り注ぐ。 咳き込みながら、シャフルは顔を上げた。 遺跡とは違う方向の、砂丘が削れていた。突然の煙と、爆音に、遺跡側が俄かに騒がしくなる。内部から、十名ほどが跳び出して来た。 シャフルが緊張して盾を構える前に、今度は後方から轟音が響く。着弾したのか、一人が腹を押さえて、倒れた。ファルの、狙撃だ。 死に至るのではないか、という視線の問いかけに、アイシェは首を振る。 「長距離では、ゴム弾の威力が減衰するから、死なないわ。嫌がらせ程度の攻撃よ」 少し安心しながら、シャフルは上手い作戦だ、と思った。 いきなり煙と炸裂音に襲われ、おまけに発砲音と共に不意の打撃をくらえば、誰でも混乱するだろう。月明かりがあるとはいっても、それが夜なら、恐怖も増す。 少なくない人数の男が、一目散に逃走を始めた。 しかし、大部分がファルの餌食になっていく。その様子を見た、仲間たちが煉瓦の壁や、崩れかけた構造物に身を潜め出した。発煙筒はすでに枯れ、煙幕も消え始めている。 焦りを感じるところだが、シャフルは冷静でいられた。 だって、店長は。 「隠れても無駄、観えるんだから」 そう。彼女には、無敵の観察眼がある。 「最後の焙り出しに行くわよ」 アイシェに小突かれて、シャフルは盾を押し出していく。近付いてくる不気味な鉄盾に、身を隠した盗掘団の方からも、銃撃が加えられた。 嫌な音がして、盾に火花が散る。 向こうは実弾で、こっちはゴム弾というのは、不利過ぎる。 「ほら、怖がらないの」 腰が引けたシャフルの尻を、アイシェは叩く。撃たれても臆しないその姿に、シャフルは最初に彼女を見かけた時の高揚感を思い出した。 店長は、やっぱり格好良い。 「あ〜あ〜、手出しできないと思って調子に乗っているわね」 盾に身を隠しながら、アイシェは不敵に笑う。釣られて、シャフルも笑った。アイシェは笑みを湛えたまま、手榴弾を壁の一角に投げ込んだ。 炸裂音、そして、重いものが崩落する騒音が鳴る。 「信じられねえ。奴ら、遺跡を壊しやがった!!」 「やばくね、これ? やばくね?」 動揺する叫び声が、シャフルとアイシェにも聞こえた。怯んだのか、一時的に銃撃も止まる。崩落した壁の裏から、隠れていた男たちが逃げ出した。 その足元めがけて、アイシェが散弾銃を放つ。強面の男たちが子供のような悲鳴をあげて、地面を転げ回った。 「残念、その壁は遺跡じゃないわ。たかだか五十年前の廃墟よ。過去の調査用防砂壁じゃないかしら?」 涼しげに言うアイシェ。シャフルは身体を震わしながら、確信した。 心配する必要もなく、これは勝てる。 過激に始まった戦闘は、急速に終幕へと向かおうとしていた。 壊しても良い、構造物をさらに三つほどアイシェが破壊し、逃げ出した男たち十数名を散弾銃の餌食にしたところで、応射されなくなった。 遺跡への攻撃も辞さない異常さ、足を抱え、呻く仲間の悲鳴の合唱、さらに連続する狙撃への恐怖。それらが一体となって、盗掘団員の士気を完全に挫いた。 一人、二人、と水が漏れるように逃走を始め、すぐに戦線を維持できないほどになった。 こちらから攻撃できない本物の遺跡に隠れている者たちも、釣られるように逃げ始める。 逃げ遅れた数人を容赦なく、アイシェとファルが悲鳴の合唱に参加させたことで、勇敢に残っていた男たちも、喚きながら離脱していった。 静けさを取り戻した遺跡で、今、シャフルとアイシェは一人の男と向かい合っている。遅れて合流してきたファルも、そこにいた。 散弾銃を突きつけられ青い顔をしながら、震える男をシャフルは見つめる。 ザイル、だった。 地面に転がり、撃たれた振りをして、やりすごそうとしたところをアイシェに見抜かれた。姑息なところが、彼らしい。 「頭領は?」 アイシェに尋ねられ、ザイルは忌々しそうに呟いた。 「戦うよう命令してから、逃げ出した」 数拍おいて、ザイルの視線がアイシェの後ろに控えるシャフルに向かう。拘束された後、すぐにお互いが分かったが、言葉を交わしてはいなかった。 