風邪と宿屋と、星降る町と |
満天の星空だった。その輝きのすぐ下に、町がある。正確には、一際高い山の頂上付近に町が広がっていた。ここは、大陸一高い場所にある町。町の名を、エトワールという。別名は、星降る町。 その町の中の、古ぼけた煉瓦造りの宿屋に一人の少年がいた。真面目で、品の良さそうな顔をした少年は、裏庭で芋の皮むきをしながら、時折美しい星空を眺める。彼の名を、シリウスという。 エトワール。星降る町、か。 名前の通り、だなとシリウスは呟く。手を伸ばせば星が掴めそうに思える。しかし。 視線を落として、シリウスは皮むきを再開する。芋を握る手が、夜の冷気で強張っていた。その手を、シリウスは労わるように擦る。 どんなに届きそうでも、この手は決して星には届かない。世界で一番、天に近い場所でも人の身では、天に届かない。 悲しい、という感情がシリウスの心を満たしていく。そういう時に、当然のように付いてくるものがシリウスの瞳からは溢れなかった。ほんの少しでも、彼の瞳からその水滴が零れ落ちることはない。 涙も枯れる、とはこういうことなんだろうな。 疲れたような彼の顔は、さらに悲しそうに歪んだ。それでも、涙は出ない。あの日、彼が失ったものの一つが自分の涙、だった。 「お前、まだやってたのか」 聞き慣れた、きつい口調がシリウスの悲しみを途中で寸断した。彼は、ゆっくりと後ろを振り返る。黒髪を後ろで束ねた、小柄な少女が腕を組んでそこにいた。 「やあ、スピカ」 シリウスがそう口にすると、少女の頬が急に膨れた。 「スピカ、じゃない。スピカさん、だ。お前、十八で同い年だからって調子に乗るなよ。あたしの方が、この宿では先輩なんだからな!」 スピカは猛然と抗議しながら、シリウスに近付いてくる。相変わらず、物凄い剣幕だった。ごめん、ごめん、と適当に返しながら彼は笑う。 「お前、まだそんな皮のむき方してるのか。違うって言ったろ」 こうだよ、こう。スピカはシリウスの手から、短刀を奪い取ると目の前で実演してみせる。手慣れた感じで、するり、と皮が落ちていった。 「ほら、やってみろ」 手渡され、シリウスもやってみたが上手くはいかない。スピカは、渋い顔になった。 「違うな、それじゃお前の手が疲れるんだよ。後で、大変だろ。何て言うかな、こう、ずびっと入って、すっすっと進んで、しゅるっと行くんだよ!」 こちらを心配していることは分かるが、スピカの指導はいつもの如く分かり辛かった。 「その、何やら分かりにくい音で表現する癖はどうにかならないのかな?」 「お前用に、分かりやすく言ってるんだけど駄目か? あれ〜いけると思ったんだけどなあ」 どこをどう判断したら、そうなるのかとシリウスは頭が痛くなるのを感じた。 「あれ?」 気が張っていたせいか、今まで気にはしていなかったが本当に頭が痛い。冷気のせいかと思っていたが、身体が震える。スピカの意味不明な指導のせいではなくて、何故か熱っぽい。 シリウスの異変を、スピカもすぐに感づいた。 「そう言えば、お前、結構ひどい顔をしてるぞ。大丈夫か?」 どういう意味かな、そう返す気力も急に萎える。調子が悪い、と思った瞬間からシリウスは身体が重くなるのを感じた。手から、芋と短刀が滑り落ちる。 「おっ、おい」 崩れかかった、シリウスの身体をスピカが慌てて支えた。 ああ、またスピカに怒鳴られるな。 そう思いながら、シリウスの意識は遠くなった。 気付いた時には、自分の部屋のベッドに寝かされていた。身体全体が熱っぽく、呼吸も荒い。 「お目覚めかい?」 ベッドの側には、金髪の中年の女性がいた。 「女将さん」 シリウスや、スピカが居候している宿屋アルタイルの女将。名前を、マルテ、という。いつもは厳しいマルテは、穏やかな顔をしていた。 「すみません、すぐに」 「あ〜、あ〜、まだ夜中の十二時だよ。病人は寝てな」 十二時、とシリウスは呟く。どうやら、意識を失ってからそんなに時間は経っていなかったようだ。 「完璧に風邪だね。今夜はもう休みな。明日も無理しなくて良い」 「風邪」 アルタイルに来てから、二年。今まで、倒れることはなかったのに。情けない、そういう思いがシリウスの中に浮かぶ。 そんなシリウスの心情を察して、マルテが口を開いた。 「誰よりも遅くまで仕事をして、誰よりも早く起きる。この二年、見上げた働きぶりだったから別に何も言わなかったけどね。あんた、根を詰めすぎたんだよ」 「そう……ですね」 シリウスは、力なく笑う。思い返せば、休み無く、ひたすらに働いていたような気もする。 「何事も、やり過ぎは良くない。倒れたのは、良い教訓だよ。しっかり反省して、身体を休めな」 はい、と返事をしてシリウスは苦い顔をした。女将さんに怒られるのは、これで何度目だろう。それでも、嫌な気はしなかった。怒られる度に、どこか懐かしいものを感じる。 それが、母親に似ている、とシリウスはようやく気付いた。 「また、朝に様子を見に来るからね。それまでは眠っておくこと」 はい、とまた返事をしながらシリウスは言われた通りに目を閉じた。マルテが部屋から出て行く音が聞こえる。 「あれ、スピカ。いたなら、入ってくれば良いじゃないか」 「ちっ、違います。女将さん。ちょっと、向こうの部屋に用があって!」 「あんた、その部屋はもう三年も開けてない部屋だよ?」 「うっ、あぅ。あっ、あたし、もう寝ます! 明日、早いので!」 スピカ。再び遠くなる意識の中で、確かにシリウスは彼女の声を聞いた。 病人の部屋の前くらい、静かにしておいて欲しいな。 軽い愚痴が頭に浮かんで、すぐに消えた。どこか、気の抜けた気分のまま、シリウスは眠りに落ちた。 あの日、両親が葬儀に参列した時。シリウスはその場所に行かなかった。行ったら、認めてしまうことになると思った。もうあの娘は、ここにいないのだと。そんな、残酷な現実を見たくはなかった。 だから、シリウスは両親に一言、書置きをして発った。 目指す先は、星降る町エトワール。友人との会話で、出てきた。星が手に届きそうなほどの高所にある町。世界で、一番天国に近い町。 逝った人は返っては、来ない。それは分かっていた。 それでも、シリウスは無心にエトワールを目指した。エトワールに行けば、何かが変わるかもしれないと思ったのかもしれない。いや、心のどこかで、ひょっとしたらまた会えるのではないか、そう信じようとしたのかもしれない。 有り金を上手く工面して、歩けるところは全て歩いて、ようやく目的の町に辿り着いた時、シリウスは無一文になっていた。 それだけ、だった。 エトワールには、シリウスの期待したものは、何もなかった。何も、起こらなかった。 あるのは、ただ美しく、心を刺す星空だけだった。 世界で一番、天国に近い場所。それでも、そこは天国ではない。天に手が届きそうでも、そこは天ではない。 途方に暮れた、それがその時のシリウスを表す一番良い言葉かもしれない。疲れ果てて、動けなくて。寒くて、身体が震えて。空腹で、惨めで。そんな状態でも、涙は出なかった。 あの娘と一緒に、シリウスの涙も逝ってしまったのかもしれない。 泣けないのは辛い。悲しみが流れ落ちていかないから。泣いたら楽になるのは、涙と一緒に悲しさも流れていくからに違いない。 そんな酷い状態で座り込んでいたシリウスを、宿屋アルタイルの女将が拾った。 