アニエスとお姉ちゃんの水晶球 |
岬の先端に、灯台を構えた石造りの家があった。海の青と、空の蒼の間に浮かんでいるようにも見える家。その家の、白い灯台の周りを箒に乗った少女が旋回している。黒を基調とした服を着ていて、ウェーブのかかった金髪をしている。年は、十二、といったところだろうか。 「もうすぐ、お姉ちゃんが帰ってくる時間だね、ロン君」 少女はそう言って、自分に付き添うように飛んでいるツバメに顔を向けた。 「別に、飛んで待ってなくても君のお姉ちゃんは帰ってくるよ、アニエス」 大人びた少年の声が、ツバメから発せられる。それを聞いた、アニエスの頬が膨れた。 「一つ年上だからって、偉そうに」 「十二歳の君は、半人前。十三歳の僕は、一人前だからね」 アニエスはふん、と鼻を鳴らす。魔法使いの家では、十三歳になると一人前の魔法使いとして扱う。勿論、まだまだ未熟なのでそれから十八歳までは見習いとして修行し、二十歳でようやく独り立ちが許される。 「ちょっと前まで、同じ半人前だったくせに」 一ヶ月前に十三歳になってから、従兄妹のロンは急に先輩風を吹かし始めていた。アニエスにとっては面白くない。不機嫌そうに横を向いたアニエスは、そこで目当ての人影を見つけて口元を緩ませる。岬の先端に向かって伸びる小道を、一人の女性が登ってきていた。 「お姉ちゃんだ」 横を飛ぶロンを軽く無視して、アニエスは降下していく。アニエスの姉、エレナは近付いてくる箒を見つけて朗らかに手を振った。二十二歳のエレナはすでに独り立ちしていて、アニエス達の住む半島の付け根に位置するヨールという町に住んでいる。時折、こちらでしか採れない薬草や、一人では調合できない薬品を取りに実家に戻ってくるのだ。 「おかえり、お姉ちゃん」 エレナの隣に、ぴたりと着地してアニエスは微笑んだ。続けて、ロンも降りてきて、ツバメの形から黒髪の少年に姿を戻す。 「二人共、ただいま。アニエス、あんた、また箒に乗るのが上手くなったね」 嬉しそうにニヤけるアニエスを、ロンは柔らかく笑って見つめる。文句を言いながらも、アニエスがお姉ちゃんに上達を見せたくて、箒に乗って出迎えていることくらいは心得ている。 「でも、いっつもすごい荷物だね」 アニエスは、エレナが抱えるリュックサックや、容量限界に拡張した手提げバッグを見て呟いた。山にでも登りにいくのか、と見た目には思える。 「調合に必要な原料とか、器具はやっぱり自分のに限るからね。これでも、減らした方よ」 エレナはふぅと一息吐いた。 「この荷物のおかげで機関車に乗って来るしかないしね、あれが幾らかかるか知ってる? 三等席でも酷いぼったくりよ」 ここ三十年ほどで、急激に発達した蒸気機関車は今や移動に欠かせないものになっている。初期の乗車料金に比べれば格段に安くはなったものの、気楽に乗れる代物でもなかった。愚痴を言うエレナをなだめながら、アニエスとロンは荷物の一部を受け取った。三人は、並んで灯台の家に向かっていく。アニエスは、エレナの横顔をちら、と見上げた。今日は何を話そう、いろいろと伝えたいことや、教えてもらいたいことがある。アニエスにとって、エレナは一番身近な魔法の先生であり、楽しい話し相手であり、憧れ、だった。 「ああ、お転婆娘が帰ってきたよ」 菜園の世話をしていた母親が三人に気付いて、優しく笑った。昔日のエレナは、アニエスよりも随分と無茶をして皆を困らせた。特に、箒で何度も脱走した事件はアニエスもよく覚えている。それでも、こんなに立派な魔法使いになるのだから、お姉ちゃんはかっこいい。アニエスはそう思った。 夕食の時間は、久々に賑やかな雰囲気に包まれた。アニエスとエレナ、二人の両親、祖母と従兄妹のロン、アニエスにとっての伯父さんで、ロンのお父さんがそれぞれの席に座っている。 「いやあ、エレナちゃんは帰ってくる度に綺麗になるね」 「伯父さんもそういうところは、そのままですね。天国の伯母さんに叱られますよ」 つん、とエレナに返され伯父さんは豪快に笑う。アニエスは、自分の器に盛ってあるアプリコット家特製のサンドイッチをかじった。お母さんが焼いたパン、お婆ちゃんが作ったソース、お姉ちゃんが味付けした焼いたヒレ肉、そして自分とロン君が切った野菜が層になっている。アニエスは数ある食べ物の中で、みんなで作るこのサンドイッチが一番好きだった。 「エレナちゃんは最近冷たいからな〜、伯父さんはアニエスちゃんに期待するとしよう」 「ええっ、あたし?」 アニエスは、急に話しを振られて慌てる。 「父さん!」 ロンが目に余ると父親を制すると、笑い声が大きくなった。 「ヒルトンの家が、魔法使い稼業を止めて、ロンディアに引っ越すそうだ」 夕食の後、お茶を飲みながらゆっくりとみんなで話す。これも、アプリコット家のいつもの光景だった。賑やかな夕食の時とは、少し空気が違い、落ち着いたこの場では大切なことが話し合われることが多かった。陽気な伯父さんも、ここでは静かになる。 「まだまだ現役だろうに、これでここらで残るのはうちと、マグノリアの家だけだね」 アニエスの母親が溜め息を吐く。 「時代さね」 夢見心地のお婆ちゃんが、そこだけはっきりと口にした。アニエスとロンも、難しい顔で顔を見合わせる。 産業革命、と言われる蒸気機関の開発と、機械の発明から五十年。アニエスたちの住む島国エングラント王国を含む、大陸の国々の生活は激変した。昔は、魔法使いにしかできなかった多くのことが、機械さえあれば誰にでも簡単にできるようになった。大量に、素早く、様々なものを造れる機械と、魔法使いの能力では勝負にならない。機械の発達に反比例して、魔法の力は急激に減衰した。多くの力が失われ、残ったのは薬品を調合する力や、水晶球で傷の痛みや、身体の障害を緩和させる力などヒーリングに関するものだった。今や世間では魔法使いといえば、地元に古くからいる医者か、薬師程度の認識でしかない。箒で飛ぶ力や、ロンのように変身できる力は数少ない一部の魔法使いだけにしか発現しない。変身できたとしても、ロンのように小動物に変わるのが精一杯だ。 「この先、どうなることやら」 伯父さんが発した言葉は、全員が考えていることだ。魔法が消えるのではないか、それが昨今の魔法使いの一番の関心事だった。 「お姉ちゃんは、心配じゃない?」 エレナの寝室に勝手に潜り込んで、アニエスは呟く。