「女に助けてもらって、恥ずかしくないのか。あぁ? シャフル!」 最後の抵抗とばかりに、ザイルはシャフルを睨みつけた。シャフルの中で束の間、黒い思いが渦巻いた。盾を握る手に、力が入る。 しかし、二つの声が、シャフルの思いを止めた。 「こんなか弱い女に、壊滅させられる盗掘団もだいぶ恥ずかしいのではなくて?」 「こいつ、超むかつくんですけど? 撃って良い? お姉ちゃん」 殺気と共にさらに銃を近付けられ、ザイルの身体の震えが大きくなる。哀れな様子に、シャフルの昂ぶった気持ちも冷めていった。 ザイルが、指揮していた子分格の男たちは誰も、この場にいない。仲間の誰一人、彼を助けようとはしない。 あんなに怯えていた盗掘団も、ザイルも、こんなに脆いものだったのか。 シャフルの内に、悲しみに似た想いが起きる。 「ああ、こいつ、シャフル君に怪我させた奴じゃない。何か、見た事あると思った」 「あら、奇遇ね」 ファルが意地悪く笑い、アイシェも笑う。二人共、目が笑っていなかった。ザイルの震えが大きくなる。 「俺は、悪くない。命令されただけだ。そうだ、シャフルに手引きさせろって言われただけだ!」 「そうだとしても、あなたがシャフルに怪我をさせた事実には変わりはないでしょう?」 アイシェの冷たい指摘に、ザイルは口を無駄に開閉させた。 「おっ、俺を、どうする気だ……?」 搾り出すような声で、ザイルは尋ねる。 「そうね」 アイシェは後ろを振り返って、シャフルを見つめた。懐から拳銃を取り出し、手渡しする。冷たい鉄の感触が、シャフルの手の平を伝った。 「シャフルが、決めるわ」 そう告げられ、シャフルは一歩前に出る。ザイルと目が合った。 「なっ、なあシャフル。仲間だろう、俺たちは? 俺だって、お前を襲いたくはなかったんだ。あれは、言われたからやったんだ。な、お前なら分かるだろ?」 必死に喋り続けるザイルに向けて、シャフルは銃を構える。 仲間、か。 そんなもの、盗掘団には一人もいなかった。自分にも。ザイルにも。 「やめてくれ、シャフル! するから、何でもするからっ!」 喚き出したザイルの声は、聞こえない。彼と再会したせいで、起こった出来事をシャフルは思い出した。苦しく、重たかった気持ちが、心を駆け抜けていく。 「これで終わり、だ。ザイル」 恐怖に顔を引きつらせたザイルの前で、シャフルは拳銃を下ろした。 「好きに生きよう。俺も、お前も」 それだけを何とか言うと、シャフルはザイルに背を向けた。 枷は、外れた。後はお互いに、自由に生きていけば良い。盗掘団の中で成り上がれる力があるなら、ザイルも別の道を見つけることもできるだろう。 甘い決断だな。そう思いつつ、後悔はしなかった。アイシェに影響されたような気がして、シャフルは苦笑した。 「良いかしら?」 シャフルの清算を見届けてから、アイシェは口を開く。シャフルは、小さく頷いた。 「後は、任せて」 返却された拳銃を懐に戻しながら、アイシェは囁く。嫌な予感がしたが、シャフルは見守ることにした。 「ありがとう、許してくれて。いや、ほんと、感謝している」 平身低頭するザイルに、アイシェは笑いかけた。 「私は、許していないけれど?」 「は?」 困惑するザイルに、悪魔モード全開でアイシェは語る。 「シャフルは、許したけれど。私は、許すなんて言っていないわ」 「話しが違うっ!」 確かに、屁理屈だ。それが分かっているのか、彼女はすぐに譲歩した。 「でも、そうね。これを飲むなら、許してあげても良いわ」 アイシェは、透明な水筒に入った液体を取り出した。中身は、ただの濁った水に見える。 「何だ、それは」 ザイルの問いに、アイシェは薄く笑った。 「何でもするんでしょう? それとも、こっちの方が良い?」 散弾銃と水筒を、ザイルは見比べる。疑いの目を向けながら、彼は、水筒を手に取った。今も、そこら中から聞こえる呻き声を聞けば、無理もない。 恐る恐る、液体に口をつけたザイルを見て、アイシェは思い出したように口を開いた。 「あら、大変。