「あんたみたいなのが、よく来るんだよ。このエトワールにはね」 宿屋へと連れて行かれる途中で、女将マルテはそうシリウスに言った。 女将の言う通りだった。宿屋アルタイルには、シリウスと似たような境遇で女将に拾われた人が何人もいた。スピカも、その内の一人だった。 宿屋に拾われ、食べるものも、寝る場所も与えてくれた。その代わりに、その分の代金と故郷に帰るまでの資金をアルタイルで働いて返すことになった。 それが、二年前の出来事。 それ以来、シリウスは無我夢中で働いた。頑張って働いている間は、あの日の悲しみが薄れるから。 でも、僕は風邪で倒れた。 夢の中なのに、それだけは分かった。途端に悲しみが押し寄せてくる。 大好きだったあの娘が、優しい顔で笑いかけてくる。 さよなら、も言わずにこんなところにいる僕をあの娘は許してくれるのだろうか。そこまで考えたところで、夢は途絶えた。 目を開けた瞬間、スピカの整った顔が目の前にあった。 「うわ、お前!」 スピカが仰け反り、盛大に尻餅をつく。苦痛に呻く声がシリウスにも聞こえた。 「スピカ……」 多少心配になって声をかけようと思っても、寝起きで思ったようには声が出ない。 「急に起きるなよ、びっくりするだろ! っな、何もしようとしてないからな! 熱がまだあるか確認しようとしただけだからな!」 「言い訳するほど怪しいよ」 身体を起こしながら、シリウスは苦笑する。他人に顔を近付けて、どんな悪戯をする気だったのだろう。そこは、ひどく気にかかる。 「お前、まだ寝てなきゃ駄目だ」 恥かしさを隠すように、頬を染めてスピカは強引にシリウスをベッドに押し倒した。 「病人は、寝てろ。あっ、朝飯つくってくるからっ!」 スピカは憤然と立ち上がると、その場を立ち去っていく。口は悪いけれど、彼女はいつも心配をしてくれる。それが、心に染みた。 「ありがとう」 スピカの背に、シリウスは呼びかけた。振り返った、スピカの頬がさらに赤くなる。 「いっ、嫌々だからな。面倒臭いんだからな。仕方なく、ちょうど手が空いていて暇だからつくってやるんだからな!」 はいはい、とシリウスは笑顔のまま返事をする。少し荒く閉められた扉の反響を聞きながら、シリウスはくすっと微笑んだ。 スピカはいつも変わらないなあ、と。 うとうとしながら、待っていると扉が開く音がした。目を開けて、顔を上げる。時計は、朝の八時を指していた。 「は〜い、シリウス君。お加減はどうかしら?」 ウェーブのかかった金髪を揺らしながら、綺麗な女性が入室してくる。 「ソレイユさん」 宿屋アルタイルの看板娘。年齢不詳の美人、ソレイユがそこにいた。居候組の古株だ。 「仕事は大丈夫なんですか?」 「ああ、ちょっとくらい抜けても大丈夫よ。可愛い後輩が倒れたと聞いちゃね」 ソレイユは営業スマイルを見せながら、両手で持っていた盆を机の上に置く。綺麗な桃色の液体を入れたグラスがそこにあった。 「それは?」 シリウスが尋ねると、ソレイユは自信満々に頷く。 「よく聞きました。これはね〜、ソレイユ特製の病人用ドリンクなの!」 へえ、と感心しながらシリウスは身体を起こす。 「シリウス君のためにつくったんだから、全部飲んでね?」 手渡されるまま、シリウスは桃色の液体に口をつけた。甘い香りと、甘い味覚が流れ込んでくる。 「あ、甘くて、美味しいですね。何が入ってるんですか?」 ん〜、と頬に指を当て、ソレイユは答える。 「ピーチとぉ、蜜柑に、にんにく、すっぽんの血に〜、いもり? やもりの尻尾?」 ぶほぉ、とシリウスは後半の内容物を聞いて、ドリンクを口からグラスに逆流させる。 「びょ、病人に何飲まそうとさせるんですかっ!」 「え〜だって、病人には精力をつけさせるのが一番だって、女将さんが」 「精力違いですっ! 元気にするところが違うんですっ!」 シリウスの突っ込みに、ソレイユはにやにやと笑う。 「ああん、その感じ。その打てば響く突っ込みがないと、朝が始まらないのよね。ありがとう〜シリウス君!」 引っ掻き回すだけ、引っ掻き回してソレイユは陽気な笑い声をあげながら退室していく。 何故か、どっと疲れてシリウスは布団の中に身を沈めた。 全く、この宿屋の居候は。 再び、うつらうつらとしかけたところで、勢いよく扉が開いた。 「おう、シリウス! 大丈夫か」 快活な顔をした、若い男性が入ってくる。時計は、いつの間にか朝の十時になっていた。 「リゲルさん」 この宿屋の料理担当。シリウスに色々と良くしてくれる兄貴分だ。 「まあ、人間、風邪ひくこともあるさ。今日は、お前がいなくても大丈夫だ。しっかり休んどけ」 紙袋を手に、リゲルはベッドに近付いてくる。空腹を感じて、シリウスの腹が鳴った。 「腹減ったか? 今、スピカが悪戦苦闘してるからその内、運ばれてくるだろうけど」 可笑しそうに笑うリゲルを見て、シリウスも笑う。個人的な料理の腕で言えば、スピカはあまり上手い方ではない。それでも、一生懸命つくっている姿を想像して、シリウスはありがたい気持ちになった。 「その紙袋は?」 シリウスは、リゲルが大事そうに抱えているものに気付いて尋ねる。これか、とリゲルは紙袋を揺らして、にやりと笑んだ。 「なんだ。女性陣じゃあ、分からない男同士の気遣いも必要かと思ってな」 「リゲルさん……」 シリウスは微妙に感動して、紙袋を受け取る。中身を外に出して、入っていた雑誌の表紙に目を留めて……。 鼻血が喉を逆流し、猛烈に咽せ返った。 「ごっほ、ごっほぉ! あっ、あんた、病人に何を読ませようとさせてんですかっ!」 もろに十八歳以下禁止の印が刻印された、見事なまでの成人雑誌だった。 「いやだって、女将さんが病人には精のつくものって言ったから」 「何が女性陣には分からないだっ、あんたもソレイユさんと同じ脳味噌の持ち主かっ! 病人をムラムラさせてどうすんだっ!!」 シリウスは無理に起き上がって、リゲルを部屋から追い出す。 待て、ソレイユと同じとは聞き捨てならねぇ、と猛抗議する居候古株の意見を完璧に無視して、シリウスは先輩を部屋から駆逐した。 「全く、この宿屋の居候は」 紙袋を布団に投げ落として、シリウスはまたベッドに潜り込む。騒いだせいで、少し熱が上がったような気がした。 呼ばれたような声が聞こえて、シリウスは目を開けた。良い匂いが、部屋の中に満ちている。 「ごめん、遅くなった」 スピカが憮然とした顔で、座っている。机の上には、器に入った、作りたてのパン粥と幾つかのおかずが置かれていた。 時計は、昼の十二時を指している。 「朝ごはんというか、昼ごはんだね」 スピカがむっとしたのが分かって、ごめんとシリウスは謝る。机の方に行こうと身体を起こすと、スピカは慌てて制止した。 「いいよ、無理すんなよ」 スピカは器を持って、シリウスに近付いた。匙を器に入れて、持ち上げる。熱い、と思ったのかその場で息を吹いて冷ましてくれた。そのまま、その匙をシリウスに差し出す。 「ほら」 促されて、シリウスはパン粥をすする。熱のせいではなくて、頬が熱っぽくなった。 「後は、自分でできるよ」 何か落ち着かなくて、シリウスはスピカに言って器を受け取った。食べている間も、スピカの視線を感じる。女の子に食べるところを見られるのは、理由もなく気恥ずかしかった。 「スピカは食べなくて良いの?」 ふと気になって、シリウスは尋ねる。