一番綺麗なひまわり
 ある時、お金持ちの主人が下働きの2人の女性、メルバとナージャにこんな命令をしました。

”ここから少し離れたところにひまわり畑があるだろう。わたしはあのひまわり畑で一番綺麗なひまわりが見たい。それぞれ、一番綺麗だと思うひまわりをわたしに見せてくれ。良い方には褒美を与えるとしよう”

 ひまわり畑にやってきたメルバとナージャ。
「あの奥に咲いているのが一番綺麗だわ!あれにしましょう!」
 メルバは夢中になって、手前にあるひまわりを掻き分けて、目当てのひまわりを手にしました。確かにそのひまわりは黄色い花びらをたくさんつけて、内側の円形の部分とのバランスも良く色も鮮やかでした。
 一方、ナージャはというと畑の手前で立ちすくんで一向に花を取りに行こうとしません。元気に生き生きと、そして優雅に咲いているひまわりたちをただ鑑賞しているようでした。
 やったわ、ナージャはやる気がないみたい。これはわたしの勝ちね!意気揚々とメルバは自分がとったひまわりを手にして先にお邸に戻りました。
「ご主人様!わたくしがあの畑で一番、綺麗なひまわりを取ってきました」
「メルバよ、このひまわりが一番綺麗だと言うのか? わたしにはこのひまわりは悲しげに首をもたげているように見えるが」
 確かにメルバが持ってきたひまわりは畑で咲いている時とは違い元気がなく、しおれてきている感じすらします。
 そして、その後ナージャがお邸に戻ってきました。
「ご主人様、わたくしもあの畑で一番綺麗だと思うひまわりを持ってきました」
 しかし、その手にはひまわりの花ではなくスケッチブックが握られています。
「これを見てください」
 そこにはたくさんのひまわりの絵が書いてあり、そのどれもが太陽の光を浴びて輝き、とても美しく描かれていました。
「わたしも最初はメルバと同じように奥のほうに咲いているとても綺麗なひまわりを見つけました。でも、そのひまわりを取るには手前にある他のひまわりをなぎ倒していかないといけません。それにこの畑に咲いていればあのひまわりはもっともっと綺麗に咲いていられる。なので、花は摘み取らずに絵にすることにしました。」
 主人はやさしく微笑んでナージャの絵を手に取り、この絵はわたしが買おう。と言って100万ドルをナージャにわたしました。
STAYFREE
2012年03月06日(火) 09時00分42秒 公開
■この作品の著作権はSTAYFREEさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
こちらの板には初めて投稿します。だいぶ前に書いたもので、僕が初めて書いた時のお話しを投稿してみました。文字数制限をしたわけではありませんがちょうど1000文字ぐらいになりました。
なんだかちょっと恥ずかしいのですが思い切って投稿します。よろしくお願いします。

この作品の感想をお寄せください。
No.10  STAYFREE  評価:0点  ■2012-04-27 18:45  ID:NzL3LLXZs.6
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青山天音様

感想をいただきまして、ありがとうございました。
きれいにまとまっていて感動しましたとの感想、とてもうれしいです。
ストーリーについてのご提案は素晴らしいと思いました。簡潔に終わらせてしまったかなあというのは読み返してみて感じたことなので、もう少し枝葉をつけて、物語が広がっていけばいいなあと思います。時間があったら少し練り直してみたいと思います。
こちらこそ、これからもよろしくおねがいします。
No.9  青山 天音  評価:30点  ■2012-04-23 10:01  ID:.qW7n.wim8Y
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STAYFREE様。
こんにちは。僭越ながら感想を書かせていただきます。
はじめて書かれたとのことですが。それを感じさせないくらいきれいにまとまっていて感動しました。無駄な部分が無い感じでかえって示唆に富んでいて奥深く感じました。
心の美しさをはかる対価としてお金を持ってくるのはどうか…と思いますが、ウイットでまとめられているのが素敵ですね。100万ドルを直接渡すのではなく、絵を買おうとしたところもいいと思いました。お金の持っている生臭いイメージをうまく中和していると思いました。童話らしくてでかえっていいような気もします。
全体の構成として考えると、たとえば、はじめに報酬の明示をしないで金額がオチに持ってくるとお金持ちの感動した様子が伝わってくると思います。また、お金持ちが「足が不自由」などの設定にして、だからひまわりを遠くからしか見られない。それをナージャが絵で元気づけ、報酬の100万ドルで自分の物にするよりも足の手術をするのことを勧めるなどの提案をするとかしたら、よりナージャの心の美しさが自然に表現されるのではないかと思いました。
勝手な事を書きまして申し訳ありません。どうぞよろしくお願いします。


No.8  STAYFREE  評価:0点  ■2012-03-18 19:01  ID:te6yfYFg2XA
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くすのきやまさいぞ様

感想をいただきまして、ありがとうございました。
詩のように抒情的で、素敵でしたとのお言葉うれしいです。

>欲を言えば、どうして主人は二人にこの命令をしたのか気になりました。

そうですね。なぜ主人はこのような命令をしたのかというのは書きませんでしたが、主人は自分とは大きく身分の違う者がどのような価値観を持っているのか知りたかった。というのが僕の中の考えです。

自分が書いた初めての作品でしたが、いろいろな方から感想をいただいて
また自分で何度か読み直して、もう少しボリュームをつけてみたいなあなんて
思いました。
機会があったら練り直してみたいと思います。
No.7  くすのきやまさいぞ  評価:30点  ■2012-03-16 21:36  ID:3.rK8dssdKA
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 初めまして。拝読させていただきました。