ナリル川の水をそのまま入れた水筒を渡してしまったわ」 半ばまで水を飲んでいたザイルが、水を吐き出す。顔面が、蒼白になっていた。 サイロの中心を流れるナリル川には、一つ欠点がある。それは、水の中に寄生虫がいることだ。川の水をそのまま飲めば、確実に一週間は下痢が止まらなくなる。下手をすれば、狂い病と呼ばれる感染症にかかり、命を落とす場合もある。 だから誰でも、ナリルの水は煮沸して飲むのだ。 それを、生で飲ませたらしい。 「どうしましょう。明日から、お腹が大変なことになるわ。でも、そんなに飲んでしまっては……もう」 ザイルは何とか、水を吐き出そうと試みる。しばらく自由にさせておいてから、アイシェは冷静に宣告した。 「一度体内に入ったら、吐いても無駄だそうですよ」 「何てことをっ……」 過度の緊張で、ザイルの身体が痙攣し出す。 「死ぬかもしれませんね、あなた」 その一言で、ザイルは泡を吹いて気絶した。あまりに酷い制裁に、シャフルは言葉を失う。やり過ぎでは、と言いかけたところで、アイシェはこちらを向いた。そのまま、ザイルが飲んだ水筒に口をつける。ごくん、と喉が動いた。 「ただの水よ」 アイシェは、溜め息を吐く。 「煮沸しているから、飲んでも何ともないわ」 「いや、え?」 行動の意味が分からず、シャフルは首を捻る。疑問に答えるように、今まで黙っていたファルが後ろから声を出した。 「あいつ、シャフル君が振り返った瞬間、にやって笑いやがったの」 補足して、アイシェが言葉を繋げる。 「反省していないようだから、きついお仕置きをね。ここまですれば、二度と私たちに関わろうとは思わないでしょ」 姉妹とザイルを見て、シャフルは頭を掻く。店長を真似たつもりでも、やっぱりまだまだ甘い。 「敵わないなあ」 隠すこともなく、素直に出てきたシャフルの胸の内を聞いて、姉妹は照れたように笑った。ちょうどその時、騒ぎを聞きつけたのか、警吏や兵士が相当数、砂丘から姿を現した。シャフル、アイシェ、ファルは、武器を担ぎながら、その場を退散していく。後は、彼らが何とかしてくれるだろう。 砂の上を走りながら、シャフルは地平線が白んでくるのを眺めた。 長い夜が、明けようとしていた。 地下室で、残った銃弾の整理や、逃げる途中で回収した棺と、荷車の片づけを終えて、シャフルは一階に戻ってきた。 早朝の、冷たい空気が漂っている。その中で、静かな寝息が聞こえた。 寝室まで行けずに力尽きたのか、ファルが応接用のソファーで仰向けに転がっていて、アイシェは、カウンターの裏の椅子に座っていた。 眠っているだけなら、どちらも本当に綺麗だ。 シャフルは退室すると、毛布を二階から持ってきた。まず、だらしない格好で寝ているファルにそっとかけてやる。 「足を開くな、足を」 文句を言って、毛布を肩の辺りまで引き上げながら、楽しそうな寝顔を見つめる。ミイラに囲まれている気色わる……幸せな、夢を見ているのかもしれない。 「ありがとう」 小さく呟いて、シャフルはファルに一礼をした。残った毛布を手に、シャフルはカウンターに行く。落ちないように、アイシェの後ろから毛布をかけた。 華奢な身体。とても、戦闘をしてきたとは思えない。 開店まで、穏やかに休ませたくて、シャフルは音を立てず、後ろに下がった。その手を、アイシェの細い指が掴まえる。 椅子に座ったまま、後ろ手でシャフルの手を握るアイシェ。表情は見えない。それでも。 「おかえり」 恥ずかしそうな、小さな声はきちんと届いた。 だから、シャフルも応える。それが言えることに、嬉しさを感じながら。 「ただいま」 想像より、アイシェの手は、温かかった。 「店長、文化庁から封筒が届いたので持って来ました」 夕方、だいぶ冷えてきた空気を吸い込みながら、シャフルは呼びかけた。壁画の発掘現場で、指揮をしていたアイシェが近付いてくる。 「わざわざご苦労ね」 元の、無愛想な表情をしながら、アイシェは封筒を受け取った。封を切って、中身を確認する。書面を読んでいるアイシェから、シャフルは視線を壁画に移した。 