毛布を身体に巻いて、ベッドの上のエレナを見上げた。 「心配しても、力が戻るわけじゃないし」 ごろりとアニエスの方に身体を向けて、エレナは欠伸をした。 「お姉ちゃんって、先のこと気にしないもんね」 「そうよ、私は今を生きる女なの」 軽い口調で言うエレナがおかしくて、アニエスは鈴を転がすように笑った。エレナはにやり、と笑った後で手を伸ばして、アニエスの頭を撫でた。 「何? 急に」 嬉しさを隠して、アニエスは身をよじる。 「何か、あんたが飛んでいるのを見ていると、魔法も何とかなりそうな気がするのよね」 「うっ、そんなこと言われても」 「だよねぇ、まだ半人前だもん」 褒めているのか、貶しているのか分からない。アニエスは、頬を膨らませた。エレナはその様子を見て、はやく年をとりな、と無理な注文を付けて笑う。姉妹の、おしゃべりな夜が更けていった。 「何ていう顔してるのさ、アニエス」 二日間泊まって帰っていったエレナを見送った後、ロンは笑いを押し殺して言った。 「話し過ぎた」 アニエスの顔から血の気が引き、目の下に青黒いものができている。魔法でも何でもなく、ただの寝不足からくる後遺症だった。 「仲が良すぎるのも問題だね」 「いや、後半は戦いだったけど」 苦笑するロンに言い返す気力も湧かない。お姉ちゃんとの喧嘩は、いつもこうだ。互いに怒鳴って掴み合うようなことは、しない。延々と相手を説き伏せ、自分の言い分に屈服させるまで話し合う。そして、いつも互いに平行線のまま力尽きて眠るのだった。 「菜園の世話は僕がやっておくから、少し寝た方が良いよ」 ロンは、いつものことだ、と付け加える。 「うん、ごめん、そうする」 アニエスは重い瞼をこすって、自分の部屋に戻った。 太陽が中天に昇るまで、アニエスは眠っていた。眩しい陽光に顔を照らされて、ようやくアニエスは目を覚ます。着替えと、軽い洗顔を済ませた後で、エレナの部屋に入った。お姉ちゃんが帰った後の部屋の整頓は、何故かアニエスに任されている。掛け布団をめくったところで、アニエスは透明な水晶球がそこに残っていることに気付いた。 「お姉ちゃんのだ」 片手に載せられるほどの大きさの水晶球を抱えて、アニエスは階下に降りた。こんな大事なものを忘れていくなんて。 「やあ、アニエス。寝れたかい?」 まだ菜園にいたロンが、外に出てきたアニエスを見つけて声をかける。 「ロン君、これ、お姉ちゃんが忘れていっちゃった」 アニエスは、ロンに水晶球を見せた。 「叔母さんか、お婆ちゃんに言って、後で送り届けてもらうしかないね」 「だめ、道具は自分のじゃないとってお姉ちゃん言ってた。きっと、これがないとすぐに困っちゃうよ」 ロンの提案に、アニエスは強く首を横に振った。アニエスの手には、すでに愛用の箒が握られている。 「まさか、君」 ロンが止める間もなく、アニエスは水晶球を袋に入れて、服の中にしまい込む。 「届けにいこう」 アニエスは、箒にまたがって宙に浮いた。 「飛んでいっても、二日、三日はかかるよ! だいたい、そんなに遠出したことがないだろ、アニエス」 「大丈夫、危ないところになんか行かないもん。届けにいくだけ、だよ」 不思議とアニエスは、胸が鳴っていることに気付いた。お姉ちゃんだって、自分の年くらいには箒で飛び回っていたんだし。脱走もしているし。好奇心が、心の中で大きくなる。 「一言、残してから」 何とか止めようとするロンの手が届かない高さまで、アニエスは飛翔した。 「残したら、止められるもん」 べっと舌を出して、アニエスは灯台まで昇っていく。せっかくの機会を逃したくはなかった。ロンを置いたまま、灯台を旋回して、機関車が走る方向に箒を向けた。心地良い風が、金髪を撫でる。空は、快晴。遮るもののない蒼い世界が、アニエスを包む。眼下の、街並みや緑がゆっくりと流れていった。 「飛ぶのって気持ちいい」 アニエスが陽気に足を揺らしていると、後ろからツバメが追いついてきた。 「来ると思ってたよ、ありがとう、ロン君」 「君はずるくて、頑固で、考えなしで、半人前だよ」 一通りの文句を聞き終えて、そうだね、とアニエスは笑う。いつもなら口答えの一つも返すが、今は楽しくてそんな気分ではなかった。一人と、一匹の小さな影が、岬から遠ざかり、しばらくして見えなくなった。 半島の沿岸を、沿うようにして伸びている鉄道を目印にして、アニエスたちは飛んでいた。 「すごい、綺麗」 アニエスの言葉に、実は自分もそんなに遠出したことがないロンも頷く。どこまでも広がる海が、青一色ではない不思議な色の混ざり合いということに気付く。足の下の、人の家が精巧な模型のように小さく見えた。陽光にキラキラ輝いて、海も、建物も宝石のように見える。 「これは写真には、残せないね」 「あれは白黒だからね」 景色を切り取る最新の機械でも、この色彩は残すことができない。二人で、言葉を交わすこと少なく、美しい景観に目を奪われた。しばらく、そうやって飛んでいると、アニエスは前方に浮かんでいるものに気付いた。 「何だろう、あれ」 ゆっくりと上昇しているそれは、蒼い空の中に一つだけ浮かんだ赤色だった。 「風船、だよ」 流石に、鳥状態のロンは目が良い。時を置かず、アニエスは風船を捕まえることができた。ロンが先に気を回して、地上を観察していた。 「下に、泣いている女の子がいる」 「しょうがないかぁ」 アニエスは、ロン君の目の良さは便利だなと思いながら降下していく。冷たい空気が、頬に当たる。ぼやけていた地上の緑が、一つ一つの木々や、茂みに輪郭を戻していった。小さい女の子を囲んで、困ったように空を見上げていた五、六人の子供たちがアニエスに気付いた。年は、みな六歳くらいで、女の子だけが特に幼かった。 「泣かないで、とってきたよ」 アニエスは呼びかけながらくるくると旋回して、子供たちの側に着地した。歓声があがる。アニエスは、泣いていた女の子の前で屈んで、風船を渡した。 「もうなくしちゃ、駄目だよ」 泣き止んだ女の子は、こくりと頷いて、輝きに満ちた瞳でアニエスを見上げる。 「おねえちゃんは、まじょさんなの?」 「そっ、そうだね」 アニエスは、照れたように髪をくるくると指で巻いた。これ以上、驚かすとまずいと思ったのか、ロンは上空で待機している。 「すっげえ、空飛べるんだ」 「ねえ、他に何かできるの? 何か出せる? 火、出せる?」 女の子を含め、子供たちは一斉にアニエスを包囲して質問責めにする。