もうお昼なのに。 「あっ、あたしは大丈夫だ。先に済ませた」 「一緒に食べれば良いのに」 シリウスの抗議に、スピカは頬を膨らませる。だって、全部食べたんだもん、と僅かに口が動いた。 シリウスは心の中で、優しく笑った。 一番出来のいいのを持ってきたくて頑張った、というところだろう。ということは、失敗作は彼女のお腹の中、ということになる。 「ありがとう、おいしいよ」 素直に礼をすると、スピカの頬が茹で上がった。 「お前、そういうのは卑怯だ! どっ、どう返して良いのか分からない!」 シリウスは少し意地悪く、微笑む。 「スピカは褒め殺しに弱いもんね」 その一言でさらに喚いて抗議するスピカを見つめながら、シリウスは思った。 スピカは、変わらない。どんな時も、うるさくて、口が悪くて。だけど、心が温かくなる。 そう、とても。 「何だ、これ。綺麗」 安心しきっていたシリウスの心に緊張が戻る。スピカが手にしていたのは、ソレイユが置いていった精力ドリンクだった。 「ちょうど良いや、これ貰うな」 お腹は一杯だけれど、飲み物が欲しい。そんなところだったのか、シリウスが止める間もなく、スピカはそれを飲み干した。 ああ、もう僕は知らないぞ。 戦々恐々としながら、シリウスはスピカの様子を窺う。 「甘くておいしかったぞ、良いなあ、病人は」 特に変わった様子もなく、スピカは気楽な意見を述べている。まあ、あのソレイユさんの作品だからなとシリウスは開き直った。効果があるとは、考え辛い。 「ドリンクはさておき、仕事、そろそろ戻った方が良いよ」 時計を見ながら、シリウスは告げた。気付けば、もう一時近くになっている。そうだな、とスピカは立ち上がると少し嬉しそうに、振り返った。 「ちゃんと寝てろよ。今日はお前がいなくても何とかするから」 手で返事を返して、シリウスはまた眠りについた。 「おいしい?」 柔らかい少女の声が、シリウスに尋ねてくる。 「町で一番」 「嘘だぁ」 木漏れ日が心地よい、ベンチの下で彼女が笑う。つられたように、シリウスも笑った。二人の住む町から少し外に出た、街道の休憩所での出来事だった。 「お腹が空いてるから、何でもおいしく思えるんだよ」 ベンチに手を付いて、照れたように彼女は両足を揺らす。表情に出さなくても、そういう仕草で感情が分かってしまうところがシリウスはとても好きだった。 「そうかもね」 適当に返事をしながら、シリウスはまた彼女のつくったお菓子を口に入れる。二人は、しばらく無言で、街道を行く人を眺めていた。 フレア。それが、彼女の名前だった。幼馴染の少女。隣から、甘い匂いが風に乗って香る。それを意識してしまって、シリウスは少し緊張した。 互いに相手の顔をそっと見ようとして、視線が合う。 「何?」 優しく微笑まれて、シリウスは咄嗟に菓子を手に取った。 「いや、別に」 好き、とどちらかが言えば良い。それでも、どちらも自分の想いを口にしたことはなかった。言わなくても、何となく伝わってしまっているのは、腐れ縁といえるほど長い付き合いからなのかもしれない。 学校が休みの日、何をするのでもなく、二人でこうやって話していることが嬉しかった。いずれ、想いを口にしようとは思ってはいたけれど、今日ではなかった。 変わらなくて良い、シリウスはそう思っていた。けれど。 「帰る前に一つだけ、聞いても良い?」 いいよ、といつものようにシリウスは彼女の問いに答える。 「あの……ね、シリウスは、特別な人っていうか、大事なパートナーっていうか、その、そういう関係って、必要だと思う?」 シリウスは、はっとしてフレアを見つめる。フレアはこちらを見ずに、顔を伏せたまま、スカートの裾を指でいじっていた。 その仕草と言葉、表情からフレアが何を言いたいのか分かってしまう。長い付き合い、だから。 「どうかな、今は必要ない、かな」 風がゆっくりと二人の髪を、揺らした。 「やっぱり?」 フレアは照れたように、首を傾けて笑う。今にも、泣きそうなほど酷い笑顔だった。 シリウスは、すぐに自分の発言を後悔した。何故、あんな嘘を言ったのだろう。フレアとの関係が、変わってしまうことが恐かったのかもしれない。 やっぱり、と言ったフレアの想いが痛かった。 気まずい雰囲気のまま、二人は帰途についた。 「じゃあ、また明日」 「うん、じゃあね」 定番の挨拶を交わして、それぞれの家へ向かう道に分かれていく。 明日、きちんと謝ろう。シリウスは、心に誓って、家に帰った。 それが、最後だった。フレアに明日は、来なかった。 帰る途中で、馬車に轢かれたらしい。最初にそれを父親に聞いた時、シリウスは信じられなかった。フレアの家に向かう道は、馬車が通れない狭い通路だから。そう、シリウスが反論すると父親はすぐに返してくれた。いや、大通りで巻き込まれたらしい、と。 シリウスは、その場で崩れ落ちた。両親が慌てて、駆け寄ってくる。 僕のせい、だ。 フレアは悲しい時、泣きそうな時、いつも大通りを抜けた先にある噴水広場に行く。噴水の音にまぎれて、泣く。それが、フレアの癖だった。それが分かっているから、シリウスも近寄らなかった。 今回も、そうだ。僕の返事が悲しくて、フレアはいつものように噴水広場に向かった。そして、その帰り道の大通りで事故に。 僕のせい、だ。 あんな返事をしなければ、フレアは大通りをその日、通ることは無かった。 僕が、殺した。 たった一言、それだけで。 二年前のあの日、シリウスは誰にも言えない後悔と共に、町を出た。 人が動く気配がして、シリウスは目を覚ました。 「ありゃ、起こしちまったかい」 「女将さん」 少し身体を起こすと、額から濡れた布が落ちてきた。 「これ……は?」 「ああ、あんたが苦しそうにうなされているって、スピカがえらく心配してね。暇を見つけては、あんたのために交換してくれてたんだよ。後で、礼を言っておきな」 僕のために。 シリウスは、泣きそうな感情が押し寄せるのを感じた。マルテは目を細めて、シリウスを見つめる。 「それは?」 気恥ずかしさからか、シリウスは話題を変えるために、机を指差した。いつの間にか、机の上には、包装された様々なものが置かれていた。 「みんなからの見舞いの品、だよ。全く、うちの居候どもときたら、営業時間中にあたしの目を盗んで抜け出すとは良い度胸だね」 文句を言いながら、マルテはシリウスにも見えるように幾つかの見舞い品を手に取って見せた。 「お菓子に、果物に、まあ色々集めてきたもんだ。お守りまであるよ」 マルテは、木彫りの人形をシリウスに渡す。ふくよかな女性の形をした、お守りだった。 「セーミャ神は、安産祈願のお守りなんだけどね」 調子が悪いのに、シリウスは思わず笑ってしまう。風邪の病人に、安産祈願とはだいぶ慌てて用意したみたいだ。 「たかが風邪でこの始末とは、みんな、よほどあんたが好きらしい」 マルテは快活な笑みを見せる。シリウスも、笑顔で応えた。 「もう五時だ。夕食前でまた、忙しくなるね。あたしゃもう行くよ。あんたも早いとこ、直してくれ。一人欠けるとうちはぎりぎりなんだ」 はい、と答えてシリウスはベッドに身を沈めた。 身体が、弱っているからだろうか。人の好意が、妙に心地よかった。 「言い忘れてた、あんた、そういうのはちゃんと隠しておきなよ」 扉を閉める前に、マルテは一言言い残す。 「そういうの?」 