「残念でしたね、壁画」 アイシェが期待を込めて掘っていた壁画は、上の輪郭までしかなかった。埋まっていた下の部分は、ほとんど崩落しているらしい。壁画が残っている可能性は、ゼロではないが、絶望的なようだ。 「期待した発掘が、思うようにいかないことなんて、よくあることよ」 寂しそうに言いながら、アイシェは封筒に入っていた紙面をシャフルに押しつけた。 「それ、もういらないわ。毎度のことだから」 「文化庁から来ているのに?」 驚きながら、シャフルは紙面を見る。短い一文が、記してあった。 『この度の、盗掘団壊滅の功績を称え、表彰する。 エリモス公国文化庁』 シャフルは、スポンサーのサハムの言葉を思い出した。 いやあ、流石はアイシェ様。文化庁からまた表彰されたそうで。 誰もが文化的な貢献をして、アイシェは表彰されたと思っているけれど。真実は。 「はは……」 シャフルは心の中で、呟く。真実というのは、厄介だ。 絶対観察眼でも、見抜けない時もあるし、言えない聞けない時もある。発掘で表彰されていると思ったら、盗掘団の掃討で表彰されている時もある。 期待して掘った先に、何もないこともあれば、鉄の扉の奥のように、思っていたものと違うものがある場合もある。 真実の姿に、時に傷つき、時に怯える。 それでも。それでも、人が真実を求めるのは。掘った先、扉の先を見たいと思うのは。 「?」 夕陽を背景に佇むアイシェを、シャフルは優しく見つめた。 「俺は……」 この人のことを、もっと知りたい。何を好み、何を嫌うのか。ファルや、彼女の両親のこと、何故、骨董品や考古学に興味を持ったか。挙げていけばきりが、ない。 でも、心からアイシェのことが知りたいと思った。それは、初めて感じる想いだった。 不意に、シャフルは自室に貯めていた封筒を思い出す。何に使うか、決められずに残していた金銭。 「何よ、じろじろ見て。変なこと、考えているんじゃないでしょうね?」 そうだ。この後、贈り物を買いに行こう。アイシェとファルが喜ぶものを。 あまりに良いひらめきに、シャフルは高揚する。 「いいえ、全然」 「本当に?」 疑りながら、顔を近付けてくるアイシェ。無愛想で、少し怖い。贈り物を貰った時、この顔は、どう変わるのだろう。 頬を染めて、照れるだろうか。怒った顔をして、嬉しさを隠すのだろうか。 まずは、それを確かめたい。 胸が弾む、長い夜になりそうだ。 アイシェの表情を想像して、シャフルは幸せそうに微笑んだ。 その様子から何を見抜いたのか、アイシェは顔を赤くして、そわそわと身体を揺らし、恥ずかしそうにシャフルを見つめた――。 |
白星奏夜
2013年04月26日(金) 14時07分55秒 公開 ■この作品の著作権は白星奏夜さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.12 白星奏夜 評価:0点 ■2013-08-13 17:04 ID:z.8rLriEhkg | |||||
季織様 お久しぶりです! そして、返信が遅くてごめんなさい。コメント残して下さってありがとうございます! シャフル、気に入っていただけてとても嬉しく思います。姉妹に良いようにされる姿、書く方としても楽しかったです。まあ、本人は冗談じゃないと言いそうですがw ザイルについて、指摘して頂いて感謝します。もっと粘着性のある奴に仕上げるべきでした。関係性も分かり難いですね。ザイルは盗掘団の若い首領、シャフルは腹心だった、くらいの方がすっきりしたかもしれません。いやらしい嫌がらせも、今頃になっていろいろと思いつきますね〜。 アドバイスをいただきながら、なかなか活かしきれていない今日この頃ですが、一つ一つ向上させていきたいところです。 重ねてですが、返信遅れましてすみませんでした。フライパンで焼かれるような猛暑、なかなかしんどいですが、健康が支えられますように。 ではでは、今回は失礼致します。またお会いできる機会を楽しみにしつつ。 |