アニエスは、子供たちの反応に戸惑いながらも、悪い気はしなかった。 「サービスし過ぎだよ」 上空に戻ってきたアニエスの、上機嫌な顔を見てロンが言った。 「だって、乗せてあげないと許してくれないんだもん」 結局、一人ずつ箒に乗せて飛んであげたため、時間がかかってしまった。それでも、子供たちが純粋に自分を慕ってくれるのは嬉しいものだった。魔法使いで良かった、とアニエスはにこりと笑む。 「日が暮れる前に、休めるところを探そう」 ロンに言われて始めて、アニエスは夜を過ごすことに思いが至った。 「考えてなかったでしょ」 「うっ」 図星を突かれ、アニエスは困ったように頬を掻いた。 「どうしよう、ロン君」 「全く。僕が、公園でも何でも見つけとくから」 よろしく、と言ってアニエスは別のことも思いついた。 「ロン君、ご飯はどうしよう」 「君が飛び出す前に、少しお金を持ってきたからパンでも買えば何とかなるよ」 浮かれていたアニエスは、少し恥ずかしくなった。お姉ちゃんのように、箒で勝手なことがしたくて飛び出したものの、結局、ロンに全て任せてしまっている。だから、半人前なのかな、とアニエスは俯いた。 「君の無茶は想定内だよ、アニエス」 アニエスを気にして、ロンが付け足す。気遣いが心に染みてアニエスは、ありがとう、と返した。慣れないお礼に、ロンは羽をばたつかせる。あ、照れた。アニエスは、おもしろいものを発見した顔で微笑んだ。 「暗くなってきたね」 「そろそろ降りようか」 オレンジ色に染まった空を眺めて、二人は言葉を交わす。町にぽつり、ぽつりと明かりが灯っていた。昼間とは違い、厚い雲が頭の上に伸びてきていた。すぐに、辺りが黒い雲に覆われていく。 「嫌な、雲だ」 ロンが呟く。アニエスも嫌な感じがして、二人揃って降下を始めた。ちょうど、そのタイミングで大粒の雨が降り出した。 「アニエス」 あっという間に、天候が崩れる。呼びかけるロンの声も、あまり聞こえないほど激しく水滴に叩かれた。アニエスは、急な変化に慌てながら、何とか徐々に高度を下げていった。 「うっ、このっ」 しかし、地上に近付くほどに空気が乱れ、強風に煽られた。じりじりと、海の方に流されてしまう。さっきまでは、あんなに静かだったのに。 「ロン君」 アニエスは、辛そうに並走しているロンを見て、上着を開いた。 「ごめん」 ロンはそう言って、アニエスの懐に隠れる。その瞬間、風が箒を押し上げ、開いた上着から水晶球の入った袋が零れ落ちた。声をあげる間に、水晶球は一直線に地面へ落下していく。アニエスは何とか追いすがろうと箒を向けたものの、風に邪魔されて思うように進めなかった。 「ロン君、見える?」 懐から頭だけを覗かせていたロンは、首を横に振る。遠くのものを正確に見ることができるロンも、暗くなってしまえば視力が下がる。お姉ちゃんの大事な、水晶球なのに。アニエスは、泣きそうな顔で落ちていった方向に視線を向けた。 大きな木の影で、二人は雨宿りしていた。風と、冷たい雨と格闘したアニエスは、疲れたように座り込んでいる。人間の姿に戻ったロンは隣に座りながら、落ち込むアニエスを見つめた。雨に打たれながら、なんとか水晶球は見つけ出したものの、中身は散々な有り様になっていた。 全部、自分のせいだ。アニエスは、泣かないように堪えるので精一杯だった。勝手に飛び出して、ロン君に迷惑をかけて、最後はお姉ちゃんの大事なものを壊してしまった。空が飛べるだけで、調子にのってしまった自分がたまらなく情けない。 濡れた服が肌に張り付いて、アニエスは不快感を覚える。身体が冷えて、寒い。それに、お腹も限界まで減っていた。降りたところが悪かったのか、民家も何もないところだった。 これでは、食べ物や宿を探すこともできない。辺りはすっかり暗くなり、雨は相変わらず激しく降り注いでいた。 岬の家がどれだけ温かったか、アニエスは冷たくなった手を握りながら思い返す。当たり前のように出てくるご飯、当たり前のように身を沈めるベッドが当たり前ではないことがようやく分かる。きっと今頃、二人がいないことに気付いて、家では大変なことになっているに違いない。 ロン君の視線を感じる。アニエスは、何か話さなくちゃと思いながら、こくんこくん、と頭が下がるのを感じた。ちょっと疲れたのかな、と心の中で呟いた後から、アニエスの意識は途絶えた。 朝の淡い光の中を、アニエスとロンは並んで飛んでいた。明け方には、雨は降り止んだようで、独特の湿っぽい空気が流れていた。清々しいはずなのに、形を成していない水晶球の感触を感じる度にアニエスは暗い気持ちになる。起きてから、ロンともあまり話していなかった。 「アニエス、大きな町がある」 ロンに告げられて、アニエスは前方に白い建物が密集した港町があるのを見つけた。美しい町並みや、珍しい蒸気船の並ぶ様子に喜ぶ気分にもならない。 「少し休もう、あの町なら食べるものも買えるよ」 食べ物、と聞いてアニエスは顔を上げる。 「お腹、減ってるだろうし」 アニエスは頷きながら、食べ物の準備もしてこなかった無鉄砲さを自分で呪った。あたしはこんなに馬鹿なのに、どうしてロン君はこんなに気が回るのだろう。 二人は、ゆっくりと町の方へ降りていった。 早朝にも関わらず、町は活気に満ちていた。アニエスは、人の多さに驚いてしまう。岬の小さな町とは比べられないほどに、人が行き交い、町のあちこちに機械が溢れていた。町の中心の市場に向いながら、アニエスはこの町に違和感を覚えた。雨に濡れて、よれよれになった服を着ている二人を見ても誰も声をかけない。むしろ、疑うような目、蔑むような目で見てくる。見てくるだけなら、まだ良いかもしれない。ぶつかりそうになる直前まで、二人に気付かない人が何人もいた。二人が始めから、そこにいないような態度だった。 「冷たい」 アニエスは、残念そうに呟く。岬の町では、知らない人でも挨拶くらいはするのに。町の明るさ、便利さが霞むくらい、この町の人は冷たい。アニエスの目の前を、自動車が鉄の光沢を放ちながら通り過ぎていく。そうだ、この町の人は、機械に似ている。 町外れの広場でロンが買ってくれたパンと、焼き菓子のようなものを二人は食べた。甘い香りが口の中で広がって、アニエスは自分がどれだけ空腹だったのかを思い知った。全然、量が足りなかったけれど文句を言うわけにもいかない。 