シリウスは、視線を足元に下げた。寝ている間に滑り落ちたのか、誰かが引き出したのか、リゲル提供の成人雑誌が表紙を衆目の目に晒す形で、散らばっていた。 「これ、リゲルさんのなんだけど……」 まさか、安産祈願はこれを目にしたからだろうか。 それよりも、スピカは、これを見たのだろうか。そう考えるとシリウスは落ち着かなくなった。 うん、それはまずいような気がする。 とりあえず、急いで袋に雑誌をしまってベッドの下に隠す。しばらくすると、また眠気が襲ってきてシリウスは眠りに落ちた。 第一印象は、最悪。それが、スピカに対する気持ちだったようにシリウスは思う。シリウスが何をやっていても、スピカの愚痴と指導が入ってくるのだから。 下手くそ、馬鹿、貸してみろ。 この呪いの言葉(スピカの口癖)を、最初の半年間でどれだけ聞いたことだろう。数えたら、きっと世界一になれるに違いない。おまけに、理解不能な効果音付きの説明も加わるのだから、余計にシリウスには悩みの種だった。 小さいくせに生意気だな。フレアの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたい、と何度思ったことだろう。 でも、半年を過ぎた辺りでシリウスは気付いてしまった。 スピカの言う通りにすると、あまり疲れないで上手くやれることに。 客室の寝具の並べ方、片付け方、衣服の洗い方、たたみ方、食器の配膳の仕方、食材の下ごしらえのやり方、全てに意味があった。 スピカは、別にシリウスのやっていることが気に入らなかったわけではなかったのだ。ああ、そうしていると後で疲れるだろうな。ああ、そういうやり方だと後で手が痛むだろうな。そういう、彼女なりの気遣いだった。 つまり、伝え方が不器用なんだ。 そう思えたら、嫌な指導と愚痴が、心配と配慮に変わった。シリウスの、スピカへの気持ちも変わった。 スピカは、ちょっと人に気持ちを伝えるのが下手な可愛らしい娘なんだ、と。フレアとは全然違うタイプの女の子。それでも、気付けばもう二年も一緒に働いてきた。気付けば、フレアがいて当然だったシリウスの隣には、スピカがいて当たり前になった。 夢の中で、シリウスは呻く。 そう、僕はフレアがいた場所にスピカがいることを受け入れている。 「違う、忘れたわけじゃないんだ」 言い訳をする子供のように、シリウスは虚空に叫ぶ。 まどろみの中で、フレアとスピカの表情が交互に浮かんでは消えた。 「僕の、僕は……」 大切な気持ちがぐちゃぐちゃになって、シリウスは顔を悲痛に歪める。それでも、涙は出なかった。夢の中でさえ、も。 嫌な汗をかいた気持ち悪さからか、シリウスは目を開いた。時計に視線を移す。夜の九時、だった。 額に手を当てる。少し、熱が下がったように思えた。苦しさも、だいぶ和らいでいる。シリウスは一息吐くと、そっとベッドから起き上がった。 机の上に置けなかった見舞いの品が、いつの間にか床にも置かれている。 「ただの風邪、なのに」 シリウスは温かい品々を優しく撫でた。大体、誰が何を置いていったのかは想像できる。贈り物には、その人の個性が出るから。これは、○○さんだな。あ、これはあの人だな。そんな風に見ている内に、シリウスはスピカのセンス通りの品を見つけた。 「予防薬って……スピカは、流石のセンスだなあ」 もう発症しているから、あんまり意味はないのだけれど。それでも、気持ちは嬉しい。シリウスは眺めている内に、うがい薬を始めとしてもう三つ、四つほどスピカセンスの品を発掘した。 「スピカ」 一言呟いて、シリウスは微笑む。もう二年も一緒にいるから。彼女の想いは、分かり過ぎるくらいに分かってしまった。 そして、分かるからこそシリウスは表情を曇らせる。 きっと、僕はスピカに応えることができない。フレアを忘れて、彼女に僕がしてしまった過ちを忘れて、自分だけが良い思いをするなんて。 「寝てなくて良いのか」 呼び声を聞いて、シリウスは力なく笑う。入り口に、スピカが立っていた。 「少し、楽になったから」 そっか、と口にしながらスピカはゆっくりとシリウスに近付く。 「仕事は?」 「ひと段落した」 事務的に言いながら、スピカはシリウスが近い、と感じる距離まで詰め寄った。何、と尋ねるシリウスを無視して彼女はシリウスの額に手を当てる。 「ん〜熱は、下がったみたいだな」 「だから、楽になったって今、僕言ったよ」 「全然、楽そうに見えなかった。お前の顔」 スピカの言葉に、シリウスはぐっと拳を握る。何か言いそうになる、自分の口をシリウスは必死に抑え込んだ。 駄目だ。スピカに悟らせるような、そんなことをしては。 「シリウス……」 強張った拳に、細い指が触れる。俯いた顔を上げた、そのすぐ近くにスピカの顔があった。頬が、朱に染まっている。 「スピカ」 普段のスピカなら、絶対に自分にボディタッチをしてくることなんて、ない。これは、まさか、ソレイユさん特製ドリンクの影響か。 「大丈夫?」 目の前で柔らかそうに動く、スピカの唇を見つめてシリウスは激しく動揺した。時間差で発動するなんて、なんて恐ろしい効能をつけてくれたんだ。 そんな変な心配をしていると、突然スピカは顔を伏せた。髪で、表情が見え難くなる。 「お前が倒れた時、すごく心配した」 スピカの肩が、小刻みに震えた。スピカ、とシリウスは呟きながら、最初に倒れた時を思い起こす。あの時、支えてくれたのはスピカだった。 「風邪だって分かってたけど、苦しそうなお前を見てたら、お前のことが心配で堪らなくなった」 肩に倣うように、スピカの声も震える。 「辛そうにうなされているのに、和らげてやれない自分が悔しくなった。お前が、お前が気になって、今日……、今日、何をしても、あたし、失敗ばかりで……」 涙を浮かべたスピカの瞳が、シリウスを見上げる。懐かしいものを見る目で、シリウスはその輝きを見つめ返した。 「だから、気付いたんだ」 スピカの言葉に、シリウスは怯えに似たものを感じた。一緒だ。あの時、と。 「あたし、シリウスのことが…………好きだ」 自分は今、どんな表情をしているだろう。シリウスは、全身の体温がなくなるような感覚に襲われた。 困ったような瞳が、すがる様な瞳が、シリウスの答えを待っている。 応えたい。その想いに。でも。それは、それだけは。 「僕は……」 あの……ね、シリウスは、特別な人っていうか、大事なパートナーっていうか、その、そういう関係って、必要だと思う? どうかな、今は必要ない、かな。 あの日の会話が、甦る。 そうだ。僕は、その一言で、フレアを。 繰り返すのか。また、ここで。そして、また逃げ出すのか。今度はこの町から。 「僕は……」 逃げるのか。スピカ、から。 シリウスの顔が崩れた。精一杯の笑顔。笑えないのに、笑っている無理な表情。 「病気で弱っているところに、それは卑怯だよ。スピカ」 「ごめん」 断られたと思ったのか、スピカは悄然とした表情を浮かべる。その小さな身体を、シリウスはぎこちなく抱いた。 「ちょっ、おまっ!!」 「僕も、だよ。スピカ」 暴れていたスピカの手足が、止まる。 「ほ、ほんと……か?」 シリウスは、心で何かが解けていくのを感じながら頷く。向かい合った、二人の視線が合った。 「屈め」 目を閉じながら、スピカはやや憮然とした口調で命令する。