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No.11 季織 評価:30点 ■2013-08-06 10:39 ID:QLsRWn0COJs | |||||
ご無沙汰してます。投稿された日から大分日数が経っているので、もしかしたら感想書き込みに気づかれないかもしれませんが、せっかく最後まで読んだので、加点させていただきます。 ゆっくり読ませていただきました。 序盤が読みやすく、入り込みやすくてよかったです。女の子ふたりのキャラがしっかりしてて、シャフルがうまくそれを盛り立ててる感じがしてよかったです。 シャフル、かわいいですv私もタイプです。アイシェに尻蹴飛ばされてるところなんか、もうvvv 欲を言うなら、ザイルのキャラももう少し立たせてほしかったかなと思います。 ザイルとシャフルの関係性がちょっとわかりにくかったです。 「潜伏期間」とはいえ2年間も好きにさせてやったわけですし、そもそも本来なら、盗掘団から離脱することすら難しいものだと思うのに、それをさせてやった、ともっと恩着せがましく言ってきたり、ねちねちと付きまとってはシャフルを怯えさせたりするとか、もっとしつこくてもよかった気がします。 その方が、シャフルやアイシェたちの引き立て役としても機能してきますし。 全体としては相変わらず優しい雰囲気が流れていて、癒されました。 ありがとうございました。 |
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No.10 白星奏夜 評価:0点 ■2013-07-17 20:42 ID:4TeCCZkhrsA | |||||
ゆうすけ様 こんばんは〜ご感想ありがとうございますっ。そして、お疲れ様です。 容姿の描写は、いつも悩みの種です。あれやこれや試しながら、良い形を見つけていきたいですね。 キャラクターごとのコメント、とても嬉しいです。それぞれ、改良すべきところがあって、とても勉強になりました! アイシェは、ギャップを持たせるべきでしたね。シャフルの軽さは、反省点です。暗さと会話の掛け合い、バランスを取れるやり方を考えてみます。ファルの戦闘能力、もう一度考え直してみたいと思います。倍増しで、壊れたキャラになりそうですが(笑) ほんわかな感じが好きなんですが、実はちょっとダークなプロットもあるんです。その内、投稿してみたい気もします。雰囲気が違いすぎて引かれるかもしれませんが……。 織田信長が甦りますか! それだけで、興奮しますね(私だけでしょうか)是非是非書いて下さいっ。 曹操の名言、しっかりと頂きましたっ。熱い、熱いです。そのお気持ちが、守られるように願ってやみません。貴重な時間を、少しでも割いて読んで下さったことに心から感謝しますっ。 ではでは、またお会いできることを楽しみにしつつ、今回は失礼しますっ!! |
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No.9 ゆうすけ 評価:30点 ■2013-07-15 10:33 ID:lvspLO.e7O6 | |||||
拝読させていただきました。数カ月ぶりに確保した自分だけの時間(二時間)を感想書きに費やすゆうすけです。 冒頭から丁寧な描写ですね。物語を読者にしっかりと届けようとする姿勢を感じますよ。主要キャラの容姿の描写も、私は大事だと思います。各キャラがそれぞれの立ち位置をしっかりと押さえているのが素晴らしいと思います。 アイシェ:若き経営者、ちょっと万能過ぎでしょうか? 苦手なものとか変な性癖があると、より人間味が増しそうだと思いました。エロ要素強化もアリかな。 シャフル:暗い過去があるわりに心に闇を感じません。やや軽い気がしました。子供向けアニメの主人公としてなら充分にアリだと思います。 ファル:姉以上の特殊能力を備えていて、実は戦闘最強キャラだというのはどうでしょう? 全体的にほんわかしたパステルタッチのような印象です。作者さんならではの世界観雰囲気で書いていけばいいと思いますよ。 あああ私も書きたいな〜。織田信長が現代に蘇って独裁者になる話とかいろいろプロットはあるんだけどな〜。いい歳しても、忙しくても、筆を折る気はありませんし。今日も事務所で仕事してますし。 老驥伏櫪志在千里 烈士暮年壮心不已 |