「ああ、それとこれを」 ロンは、懐から小さい袋を取り出した。アニエスは、それを受け取って中身を出す。 「これって」 水晶球だった。不純物だらけで、整形もいまいち、大きさもエレナの水晶球よりも一回り小さかった。アニエスでも分かる、安物だった。食事の前に公園のトイレに行った時に、帰りが遅かったのはこのせいか、とアニエスは気付く。 「壊れたものは仕方ないよ、それは安物で代わりにもならないけどさ。でも、アニエスの心は伝わるでしょ?」 謝る時の、贈り物までロンは考えている。その優しさに、アニエスは泣きそうになる。けれど、同時に何もかも面倒を見てくれて、先を見通しているロンが急に羨ましくなった。 「でも」 心の中のアニエスは、必死に止めているのに口から言葉が漏れる。 「でも、お姉ちゃんの大事なものはもう戻らないもん! こんなものでごまかしたって、お姉ちゃんの水晶はっ」 嫌だ。これは、自分じゃない。ロン君を傷付けるだけだ。そうは分かっていても、湧き上がった黒い思いが抑えられない。 「何でも分かってるみたいに、あたしに言うの止めてよ! ちょっと年が上だからって先輩風吹かしてさっ。ロン君はあたしのこと、全然分かってないよ!」 ロンの瞳が、アニエスを見つめる。アニエスが見たこともない、哀しい、冷めた目だった。 「じゃあ、好きにすればいいさ」 一言、言い残して、ロンの姿は空中に消えた。アニエスは、ぎゅっとロンのくれた水晶球を両手で包んで胸に当てる。同じだ。機械に似ていると思った、この町の人と。あたしは。 「分かってないのは、あたしの方だ」 アニエスの瞳から、熱いものが溢れた。 町から離れ、一人でアニエスは飛び続けた。今更、引き返すわけにもいかない。素晴らしい景観も、目にあまり入らなかった。楽しく飛べるのも、景色が良いと感じられるのも隣にいた人物のおかげだと、また一つ気付かせられる。 「全然だめだ……」 そう思った瞬間、急に箒が降下し始めた。アニエスの操作や、意思を無視して箒はどんどん高度を下げていく。 「どうして」 長時間飛び続けたことのないアニエスの、魔法力は限界に達していた。燃料が切れれば、当然、飛び続けることはできない。なんとか安全に着地したものの、全く知らない土地に放り出されてしまった。 「最悪」 石を蹴って鬱憤を晴らしても、何も変わらない。方角は分かっていたので、アニエスはとぼとぼと箒を抱えて歩き出した。 どれだけ歩いたのだろう、もう日はだいぶ傾いていた。小さな町を二つ、三つは越えたけれど、お姉ちゃんのところまではどれだけかかるかアニエスは知らなかった。箒なら、すぐに飛んでいけるのに。棒のようになった足をさすりながら、アニエスはいっそ言うことを聞かない箒をへし折りたい気分に駆られた。そんなアニエスの側を、一台の自動車が通り過ぎていく。 「危ないなぁ」 ぎりぎりで避けたアニエスが、自動車を睨むと少し行ったところで自動車は止まった。首を捻るアニエスは、自動車に追い付く。中には、十八、九歳ほどの男女が四人、乗っていた。 「ねえ、君ってもしかして、魔女だったりする?」 後部座席にいた男に、アニエスは視線を向ける。着ている服や、身に付けているアクセサリーなどから良い暮らしをしていることが分かる。アニエスが、一応頷くと、男は馬鹿にしたように口笛を吹いて、驚いてみせた。 「やっぱりね、箒があるってことは空とか飛べちゃうわけ?」 アニエスは、黙って頷いた。 「マジ、ちょっと飛んでみせてよ」 「今は、飛べません」 アニエスは、事実を告げた。男は、なんだぁと座席に身を沈める。 「ちょっとぉ、ジェイ、からかうのやめなさいよ。ほんとは飛べないかもしれないでしょ」 耳障りな、間延びした声で助手席から、女が顔を覗かせた。嫌な、香水の臭いがアニエスの鼻を突く。男よりもっと馬鹿にした目で、女はアニエスを見た。 「今どき、魔法使いなんてねぇ」 みすぼらしい、と言わんばかりに女はアニエスの服装を眺める。 「珍しいですか」 硬い言葉で、アニエスは返す。大人の女の人でもお姉ちゃんとは全然、違う。 「そうね、私たちの町では見たことがないわ。まだ、残ってたのね」 刺のある答え方に、アニエスは腹を立てる。大変な時にこんなくだらない人に付き合う時間は、ない。 「アリッサ、そう突っかかるなよ。空飛べんだぜ、凄いじゃん、魔法使い」 ジェイと呼ばれた男が、後ろから笑って言う。女は、ふん、と苦笑した。 「流行らないのよね、魔法なんて。大体、空が飛べるから何? 今じゃ飛行船か、気球に乗れば誰だって空くらい飛べるわ」 アニエスは、箒を握る手に力を込める。うるさい、お前に魔法の何が分かる。 「まっまあ、落ち着けって。君、乗っていくかい? こんなところで一人なんて、困ってるんだろう?」 男は、悪くなった空気を繕うように、アニエスに優しく提案してきた。けれど、アニエスは静かに首を振って、拒絶した。 「そうか、まあ頑張んな」 男が手を振ると、ブルンと車が揺れ、排気の黒い煙が立ち上った。立ち去る刹那に、助手席の女と目が合う。冷たい瞳の色、だった。 暗くなっても、アニエスは歩いていた。とにかく、前に進むしかないのだから。ちょうど、それほど大きくない町に入っていて、歩くのは楽だった。町の中は、道も舗装されている。 お姉ちゃんに会いたい。自動車の女に会ってから、アニエスはずっとそう考えていた。ひどく怒られるだろうけど、それでも早く会いたかった。あの冷たい目を、忘れたかった。 普通の人たちには、魔法はそんな目で見るものなのだろうか。アニエスは、さらに暗くなった気分で足を引きずる。 「そこの君」 呼びかけられて、アニエスは振り返る。紺の制服と、制帽を被った中年のおじさんが近付いてきた。警官だと、すぐに分かった。 「小さい娘が、こんな時間に出歩いちゃいかん」 「あの」 アニエスは、事情を説明しようと思った。もしかしたら、助けてくれるかもしれない。 「どこの家の娘だね、付いてきなさい」 強く腕を握られて、アニエスは呻く。 「あたし、お姉ちゃんのところに」 「いいから、付いてきなさい。全く、最近の娘ときたら」 聞く気がない、アニエスはすぐにそう感じた。このおじさんは、心配しているわけでもなく、ただ、仕事を果たそうとしているだけだ。アニエスは、身をよじって手を振りほどく。 「お願い」 箒にまたがり、必死に願った。ずっと飛ばなかったのが功を奏したのか、箒は急浮上した。