え、と首を傾げるシリウスの膝をスピカは足で小突いた。 「馬鹿……届かない、から」 何をしようとしているか、シリウスは悟る。 「風邪、うつるよ?」 「あたしは別に、良い」 シリウスは、くすっと笑いながら背を曲げた。到達点まで降りてきた、その唇に、スピカの唇がたどたどしく触れる。 涙、の味がした。 瞬間、解けかけていたものがシリウスの中で完全に紐解かれた。シリウス自身の、肩と唇が震える。 口を離しながら、スピカがその変化に気付いた。 「お前、泣いて……」 悲しい、という感情と、嬉しい、という感情がごちゃ混ぜになってシリウスの中を駆け巡る。大粒の水滴が、瞳から溢れては頬を伝った。 「悲しいのか? 嬉しい、のか?」 「どっち、も」 それだけ、答えるとシリウスはスピカの前で崩れるようにして抱きついた。子供のような嗚咽が、部屋を飛び越えて、廊下にまで響く。綺麗な雫が、止めどなく流れた。 涙は、フレアと一緒に逝ったわけではなかった。 ずっと、溜まっていただけだ。シリウスの中で。流れ落ちずに。 これで、本当にさよなら、だ。 もういない、フレアの顔がシリウスに笑いかける。 それで良いんだよ。そう、言われている気がした。 「あたしは、お母さんが死んじゃって。それで、このエトワールに」 宿屋の屋根の上。煙突掃除用に、組まれた足場の上に二人は並んで座っていた。一つの毛布に、シリウスとスピカが一緒に包まっている。 互いの顔は特に見ずに、美しく瞬く星を眺めながら、二人は長い話しをした。最初は、シリウスがエトワールに来た話。そして、次は、スピカがエトワールに来た話を。 「あたしも、最初はシリウスと同じ。無理して働いて、それで体壊して」 「そこで、女将さんか」 「そ、看病してもらっている時に、あたしも泣いた」 白い息を吐きながら、シリウスは星を見つめる。暗く、冷たい夜空。真っ黒な空に、小さく星は輝く。消えそうな光。でも、決して消えない。漆黒の中で、力強く光を放つ。 「確かに、女将さんってお母さんみたいだよね」 「みたい、じゃないだろ」 スピカは肩で、シリウスを軽く小突く。 「正真正銘、あたしたち宿屋アルタイルみんなの、お母さんだ」 スピカを引き上げたのは、女将さん。そして、僕を引き上げたのは……。 「適うかなあ」 ぼそっと零したシリウスの愚痴に、スピカは肩をそっとシリウスに寄せた。その温かさを感じて、シリウスは笑顔になる。 フレアのことは忘れない。一言に、重みがあることも忘れない。 でも、前に進む。進まないことと、忘れないことは決して同じではないから。 「ありがとう、スピカ」 素直な礼に、スピカが照れるのが分かる。相変わらず、褒め殺しに弱いなあ、とシリウスは、無数の光の点を見つめながらそう思った。 目覚めの良い、朝だった。時計は、朝の四時を指している。熱は完全に下がっていた。体調も良い。どうやら、何とか風邪は落ち着いたようだ。 着替えをしながら、シリウスは昨日の出来事を思い浮かべた。 ここで、スピカと。 思わず唇に手をやって、シリウスは誰にも見られていないかを無駄に確認する。 ともあれ、今日から完全復帰だ。まずは、迷惑をかけた宿屋のみんなに謝って、元気良く働いていこう。 両親にも、きちんと手紙を出しておく必要もある。 「おはようございます」 控え室に、張り切った声で入っていくと陰気な空気がシリウスを包んだ。 「あ……、あんまり大きな声出さないでくれる?」 営業スマイルが売りの、ソレイユさんの表情が暗い。 「そうだぞ、お前、もうちょと声を抑えろ。頭に響く」 「リゲルさんまで……」 宿屋の従業員(居候組)の調子が著しく悪い。誰かが、咳をする声も聞こえた。 「あれ、これってまさか」 「あんたからうつされたんだよ。全く、人の目盗んで見舞いになんか行くからこうなるんだ」 そういう女将さんも、口を布で覆ってとても具合が悪そうですけど。シリウスは出かかった言葉を飲み込む。 「あれ、スピカは?」 大事な姿が見えずに、シリウスは心配になってマルテに尋ねた。マルテの瞳が、女将の威厳を込めた厳しいものになる。 「他は微熱程度なのに、何故かあの娘だけ、あの娘だけ、症状が重いんだよ。何でだろうね」 詰め寄られて、シリウスは冷や汗を流す。原因に心当たりがあるから、だ。 「何〜、スピカともしかして、もしかして的な〜?」 「おい、シリウス。マジかっ。詳しく聞かせろっ!!」 病人のくせに、ソレイユとリゲルは急に蘇生して近寄ってくる。 「あ〜あ〜、病人が騒ぐんじゃないよ」 二人を制止しながら、マルテはスピカの面倒を見るようにシリウスに告げた。心の中で、喜びながらシリウスは移動しようとする。その背後に、マルテは呼びかけた。 「スピカを泣かすんじゃないよ!!」 ああ、お見通しってわけで。そう思いながら、シリウスは了解、と手を上げた。 部屋を出て行く、シリウスの背をマルテは安堵の目で見つめる。女将でも、経営者でもない、優しい瞳だった。 ノックして、スピカの部屋に入る。スピカは顔の半分まで、布団を上げてシリウスを睨んだ。弱った姿を見せるのが、気恥ずかしいようだ。 「お前の、せい、だ」 「ごめん」 あれは紳士協定だったような気もするけれど。シリウスは、微笑みながらスピカの側まで近寄る。 布団から右手が、シリウスの方に伸びてきた。シリウスは宝物を扱うように丁寧に、それでいて優しく自分の手を重ねる。感謝と、決意、と共に。 「責任、とれよ」 きゅっと、握られた小さな手の感触を、あのキスと一緒にシリウスは一生忘れないと思った。 「精一杯、看病させて頂きます」 星には手が届かなくても、エトワール(星降る町)で、シリウスは確かに掴んだ。星ではない、小さく大切な輝きを――。 |
白星奏夜
2012年12月22日(土) 11時35分11秒 公開 ■この作品の著作権は白星奏夜さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.15 白星奏夜 評価:0点 ■2013-04-03 10:22 ID:53vWpQvhWuU | |||||
umeto様 ご感想、感謝致します。そして、お久しぶりです!! 動きのない、一部屋の中でお話しが進むので、確かに派手ではないですね(笑 こんなので大丈夫かと心配していましたが、エトワールの設定が気に入って頂けたようでとても嬉しく思います。何より、行ってみたいというそのお気持ちが生まれたことが大きな喜びです。 星空の描写が少ないのは……ミスです。でっ、でも結果オーライということで、次から精進していきたいと思います! ゴッホの絵、素敵ですよね。調べてみました。星月夜、星降る夜、どちらのイメージでしょう。個人的には、星降る夜の方が、私のイメージとぴったりでした! 最初にこれを見ていれば、もっと夜景を描けたかもしれません(笑 ともあれ、コメントして頂き、ありがとうございました! また、お会いできることを楽しみにしつつ。ではではっ〜。 |
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No.14 umeto 評価:30点 ■2013-03-30 21:04 ID:9CoILnHe5/6 | |||||