 上手です。短いのに素晴らしくまとまっていて、それでいて詩のように抒情的で、素敵でした。
 二人のキャラがはっきりしていて、とても生き生きしてました。夏の黄色の広々とした風景も感じられ、良かった半面そこに金持ちへの皮肉も感じました。初めて書いたのがまたすごいです。
 欲を言えば、どうして主人は二人にこの命令をしたのか気になりました。恐らく主人はナージャだけでなくメルバにも何かしらの魅力を感じていたのかな、と想像しました。

 面白かったです。失礼しました。
No.6  STAYFREE  評価:0点  ■2012-03-07 00:19  ID:dJ/dE12Tc8A
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HALさんへ

感想をいただきまして、ありがとうございました。
そうなんです。短いお話ですけど、初めて完成させた喜びは大きなものでした。
そうですね、メルバの性格だときっとナージャを妬んで憎らしいとさえ思うかもしれません。
このお話に続きがあるのなら、二人の対比でもっと性格がわかるような描写になるかもしれませんね。
No.5  HAL  評価:30点  ■2012-03-06 23:11  ID:iSVWlwRIbBs
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 拝読しました。初めて書いたお話って、特別ですよね。
 童話というか、訓話かな。いいお話ですね! シンプルな筋なんですけど、読んでいてすがすがしいというか、気持ちのいいお話でした。文章も、平易なんですけどもそれがお話にあっていて、リズムよくすっと入ってくるかんじがしました。

 このあと、きっとメルバはナージャを妬んだだろうなあ、なんていう余計な想像まで、つい巡らせてしまいました。ひねた読者でごめんなさい(汗) そのようすもそれはそれでお話になりそうですけども、お話の主題が変わってしまいますね。

 楽しませていただきました。つたない感想、どうかご容赦くださいますよう。
No.4  STAYFREE  評価:--点  ■2012-03-06 22:28  ID:eM8nTjX2ERc
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Physさんへ

今回も感想をいただきまして、ありがとうございます。
100万ドルを渡す……。確かにお札を手渡ししたらすごい量ですね(笑)
それについては全く意識してませんでした。もし絵本だったら、主人がちょっと小太りの側近二人ぐらいに命令をして、その側近は大きなおなかの上にいっぱいの札束を乗っけて、両手で抱えて持ってくるのでしょうね(笑)
でも、配慮が足りなかった部分とはいえ、笑っていただいたのならうれしいです。
白星さんとPhysさんから感想をいただいて、心の綺麗な女性に何を贈るのが良いのか、浮かばなかった自分が男としてなんだか恥ずかしくなりました(笑)
あっ、でもお金をあげるようなお金持ちでは全然ないのですが……。
No.3  Phys  評価:30点  ■2012-03-06 22:31  ID:RxcAXMgyoGI
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拝読しました。

こんばんは。
上手い。すごく綺麗にまとまっている掌編だと思いました。私は掌編を書いた
ことがないのでなんとも言えないのですが、きちんと「落ちる」掌編を書くのは
とても難しいことだと思います。(TCの方もけっこう苦戦している部分なの
では、という印象を持っています)

小さい頃、イソップとかグリム童話が好きで、よくお父さんにねだって買って
もらいました。教訓めいた話や、不気味なだけで何が言いたいのかよくわから
ないお話もたくさんありましたが、あの幻想的な読書体験は今日の私の中にも
確かに息づいている気がします。本作も、そんな子供に読ませたいお話でした。

一点、気になった(というか笑ってしまった)ところです。
「100万ドルをナージャにわたしました」とありますが、100ドル紙幣1万枚は
渡すには量が多いなぁ、ということです。渡す、と言うとなんとなく手渡しを
想像してしまうので、先入観で、最初はお金持ちさんが紙幣を大量に抱えて
いる映像を思い浮かべてしまいました。笑

あ、でも、ジェラルミンケースいっぱいに入った状態で渡したのかもしれない
ですね。いずれにしても、私はお金じゃなくて新しいお洋服とか、「物」の方が
いいな、とわがままに主張してみます。

現代の枠に捉われず寓話的な話にも果敢に挑戦されているSTAYFREEさんを
見習って、私も何か自分の世界を広げられるような作劇がしたいなぁ、なんて
思いました。機会があればいろいろ挑戦してみたいです。

また、読ませてください。
No.2  STAYFREE  評価:--点  ■2012-03-06 21:43  ID:eM8nTjX2ERc
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白星奏夜さんへ

感想をいただきまして、ありがとうございました。
最後のご褒美の100万ドルはやっぱり気になりましたよね。最初は普通のご褒美をなんとか考えようとしたのですが、お金持ちの主人というところに結び付けて、なんだか皮肉を入れたくなってしまい、このような形にしました。
やっぱり普通のご褒美で終わった方が、よかったかなあって今では思ってます。
でも、これから先を書き足して物語が展開していくのなら、これのままでもいいのかなあなんて思ったりもします。
時間がある時に続きを考えてみたいと思います。
No.1  白星奏夜  評価:30点  ■2012-03-06 21:29  ID:07GNpZyB5Uc
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こんばんは、白星です。拝読させて、頂きました。
可愛らしい雰囲気の作品で、私の好みの情景が描かれていて、ふふっと柔らかく微笑んでしまいました。個人的には、ドジってしまったメルバの方がキャラとして好きです。なにか、憎めない感じがします。
偉そうに語る資格もないのですが、ラストがちょっと気になりました。百万ドルという額は置いておいて、最後、お金が出てくるのはなにか良い雰囲気に水を差しているように感じます。それくらい感動した良い主人とは思うのですが……。ナージャの素晴らしい、心温まる感性にはそれに応じた心優しいご褒美が欲しかったような気もします。余計な意見です、すみません。
また、読ませて下さい。失礼致します。
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