慌てる警官を尻目に、アニエスはすぐにその場から立ち去った。 町一つ分ほどを飛んだところで、箒はまた高度を下げ始めた。追いかけてくることもないだろうと、アニエスは大人しく地上に降りた。 大きな木の影にまた座り込んで、アニエスは静かな星空を見上げた。魔法が、力を失いかかっている。その理由が、よく分かるような気がした。機械を手に入れた代わりに、人は大事なものをなくしたのかもしれない。二つの水晶球を指でなぞる。目を閉じて、アニエスは色々な想いが胸に溢れるのを感じた。魔法のこと、自分の未熟さ、家族のこと、ロンのこと、そしてお姉ちゃんのこと。何故だか、頬を水滴が伝う。堪らなく悲しくなって、アニエスは冷たい夜の闇に呟いた。 「一人は、寂しいね」 とん。 その肩に、確かな温もりが伝わる。アニエスは、目を閉じたまま頭を横に傾けた。温かい少年の肩が、アニエスの頭を枕のように支えた。 「おかえり、ロン君」 横から、わりと強い溜め息が聞こえた。 「死ぬほど、探したよ」 「ごめん」 そう言って、アニエスは肩を震わせる。嬉しくて、こんなに涙が出たのはいつ以来だろう。慌てて、顔を隠す。 「ごめん」 アニエスの身体を、そっとロンは引き寄せた。アニエスは泣きながら少し頬を染めて、見えないように微笑んだ。 アニエスの魔法力がまだ戻らないので、二人は小道を並んで歩いた。朝の、空気がアニエスの心を澄ませていく。 「余計だとは思ったけど」 ロンは、アニエスと別れた後のことを教えてくれた。ヨールまで一人で飛んで、エレナにアニエスの無事を伝えに行ったらしい。飛ぶ速さは、ツバメの方が速い。その上で、意地っ張りなアニエスのためにヨールまでは二人で行くことを、エレナに念押しして、迎えに戻った。けれど、まさか魔法力を使い果たして飛べずに歩いているとは思わずに、夜まで探す羽目になったという次第だ。 「ほんと、いろいろありがとう」 アニエスは素直に頭を下げる。ロンは、また照れたように頭を掻いた。 「君の無茶は、想定内だよ」 ヨールまでは、あと町が三つ、四つと聞いて、アニエスはほっとする。徒歩と、箒で距離を稼いでいけば、今日中には着くことができる。 二人で話しながら、坂道に差し掛かったところで、アニエスは待ち焦がれた人影が坂の上にいるのに気付いた。思わず、走り出して、その人のところへ向かう。 「やっぱり、我慢できなかったか」 ロンが後ろで優しく笑うのを見ながら、アニエスはお姉ちゃんに抱きついた。 「こんの、馬鹿妹が」 エレナの拳骨を甘んじて受けながら、アニエスは大きな声で叫んだ。 「ごめんなさい!!」 木漏れ日が、揺れる。厳しい表情のエレナは、それと同じくらい柔らかい笑みを浮かべた。アニエスは、小さな嗚咽を漏らす。 「三日も抜け出すとは、私もしたことがないよ」 「えへへ、勝った」 エレナは、華奢なアニエスの身体を抱いた。あったかい。アニエスは、身体をさらに押し付ける。 「心配したよ」 うん、とアニエスは頷く。アニエスが、一番欲しかった言葉だった。 ヨールのエレナの家で、二人は一日泊まった。飛べなかったアニエスは、ちゃっかりとエレナの箒の後ろに乗せてもらって運ばれた。エレナの家は、岬の家に似た、花に囲まれた素晴らしい石造りの家だった。 到着するなり、岬の家に電話をかけさせられる。交換士の後に、耳鳴りがするほどの母親の怒声が浴びせられた。アニエスは、たっぷりと家族全員に怒られて、電話を置いた。ロンも巻き添えを喰らって、盛大に叱られていた。怒られつつ、こんなに心配してくれる家族のことを想ってアニエスは半泣きになった。 お姉ちゃんの仕事、薬の調合や、傷の治療に来た人へのお世話をしてアニエスと、ロンは一日を過ごした。三人で囲む食事はとても賑やかで、温かくて、アニエスの心と身体を癒した。 「ええ、直るの?」 「この前、習得したばかりだけどね」 夜、エレナの寝室に潜り込んだアニエスは叫んだ。あんな思いをしたのに、壊れた水晶球はお姉ちゃんが最近習得した魔法で八割は修復できるという。 「明日の朝には、形になっているはずよ」 そんなぁと、アニエスは愚痴を言いながら、本当に良かったと笑った。お姉ちゃんの大事なものが、壊れたままでなくて。 「あんたも大変だったね」 アニエスから、道中の話しを聞いていたエレナは身体を起こして言った。途中の大きな町で感じた冷たさや、自動車の女の人のこともアニエスは全て伝えていた。 「ねえ、お姉ちゃん」 「うん?」 「魔法って、やっぱり消えちゃうのかな?」 自分で目にして、アニエスはそう思ってしまう。このまま機械が溢れ、人がどんどん冷たくなれば、その内に魔法は。 「あんたが壊した水晶球」 全然違う話しに振られて、アニエスは変な顔をする。 「あれ、本当は私のものじゃなくて、母さんのものなの」 それは聞いたことがなかった、とアニエスはエレナを見つめる。 「母さんの前は、お婆ちゃんのものだったみたい。その前は、たぶん言わなくても分かるよね?」 ずっと受け継がれてきたもの。アニエスはそれを壊したことに、少し気まずさを感じた。 「お婆ちゃんから母さん、母さんから私。水晶球には想いが重なっているの。魔法って、力の強さじゃなくて、そういうものじゃないかな。だから、あんたが空を飛んでいると安心する。きっとアニエスにも想いは伝わっていくだろうなって思うから」 「みんなで作るアプリコット家特製のサンドイッチと同じ、だね」 アニエスは、漠然とした不安が消えたような気がした。それぞれが想いを込めた具材が、積み重なって素晴らしいものになるように。きっと魔法も。 「魔法は弱くなったわけでも、消えるわけでもない。たぶん、姿を変えているだけ」 アニエスは、こくりと頷く。エレナは微笑んで、はっきりと言った。 「想いが重なるところに、魔法はあるの」 帰りも飛んでいこうとするアニエスに、エレナは呆れながら機関車の代金を渡した。高いから断ろうとしたアニエスに、出世払いで返せとエレナは無理矢理納得させた。 「帰る前に、これを」 エレナは、ほとんど元通りになった水晶球をアニエスに渡す。 「お姉ちゃん」 アニエスが、はっとしてエレナに首を振ると、エレナは陽気に笑った。 「今度は、あんたの番だよ。大事にしな」 アニエスは、何も言うことができなかった。エレナは、私はこれで充分、とロンが買った水晶球を片手で持ち上げる。ロンが、嬉しそうにはにかんだ。 「じゃあ、もう行くね」 そう言ってアニエスは、箒に乗って空に飛び上がった。 「こら、また落とすかもしれないでしょ! アニエスっ!!」 厳重に水晶球を上着の中に収納して、アニエスは眼下の姉に叫び返す。 「駅までは、飛んでいく〜!」 困ったように、それでも頼もしそうに手を振って見送るエレナにアニエスも手を振る。慌てて、ロンもツバメになって追いかけてきた。 アニエスの心を映すように、蒼い空が広がる。 何も、心配しなくて良い。アニエスは金髪を揺らす、爽やかな風を吸い込んだ。隣には、ロン君。上着の中には、お姉ちゃんから引き受けた水晶球。 駅へと箒を向けながら、アニエスは口元を緩ませた。心配しなくて良い。だって、魔法は確かにここにあるから――。 |