お久しぶりです!遅ればせながら、読ませていただきました……。 ストーリーは決して派手ではないですが、舞台設定がとても素敵でした。 エトワールの街の様子が手に取るようにイメージできて、つい「行ってみたいなぁ、飛行機でどん位だろう」とか思ってしまいました。 情景描写って、ただ事細かにどんな建物があって、何色で、何が見えて……って説明を重ねるだけじゃなくて、そのストーリー全体を使って表すと、すごく生き生きとイメージできるんですね! 星空の描写自体は少ないのに、故人に未練のある人がつい集まってきてしまう場所、というだけで、「あぁ満天の夜空なんだろうな〜」ってイメージできましたし、入れ替わり立ち替わり看病に来てくれるなんて、きっとこの街の夜景はすごく温かい明かりでいっぱいなんだろうな〜、と……どんどん想像できました!(最終的にゴッホの絵のようなイメージで落ち着きました…笑) すてきな作品ありがとうございました。 |
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No.13 白星奏夜 評価:0点 ■2013-03-14 20:35 ID:dgpYGGhvAQo | |||||
ゆうすけ様 返信遅れまして、申し訳ないです。こんばんは〜。そして、お久しぶりです。 過去に縛られるのか、それとも前を向くのか。問いかけておきながら、早く書き上げたい気持ちから、溜めが足りないものになってしまいました。反省、です。自分自身も、うじうじするタイプなのに何故か焦ってしまいました。 スピカが可愛い、と言って頂けて、とても嬉しいです。こういう娘に想われたかった、というお言葉もです。自分の描いたキャラや、イメージがそれぞれの記憶や心に共有されるのは本当に楽しいですし、うきうきします! 投稿して良かった、と思える一瞬です。 お忙しかったのですね。お身体は、大丈夫でしょうか? 私の書くものが、少しでもお力になれれば本当に幸いです。また、創作し、感想を書いていく時間ができるように願っております。 ゆうすけ様の感想に、私の方こそ、いつも勇気を頂いています。思い返せば、投稿してから、長い間、感想を付けてきて頂いていて、感謝しても、し足りません。作品や感想、文章のみを通して、互いに触れ合う、知り合う、というのは、武器や戦闘、計略戦を通して互いを知る戦国武将みたいで何か格好良い気がします! すみません、ちょっと妄想モードに入ってしまいました(笑 ともあれお忙しい中、読んで頂き、本当にありがとうございました! ではでは、また必ずお会いできると信じて。 |
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No.12 ゆうすけ 評価:30点 ■2013-03-12 18:19 ID:1SHiiT1PETY | |||||
拝読させていただきました。 丁寧に物語を届けようとする気持ちを感じる文章で、心地よく作品世界に入り込めました。堂々たる王道作品だと思います。 過去を引きずるか、未来へ踏み出すか? この問がいいですね。読者の心に響くと思います。自分だったらどうしようと読者に思わせる要素ですね。そしてやっぱり未来へと歩き出す。作者さんならではの安心設計です。ここで私もHALさん同様に、あっさりしすぎかなと感じました。私自身がひきずるタイプなのが原因かもしれませんが、もうひと悩みあったほうがカタルシスもまた大きくなりそうです。 スピカが可愛いですね。若い頃、こんな女の子に想われたかったとか思っておじさん赤面です。 年末からの激務で、随分と読むのが遅くなりました。書く余裕もない日々ですが、創作をやめる気も、ここで感想書きをやめる気もありません。こういう丁寧に書かれた作品を読めば感想を書きたいですし、私もまた作品を書いていきたいと思います。白星さんの創作活動に期待しております。ではまたいつか。 |
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No.11 白星奏夜 評価:0点 ■2013-02-04 19:10 ID:YHGcGsnwuwQ | |||||
えんがわ様 ご感想、感謝致します。返信が遅れ、申し訳ないです。そして、お久しぶりです! 読みやすい、とのお言葉、嬉しく思います。でもでも、まだ読みづらいという他の方のコメントもあるので、頑張って、精進していきたいところですね。 大事なシーンでちょっと焦って書いてしまったので、個人的にはもっと尺を多く使うべきだったなあ、なんて反省しています。本音は、二人をもっといちゃいちゃさせたいだけですが(笑 スピカは、分かりやす過ぎましたね。こそばゆい感じ……気持ちに気付いて欲しいけれど、ああ、でも気付かれすぎるのも恥かしい、的な感じでしょうか。何かそういう微笑ましいモヤモヤ、創作意欲がわいてきます。 病気の時、おっしゃられる通り、人の優しさが心地よくなります。大人になっても、その温かさは変わらないですね。なんか、そういうほんわりした想いを形にしたかったので、そこから、えんがわ様が何か感じて頂けたのなら、それだけで私は幸せです。 と、うまくご感想にお答えしているのか、個人的に不安ですが、ひとまず今回はここで失礼させて頂きます。またの機会を楽しみにしつつ、ではでは〜。 |
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No.10 えんがわ 評価:30点 ■2013-02-01 18:26 ID:43Qbmf87t4Y | |||||
拝読しました。 凄く読みやすい。すらすらとストレスレスに一気読み出来ました。自分には滅多にないことです。テンポというのかな、リズムというのかな、そういうのが上手だと思いました。シリウスが過去を乗り越えようとするシーン、夜空をバックに語り合うシーン、この二つは本当に自然で丁寧で、高揚感一杯に感じるところでした。話にメリハリがあって、素敵です。 ただ、スピカの感情は序盤からちょっと分かりすぎるくらいに露呈してたかなとも思います。何だろ、もうちょっと、こそばゆい表現でそれとなく伝えてもと。 宿屋での温かい交流と失ったものが少しずつ足されていくシーン。病気で弱った時に、ほんと、人の優しさっていうのにふれると、凄く心地よくなります。そういうのが作品全体から出ていたと思います。 |
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No.9 白星奏夜 評価:0点 ■2013-01-05 13:54 ID:2LrfsJowab. | |||||
帯刀穿様 返信遅くなり、すみません。再度のコメント、感謝致します。うがつ、と読むのですね。お名前と、貫くようなコメントがシンクロしていて、上手いなあと勝手に感動してしまいました。 テクニックの部分、丁寧に分析して下さり、心からお礼を申し上げます。ああ、そうだなあと気付かされるところばかりで、とても勉強になりました。 どうも、勢いと気持ちのままに書き上げて、少しの推敲で投稿してしまう癖があるので、よく考えて練り上げていきたいと思います。まあ、あんまり考えすぎると、冬眠状態になるかもしれないので、ほどほどかもしれませんが……。 季節、時間、暗示、その他、教えて頂いたところを今後に生かしていけるように努力していきます。また、お気が向かれましたら、いつでも温かく指摘して下さい。お待ちしています。 ではでは、この辺で私は失礼致します。重ねてコメントを頂き、ありがとうございました!! |