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No.8 白星奏夜 評価:0点 ■2013-07-12 20:30 ID:PGU/RJ1yWOA | |||||
楠山歳幸様 ご感想、感謝いたします。そして、お久しぶりですっ。 だいぶ性格の崩れた登場人物たちでしたが、それはそれなりに良かったようで安心しています。ファルのキャラは結構気に入っていたので、可愛い、好み、とのお言葉、本当に嬉しく思います。 気付けばだいぶイメージ元のエジプトは混乱していますが、いつか行ってみたいなあ、なんて思う今日この頃です。 スッと流れた印象は、ご指摘の通りだと私も感じています。もう一つためがつくれれば、良かったですね。転、の部分だったので、もう少し注意が必要でした! 力尽きてしまった私の方こそごめんなさい。 また近々、新しいものを投稿できればと考えています。楠山様も、長い間、コメントを下さっているお一方なのでとても感謝しています。また、気が向かれましたら声をかけてやって下さいっ! ではでは、今回はこの辺で〜 |
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No.7 楠山歳幸 評価:30点 ■2013-07-11 23:59 ID:3.rK8dssdKA | |||||
読ませていただきました。 上のコメントの通りと、あと、遺跡の題材にリアリティーがあっておもしろかったです。ファル、可愛かったです。好みでした。暴走ぎみのセリフも笑わせていただきました。 これは僕だけだと思いますが、シャフルが昔の仲間に見つかった後どうなるのかけっこうハラハラしましたが、ス、と流れてしまった印象でした。ごめんなさい。 今作も白星様の作風を楽しませていただきました。 失礼しました。 |
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No.6 白星奏夜 評価:0点 ■2013-06-29 20:17 ID:r3Qu0FVAKs. | |||||
帯刀穿様 ご感想、ありがとうございます! 技術的なところで拙くて、ほんとにごめんなさい。指摘を受けつつ、修正していきたいと思っています。 キャラクターについて、コメントして頂き、とても嬉しく思います。あまりに個性的ですとこんな奴いないだろ、という批判を浴びると思いますが、物語を動かす上ではある程度必要なようにも感じます。キャラクター作り、これからも頑張っていきたいです。 また、よろしければご感想を賜りたいと心から願っています。勉強になりますし、言葉をかけて頂けるのは嬉しいことですし。 ではでは、今回は、この辺で失礼します。ありがとうございました〜 |
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No.5 帯刀穿 評価:30点 ■2013-06-28 08:50 ID:DJYECbbelKA | |||||
キャラクターの作りが上手い。 指摘は他の人がきちんと説明しているので問題なし。 確かに偏りがあるのだろうが、それよりもキャラが立っていることは やはり大事。キャラクターが寝ていると全体的にきちんとしていても 読む側は主要キャラですら、誰だろうこれということになりかねないからだ。 |
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No.4 白星奏夜 評価:0点 ■2013-04-27 23:40 ID:uGLEJ10tVEs | |||||