白星奏夜
2012年05月16日(水) 15時21分07秒 公開 ■この作品の著作権は白星奏夜さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.10 白星奏夜 評価:0点 ■2012-05-28 00:53 ID:2JviV1GxTEQ | |||||
楠山歳幸様 御感想、感謝致します。こんばんは〜。 素敵な、というお言葉、本当にありがとうございます。人の温かさと、機械によってどこか冷めてしまった人の冷たさ、言葉が足りなかったかもと思っていましたが、汲み取って頂けて、とても嬉しく感じます。 当たり前ではないこと、十二歳の心の動き、かつての自分を思い起こしながら、書いてみました。何か、共感して頂けるところがあったのなら幸いです。 「魔法は弱くなったわけでも、消えるわけでもない。たぶん、姿を変えているだけ」ここに、感じて下さるものがあれば、本当にこの物語はその役目を果たしている(調子に乗っていますが)ような気持ちがします。きゅん、として下さったとの一文、こちらがきゅん、とさせられました。温かいお言葉、ありがとうございます。 書きながら、死や、駆け引きなしで、どう展開してくのか、とても悩みました。やはり難しい、ですね。でも、和んで頂けた様子で、安心していますっ。 この前は、楠正成のこと、詩板の方で丁寧に返してくださりありがとうございました。この場を借りて、御礼を。個人的には、北畠顕家なんかにも興味が。あの強行軍は凄い、と思ったりします。あ、話しが逸れてしまいましたね((笑) ではでは、今回もありがとうございました〜。それではっ!! |
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No.9 楠山歳幸 評価:40点 ■2012-05-24 22:53 ID:3.rK8dssdKA | |||||
読ませていただきました。 良かったです。素敵なお話でした。小さな町の人たち、家族の繋がりと機械に冒された(?)人々との対比が素晴らしいです。十二歳もいいいですね(いえ、ストライクゾーンみたいな意味ではないです)。無邪気さと環境の変化による心の動きが良かったです。「当たり前ではないことがようやく分かる」この文章に遠い昔を思い出させていただきました。 >「魔法は弱くなったわけでも、消えるわけでもない。たぶん、姿を変えているだけ」 しっかりしたお話作りが加わって、この所に年甲斐も無くきゅん、となりました。本当にどこかに魔法があるような素敵な文章でした。 >誰も死にません、駆け引きもしません。(略)でも、こういうのも好きですね。 素人ながらこう言うお話を素敵な作品に仕上げるってむずかしいと個人的に思っています。和ませていただきました。失礼しました。 |
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No.8 白星奏夜 評価:0点 ■2012-05-21 21:16 ID:ZXhR7nhZApI | |||||
Phys様 御感想、感謝致します。こんばんは〜。 理想のハッピーエンド。とても嬉しいお言葉です。ラスト一行はいつも頭を捻って、うんうん言いながら(汗)書いているので、少しでも良いなぁ、あったかいなぁと感じて頂ければ、もう大満足です。 ファッ、ファンですかっ!! ありがとうございます×無限 そう言って頂けたのは、Phys様がリアルに最初の人かもしれません。マキシマムの感謝と、お礼をこの場で。今後も頑張っていく魔力を補充して頂きました((笑) ロン君は自分で生み出しておいて、良い男だなぁとにやけていました。でも、アニエスと結ばれたら物凄い振り回されて、苦労しそうですね。そういうお話しも作ってみたい気がします。 わりと王道な設定や、キャラが好きなのでたぶん、それに影響されている気がします。子供っぽいですが、まだまだ心の中にいろんな世界や、物語の欠片になるようなイメージがあるので、それを書いていきたいです。頑張ります。 こっ、今回はだいぶミスが多いですね(汗)。わんこ蕎麦の如く、次から次へと重なってしまいました。 文章の構造に関しての指摘、ありがとうございました。確かに、例を示して下さった文章の方が、うまく意味が通りますね。とても勉強になりました。 許可なんて、そんな。子供ができたら〜のコメント、本当に心が温かくなりました。というか、涙が出てきました。誰かに読ませたいと感じる、書き手にとって、とても光栄なことです。 自動車のことについての御指摘、とても参考&勉強になりました。ありがとうございます。実は、自動車はとても悩みました。雰囲気というか、時代設定にそぐわないと御指摘通りの考えを持ったからです。けれど、身近に登場させて一番、機械っぽいというか、冷たさを感じるのは自動車かなぁと登場させてしまいました。完璧に言い訳です。別世界だからいっかと見逃してしまいました。お許し下さい。反省して次から、注意していきますね。 内容と構成、褒めて頂き、純粋に嬉しく思います。ハッピーエンド狂過ぎて、狙いにいっている感に自分でも苦笑いが。でも、大好きなのでたぶん永久に止められませんね。 Phys様のファンタジー、読んでみたいです。大丈夫です、妄想世界を解き放てば、何でもありです。(悪魔の誘惑です。お気になさらず) Phys様をはじめ、皆さんがとても注意深く読んで下さっていて感無量です。また、数々の心優しい言葉、本当にありがとうございます。私も、Phys様の新作を期待しつつ、次回に向けて頑張っていきますね〜。 ではでは、名残惜しいですが、今回はこの辺で。それでは。 |