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No.8 帯刀穿 評価:0点 ■2013-01-02 14:52 ID:DJYECbbelKA | |||||
名前は「たてわき うがつ」 ちょうど折よく、感想を書いていたところ、参考になるような作品が現代のほうにあった。グッドバイ バッドバイ・作者は時乃さんというらしい。 この人の描写は技術的な要素が幾つか含まれている。 心理描写と、背景描写を同時に書いている。 ワンシーンに最低でも二つ以上の意味を持たせた書き方がなされてある。 暗示とシーンを連動させている。 本作品は星が基本的な部分に巡らされている。この部分は省略するより、拡張して使ってもらえるとよいと思う。せっかくの売りなので。星の本や月の本などを俺は所持していて、必要に応じて、表現を取りだしてきている。ただ、近頃はネット上からでも、いくつか情報があるので、確認をしてうまくちりばめるといいだろう。 さらには、宿屋と従業員という設定をうまく使いこなし、奥行き感を出してみてほしい。接客ばかりでなく、厨房での戦争のような慌ただしさや、急きょとして泊まりに来る団体客への対応、そこを接点にする人間関係の構築などができると思う。 天国に一番近い町、というのは現在地の部分で少し気にかかる。辿り着くまでに、靴は踵がすり減り、穴が開いたとか、水ばかり飲んで腹を下したとか、浮浪児と間違われて警官に追われたとか、果物がなっているのを取って食べようとしたら、樹から落ちそうになったとか、風呂に入っていないので川で水浴びをしたら、風邪をひいたとか、髪の毛がぼさぼさに伸びたので切ったら、滅茶苦茶になったとか、服を洗ったら干す場所がなくて大変だったとか、色々とエピソードもできるだろう。 シーンを丸ごと書きだしたりするのではなく、単なるあらすじのようなものでいいので、脳内で映像化しやすいエピソードがあると、より鮮明になる。 朝、昼、夜と、表情を変える町そのものの描写や、そこに暮らす人々の様子などもあると良いだろう。物凄く長く執筆するのではなく、合間の一行、二行程度のものでも、あるとないとでは、雰囲気、物語の奥行きの広さがぐんと広がる。平面、二次元的な構図から、三次元的な構図になるくらいグレードアップできる。設定を作り上げるのは、第一段階、設定を練り上げるのが第二段階といったとこころだろうか。 季節の表現をもっと豊かにしてみるのもいい。色々と手段が存在している。 うまく使って、さらなる作品の鮮明さをあげることにより、完成度を高めることは可能だろう。 |
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No.7 白星奏夜 評価:0点 ■2013-01-02 14:01 ID:2LrfsJowab. | |||||
帯刀穿 様 ご感想、感謝致します。はじめまして、ですよね。お名前は、たてわき……とお読みしてよろしのでしょうか? お気が向かれましたら、教えて下さいね〜。 プラス要素、書き出して頂いてありがとうございます。あっ、ここが良く映ったのだなあ、と分かってとても参考になりました。マイナス要素は……はい、頑張らせて頂きます(汗 テクニックの部分、何かお気づきのところ、気になるところがあれば是非、指摘して下さい。直せるかは私の努力ですが、無視するということはないと思います。 最後の一文、本当に励みになりました。ありがとうございます。良いお年を、と祈りつつ、この返信はここで失礼させて頂きます。ではでは〜!! |
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No.6 帯刀穿 評価:30点 ■2013-01-02 13:17 ID:DJYECbbelKA | |||||
前もって説明しておきたい。 これは個人的な感想に過ぎず、絶対ではない。 また、意見を聞くか、流すかは本人の自由だ。 世界観がほぼ統一されているのはプラス要素。 登場人物たちがキャラ立ちしているのもプラス要素。 シリウスの過去が小出しにされているのもプラス要素。 マイナス要素は、他の読者から指摘を受けているため、特に言及しない。 基本的な描写力不足や読みづらい表現などがたまにあった。そのあたりは基礎能力を増大させる必要性を感じる。しかし、それはテクニックの要素であって、物語そのものの指摘ではない。 技術的な意見を求めるのなら、再度このあと、レス内で、意見してほしい。そうでないのなら、自得あるのみ。 今後の活躍に期待する。 |
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No.5 白星奏夜 評価:0点 ■2012-12-26 10:07 ID:wf5UhWTu2a. | |||||
お様 お久しぶり、です。ご感想、感謝します。作中のキャラではありませんが、案外自分も褒め殺しに弱いことに気付きました。温かいお言葉、本当にありがとうございます。 にたにた、して頂けたようで嬉しく思います、じれったい、早送りしたいけれど、そのなかなか進まない様子も微笑ましいですよね〜。自画自賛ではないですが。 失った恋を貫くのか、新たな恋を選ぶのか、悩みどころですね。どちらが物語上美しい、か。う〜ん、構成次第でどちらも、という両手に花という答えは駄目でしょうか(笑 失った恋を貫くのが、必ずしもシリアスで、悲劇的な美しさだとは限らないですし、新たな恋を選んでも、それが常に前を向ける明るいものでもないですよね。あれ、自分でも何を言っているのかよく分からなくなってきました。 読んでいて、ほっとする。少し狙いに行っている? だけにありがたいコメントでした。テーマにしていたわけではないですが、それぞれの善意を書く内に出てくる人がみんな良い人に化けていました。 読んで頂き、本当にありがとうございました。また、近い内にお会いできることを楽しみにしつつ、今回は失礼させて頂きます。ではでは〜っ!! |
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No.4 お 評価:30点 ■2012-12-26 02:39 ID:.kbB.DhU4/c | |||||
どうもです。 白星さんの、いよいよ復活ですね。白星さんのいないFT板なんて、FT板じゃない!くらいの勢いで復活を待ち望んでいました。ちょっと、大げさですが。 さて。 楽しく拝読させていただきました。にやにやというか、にたにたしながら。とっととくっついちまえよ! じれってーなー、もお。とか。なんかね、ふたりとも可愛らしいですね。 テーマとしては、よくあるのですが、僕はこの場合、一途に失った恋を貫くのか、新たな恋を選ぶのか、物語上どちらがより美しいのか、迷ってしまいます。美しさという意味でね。 出てくる人が見んないい人で、読んでいてほっとするお話でした。 ありがとうございました。 |