gokui様 ご感想、感謝致します。初めまして、でよろしいでしょうか? 違っていたらごめんなさい!! 初めましてなら、よろしくお願いします! 個人的には、毒のあるキャラや変な性癖のあるキャラが好きなので、悪くないとのお言葉、嬉しく思います。 美形ばかりは、確かに考えものかもしれないですね。読んでいて自分自身、それで萎える時もあります。書いておいて、あれですが(汗 視点の統一は、完全に私のミスですね。注意力散漫でした。言い訳は、ありません! 長いと読まれないのでは? とここまでの期間、恐怖に震えていましたが、温かい言葉に励まされました。まだまだ書きたい構想は、胸の内にあるので頑張っていきますね。 コメントありがとうございました! またお会いできるのを、期待して。ではでは〜!! |
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No.3 白星奏夜 評価:0点 ■2013-04-27 23:25 ID:uGLEJ10tVEs | |||||
おがた様 ご感想、感謝致します。ゆるい感じでしたか〜。おそらく、本人が自由気ままに、散歩する感じで書いたので、切実さが足りなかったかもしれません。申し訳ないです。 もの足りなさ、は実感しております。あ、これ、盛り上がらないな(汗)と感じつつ、捨てるのも勿体無くて。アクションは、次の? 機会にとっておきます! 前作と比べると、確かにツンデレは弱いですね。ツンが薄かったでしょうか。デレが薄かったでしょうか。ツンデレ、で薄かったでしょうか(笑 気が向かれましたら、教えて下さい。加えて、ツッコミどころもでしょうか。 ともあれコメント頂き、&評価がゼロではなくて安心しました。ありがとうございます。また、お会いできるのを楽しみにしつつ。ではでは〜!! |
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No.2 gokui 評価:40点 ■2013-04-27 23:11 ID:3.rK8dssdKA | |||||
読ませて頂きました。 ラノベ系で気軽に読むことが出来ました。それでいて結構内容も詰まっていたかな。おもしろかったです。 キャラも悪くなかったですよ。どのキャラも(悪役を覗く)美形ばかりっていうのはちょっと気になりましたが、最近のラノベの傾向なので目をつむっておきます。 それよりも気になったのは、一人称と三人称の混同です。視点は混乱を避ける為にも統一して下さいね。私は、一人称でシャフルの視点から書いた方が良かったかなと思います。 それでは、これぐらいの長さなら全然読みますので、また頑張って下さいね。 |
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No.1 おがた 評価:30点 ■2013-04-27 23:04 ID:wxwaeJFv2JA | |||||
感想です。 全体の雰囲気としてはとても白星さんらしい、けれども、仕上がりとしてはらしからぬ、なんというか、締まらないゆるーい感じでした。 ツッコミどころ満載な感じで。 まぁ、ツンデレラブコメディと考えれば細かいことは言いっこなして感じですかねぇ。 男の子の読むもの、アクションものとしてはもの足りない感じではありますが。 で、店長さんのツンデレ要素が薄い! これは間違いない。いずれにせよ、ここは再考の余地ありかと。 ツッコミどころに関しては、いちいちあげつらいませんが、ご要望あれば、書き足すかも。 そんなことで。 |
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総レス数 12 合計 190点 |
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