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No.7 Phys 評価:40点 ■2012-05-20 22:14 ID:QV0ue66.VUk | |||||
拝読しました。 すごい。理想のハッピーエンドです。白星さんの小説が素敵すぎて、ファンに なりそうです。(というかすでになってました。名前見つけたらクリックするし) 緩急の付け方も、定番的な魔法少女像も、ファンタジー初心者である私には とても読みやすく書かれていて楽しめました。 おっちょこちょいな主人公の少女を陰でそっと支えるロン君のキャラクターに 勝手に萌えてしまいました。彼は大きくなったらいい男になるはずです。笑 お姉さんのエレナさんにも好感が持てました。 キャラクターの個性に新しさはないのかもしれませんが、だからこそ読み手の 期待に応えてもらえる展開が待っていて、それも粗のない構成になっていて、 とても勉強になりました。白星さんの心の引き出しにしまってある素晴らしい 童話をこれからもたくさん読ませてほしいです。期待しています。 あ、それと、いくつか気になった点を。 >普通の人たちには、魔法はそんな目で見るものなのだろうか ここは改行時の字下げができていませんでした。 >多くの力が失われ、残ったのは薬品を調合する力や、水晶球で傷の痛みや、身体の障害を緩和させる力などヒーリングに関するものだった。 この句読点の打ち方だと、文章の構造的に「調合する力」と「傷の痛み」と 「身体の障害を緩和させる力」の3つを並列しているように捉えられかねない ので、少し工夫が必要なのかなと思いました。何か所か、そういった「AND」 構造で誤解を招きかねない句読点の打ち方が気になってしまいました。 例えば、「傷の痛みや身体の障害を緩和させる力」まで句読点なしでつなげて もらった方が、意味がすっと入ってくる気がします。(意味を考えればすぐに 分かることですし、私の読解力が低いことは否めないのですが、本作は内容が 小さい子供が読むのにとても良いものだと思うので、ちょっと偉そうなことを 言ってしまいました。汗 子供ができたら読ませたいです。許可ください!笑) それから、 >男が手を振ると、ブルンと車が揺れ、排気の黒い煙が立ち上った のところで少しだけ気になった点です。 どうでもいいことなのかもしれませんが、自動車の起源は1886年にドイツの Gottlieb Daimler(ゴットリーブダイムラー)という技師さんが世界で初めて ガソリンエンジンを用いた二輪駆動システムを開発した時点だったと記憶して います。(ちゃんとgoogleでも確認したので正しいはずです。汗) すなわち、自動車が一般に普及するのは20世紀初頭からなので、黒い排気を 吐き出して走り去るような自動車が道を走っているとすれば、それは産業革命 よりかなり後の時代になるということです。 水を差すようでごめんなさい。舞台設定が魔法から機械技術への変遷期という ことですし、テーマに関わる部分だからこそ気になってしまいました……。 読み進める中で頭の隅を余計な知識がちらついてしまったので、一応、です。 内容と構成は本当に素晴らしかったです。白星さんのハッピーエンド演出力が 私は羨ましいです。これからその技術をさらに高めて、また楽しくてかわいい 物語世界を私たちに見せてください。私もファンタジー板の繁栄をお祈りして います。(ファンタジー書けないですけど……泣) 拙い感想失礼しました。 また、読ませてください。 |
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No.6 白星奏夜 評価:--点 ■2012-05-19 22:52 ID:m8bLg1WrwoQ | |||||
HAL様 御感想、感謝致します。まず、キャラを褒めて頂けてほんとにありがたい思いで一杯です。こんな妹や、弟が欲しいなぁなんていう若干の妄想から入りました。ですが、可愛いというお言葉でほんとに登場させて良かったなぁと感動しています!! アプリコットやマグノリア、など花や植物、鳥の名前なんかが結構好きなのでいろんな言語から引っ張ってきて、今後も使っていくつもりです。ああ、そういう趣味なのね、と受け流してやって下さい(笑) 読んでいて楽しい、共感できる、この御感想だけでほんとに余りあるプレゼントです。他の皆様のも含め、書いて良かった、と一番思える温かい言葉です。 御指摘、本当にありがとうございました。注意して下さるのは、とてもありがたいことです。ですが、今回はちょっと見落としが多かったです。反省して、次に取り組んでいきたいと思います。 卑怯とは思いつつ、一部修正させて頂きました。重ねて、お礼を致します。 今回も、ありがとうございました。新作も、張り切って書いていきますっ!!ではでは、またの機会に〜。 |
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No.5 HAL 評価:30点 ■2012-05-19 19:57 ID:2.uIVcefEww | |||||
拝読しました。 かわいらしいお話ですね〜。小さな魔女の冒険。 主人公も可愛いし、なによりロン君がいい男だなあ! と思いました。照れて羽をばたつかせるところがすごく可愛かったです。 冒頭の家のイメージが、さわやかでいいですね。海に突き出した岬の先端の家。すてきです。それから、アプリコット、マグノリアという家名が何気に好きでした。 団らんの温かさ、生まれて初めての冒険へのわくわくする気持ち、現実の厳しさ、ひとりぼっちの不安、帰還……いい意味で物語の典型というものをきちんと踏んでいて、読んでいて楽しかったですし、主人公に共感しながら読み進めることができました。 細かいことばかりで恐縮ですが、いくつか気になったことを。 > 少女はそう言って、自分に付き添うように飛んでいるツバメに声をかけた。 「言って」と「声をかけた」が重複しているのがちょっとひっかかりました。 > ここ三十年ほどで、急激に発達した蒸気機関を用いた機関車は今や移動に欠かせないものになっている。 間違いとかではないのですが、ほかの文章んい比べて、ここだけちょっとくどいかなあという気がしました。読点の位置もあるのかな。 > 産業革命、と言われる蒸気機関の開発と、機械の発明から五十年。 段落冒頭の字下げができていないようです。 > 胸が鳴っている。 胸が高鳴っている、の脱字かな? と思ったのですが、わざとだったらごめんなさい! > 人は大事なものをなくしのかもしれない。 なくし「た」の脱字のようです。 ……と、己の筆の拙さを棚に上げて、好き勝手を申してしまいましたが、とても楽しく読ませていただきました。拙い感想、どうかお許しくださいますよう。 また新作も楽しみにしています。 |