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No.3 白星奏夜 評価:0点 ■2012-12-25 01:09 ID:wf5UhWTu2a. | |||||
朝陽遥(HAL)様 御感想、感謝致します。町のモデルは、一応マチュピチュのような感じを思い浮かべていました。舞台は好きなのですが、行くのは大変そうです(汗 読後の感じが良くなるように、少し狙いにいっている感が露骨かなあといつも冷や汗ものですが、気に入って頂けたら、ほんとに書いた意味があるように感じます。 相手が気になっているのに、何かもじもじしている感じが自分的にはかなり燃え上がるので、欲望のままに書いてしまいました。可愛い、というお言葉、本当に嬉しく思います。ニヤニヤして頂けたなら、幸いです。 両親については、私の説明不足でした。私の頭の中では、両親は存命で、シリウスがフレアの死の衝撃から書き置きのみで、立ち去る。というイメージでした。ぼかすように書いてしまったので、伝わり難かったですね。ごめんなさい。 大事な場面での溜め、仰る通りです。またまた急いで書いてしまいました。丁寧に描くのがどうも苦手なようなので、反省しつつまた取り組んでいきたいところです。ご指摘、ありがとうございますっ。 いえいえ〜貴重なコメント、ありがとうございました。久々に投稿したので、少しドキドキしていて……。 また、次に向けて頑張っていきたいと思います。ではでは、今回はこの辺で失礼致します〜!! 楠山歳幸様 お久しぶりです。ご感想、感謝致します。歴史でいや〜な、黒い人間性も見ました。自分の仕事上のことでも、です。でも、人は好きです。そういう嫌で黒い人間性で、温かいものがさも無いかのように扱われるのが悔しいのかもしれません。ひょっとしたら、書きながら私自身が自分の望む姿を表現しているのかもしれないですね。なんか、ちょっと恥かしい気もします(汗 気持ちが分かっているのに、言い出せない。もどかしいですよね。案外、実体験だったりします。すみません。ラストはちょっと格好付けだったのですが、お褒め頂き、ああ、つけて良かったなあと一人感動しています。 大事なシーンで性急になる、まだまだですね。精進していきたいと、結構本気で思っています。ご指摘、ありがとうございます。 シリウス……有名な星ですし、多様な作品に用いられるので、どうかなあとは思ったのですが、シリウスと決めたら他がしっくり来なかったので強行突破しました。逆にしっくりこなかったようで、すみません。 ツンデレとかギャグだとか、これで本当に萌えたり、笑えるのだろうか、と自分自身も探りながらですので、気に入ったものがあれば本当に嬉しいです。 今回も拙い作品にコメント頂き、ありがとうございましたっ。またお会いできる機会を楽しみにしつつ、ではでは〜っ!! |
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No.2 楠山歳幸 評価:30点 ■2012-12-23 23:08 ID:3.rK8dssdKA | |||||
読ませていただきました。 アリエスの時もですが、今作も、作者様の人への愛情みたいなものを感じました。歴史を研究なさっていたということは人間の暗部とも向き合っていたと思うので、エンタメ性はやや少なくとも優しく読み手に何かを残すような作品を書かれる作者様の包容力というか、お人柄みたいなものに魅かれました。 特に良かったのはシリウスとフレアの、二人の気持ちは同じなのに男のほうが一言踏み出せないという所でした。年ごろをうまく表現していると思いました。その後の事件も悲劇的でした。ラストの一文も星(天)と地上をうまく表現しているようで素敵です。 少し気になったのは、僕も、主人公にあれだけのことがあったのでヒロインを受け入れる所が失速というか性急だったかなあ、と思いました(自分を棚に上げてすみません)。 あと、どうでもいいことではありますが、やはり精神世界ではシリウスの名前は有名で特別なものなので、個人的ではありますがどこか壮大な(中二な?)ファンタジーを連想してしまって作品の雰囲気と逆行してしまいました。 ツンデレ、可愛かったです。そして精力をつける書籍、笑わせていただきました。 失礼しました。 |
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No.1 朝陽遥(HAL) 評価:30点 ■2012-12-23 17:36 ID:kkM0CUm7SLY | |||||
拝読しました。 白星さまの持ち味のひとつだと思うのですが、読み終わって気持ちがほっこりするような、優しいお話でした。 まず冒頭の光景がいいなと思います。下から見上げれば星に手の届きそうな頂上の町という、ロマンチックな風景。夜にふもとから見上げたら、きれいだろうなあ。けれどそこに住んでいる人々からしてみれば、地上と大差ない、あたりまえの町で……という描写の流れが大変好みでした。 女の子が可愛い小説というのは、よいものだなあと思います。恋する女の子、いい……。ツンデレにも色々ありますが、このツンデレはニヤニヤせずにはいられない。可愛いといえば、主人公も可愛らしいですね。女の子に食べるところを見られるのが気恥ずかしいだとか、そういう細部の描写が微笑ましくてよかったです。 すこし気になったところが、二点ほど。 ひとつは主人公のご両親のエピソードが、比較的さらりと流されてしまったこと。もっとも、あくまでストーリーの中ではフレアさんとのエピソードのほうが中心になっているので、あまりここに力点を置きすぎても、ストーリーの軸がぶれてしまうのかなとも思うのですが。 ただ、天涯孤独の身になったということで、主人公にとってはこれもかなり重大な事件のはずですから、きっとあとから詳細というか、当時の心情の描写などがもっと出てくるだろうな……と、こちらで勝手に期待してしまったような感がありました。 ふたつめは、クライマックスのシーンのことで。 過去にとらわれていた主人公がようやく前を向ける大事な場面で、スピカはすごく可愛いし、とてもいいシーンでした。ただ、個人的な感覚になってしまいますが、主人公がスピカの気持ちを受け入れる気になったところ、ここにもう少し、溜めが欲しかったというか、ちょっとあっさりと感じられてしまったような気がしました。 > 繰り返すのか。また、ここで。そして、また逃げ出すのか。今度はこの町から。 ここが転換点だったと思うのですが、このときの主人公の気持ちの揺れ、振れ幅といいますか、葛藤や気付きは、もうちょっと行数を割いて、じっくり描写してあったら、なおよかったかも……と思いました。 ……と、つい色々と余計な口出しをしてしまいましたが、ともあれ、大変楽しく読ませていただきました。ごちそうさまでした! 自らの腕不足を棚に上げての好き勝手な感想、どうかご容赦くださいますよう。また次回作も楽しみにしております。 |
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総レス数 15 合計 210点 |
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