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No.4 白星奏夜 評価:--点 ■2012-05-18 23:57 ID:m8bLg1WrwoQ | |||||
山本鈴音様 御感想、感謝致します。終わり方が素敵、と言って頂けて心から嬉しく思います。せっかく読んで下さったのですから、やはり最後は微笑んで、といつも果敢に狙っていってます(笑) 空を飛び回るところは、八割が私の願望ですね。きっと気持ち良いだろうなぁと。やっぱりそれぞれの世代が登場してくると、物語として面白いなと書きながら感じていました。上の世代に支えられているなぁという私の最近の心情も加わっているのかもしれません。 水晶球を失う場面は、御指摘の通りです。実は、結構、苦戦しまして駆け足で書いてしまったところです。丁寧に描写するべき、でした。 表現の変なところ、人称がおかしいところは恥ずかしくなったので、一部修正させて頂きました。見直したつもりでしたが、やはりまだ見落としているところがありましたね。御指摘、本当にありがとうございました。 サンドイッチに触れて頂き、一安心です(笑) 物語の中にちょっとしたパズルというか、仕掛けというか、そういうものを入れるのが好きなので、というかそういう小説が好みなので、真似てみました。うま〜くサンドイッチの言わんとしているところが山本様に伝わったようで、かなりニヤけております。はい、完全に自己満足です。 今回も、ありがとうございました。ではでは、またの機会に〜!! |
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No.3 山本鈴音 評価:20点 ■2012-05-18 22:13 ID:xTynl89qwNE | |||||
後味の爽快なお話、読ませてもらいました。 最後の終わり方が素敵です! 開放的な舞台で飛び回る設定が、読んでいて心地よかったです。 穏やかな雰囲気にぴったりですね。 妹のアニエスがお転婆ぶりを踏襲してて、それを人生の先輩として温かい目線で見ているエレナの存在。周りの親族たちも、彼女を優しく見守っているのが良いです。物語に一回り広い視点を与えています。 気になった所は……時間の流れが少しばかり平坦なように感じました。 序盤は良いんですが、大雨に打たれて水晶球を地上に落としてしまう見せ場。もっと行数を使って細かく表現すれば、イメージが膨らみ易いのでは? それと、視点の一貫性していない所がありました。 『アニエスは、食べられることの幸せを噛み締めた。』と客観性の高い文章の次に『三人で作るサンドイッチは、とても美味しかった。』と、主観に近づき過ぎています。 あと一か所、アニエスが「リア」になってました。(ちなみに、アニエスのほうが名前として響きが好きです^−^) なによりも、サンドイッチが効果的に使われていて、とても印象的でした。 「心を受け継ぐ」というテーマを水晶球のエピソードで自然に喩えていて、さらにサンドイッチも同じ意味があって……。 話の構造、すごく魅力的だと思います。 別の料理では子供が参加できないので、ベストな選択ですね。 書き手として勉強になりました! 以上です。 |
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No.2 白星奏夜 評価:--点 ■2012-05-16 19:53 ID:TUFvtdFx.cE | |||||
ウィル様 御感想感謝致します。こんなにはやくコメントが頂けて、嬉しい限りです。記憶にある限りではウィル様が最速なような気もします。ボルト越えですね。 コンセプトは私風魔女の宅急便(でもパクリではないのです)なので、全然オッケーですよ。とても、大好きな映画なのでやっぱりもの凄い影響されていると思います。 楽しめた、とのお言葉、ありがたいです。アニエスの心の動き、苦闘しながらなんとか表現してみました。 ディテールが甘い気もしていますが、魔女や魔法の設定、気に入って頂ければ幸いです。文明開化後の侍、言われてはじめて、ああ確かに一番雰囲気が似ていると思いました。急な変化に慣れていない描写なんかが合っても、おもしろかったですね。とても、参考になりました。 冒頭の、推測は断定で良かったですね。見落としていました。まだまだです。 今回も、ありがとうございました。ではでは、またの機会に〜!! |
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No.1 ウィル 評価:30点 ■2012-05-16 16:54 ID:yqFASJqAhJQ | |||||
たとえるなら白星さん風魔女の宅急便、といった感じでしょうか? 他の作品にたとえるのは作家にとって失礼にあたるかもしれませんが、まぁ宮崎駿作品はアニメなんでいいかな。 私も、誰も死なない、駆け引きもないけれども、一人の少女の心の変化、義務感や葛藤といった感じの心の小説は嫌いじゃないので、普通に楽しめました。 あとは、魔女を伝説的なものではなく、一つの文化として書いているのもいいですね。日本で言うと文明開化後の侍みたいでいいです。 ちょっと気になった点としては、序盤ですが >年は、十二、といったところだろうか。 と推測のように書いていますが、すぐに十二歳断定になっていますから、推測ではなく断定して書いてもいいのかなぁ? また次回も楽しみにしています。 |
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