地獄の鏡世界 |
「もう少しで締め切りだから、今日の掃除当番代わりにやってよ」「え?」「未来のSF小説家に文句ある?」給食の時間、隣の席の気弱なユウキくんにひそひそ言ったの。「これくらい、別にいいでしょ?」「うん……」 でも、その隣の真面目なコーイチくんに「ひどすぎるよ」と言われたの。「何よ、こーしちゃうもん!」と、プリンをサッと奪い取って一気に食べちゃった。「もう知らん!後で絶対にツケが周ってくるぞ」 帰りの時間が終わると急いで家に帰ったの。玄関を開けるなり、たまたま学校が休みだったお兄ちゃんが仁王立ちしてたの。「学校から連絡があったぞ。授業中ずっと、小説を書いてたらしいな」ギクッ。こっそり書いてたのに。 「何よ偉そうに。小説も書けないくせに。お兄ちゃんなんか消えちゃえばスッキリするのに」「それで?」「それでって……。あぁ、もうお兄ちゃんなんて」私はお兄ちゃんの顔を思いっきりバシンッって平手打ちしちゃった。「お兄ちゃんなんて大嫌い!」 家を出て公園まで走っていっちゃった。風が冷たくて、人が誰もいなくて……。寂しくなんかないんだからね。幼稚園を思い出したの。何年かぶりに、ジャングルジムの一番上まで上がったの。もっと高くからって立ち上がった時。グラッと体が揺れて「あっ」と言う隙もなく、下に落ちちゃったんだ……。 意識を失ってた。目を覚ますと、風景はそのままなのに目の前に黒いウサギが立っていた。「ここは、死の世界……。地獄でございます……」「血の池も針の山も見えないけど」 「鏡地獄に来たのです。ここは、鏡の世界」「ご飯は左手で食べるの?」「さぁ……後々気づくことでしょう」黒いウサギはスッと姿を消したの。 私は体が自然に動いて、家に戻ってた。ドアを開けるとお兄ちゃんにいきなり「冷華ちゃんなんて大嫌い!」と思いっきりバシンッって平手打ちされたの。えっ?って目を点にしたら「冷華ちゃんなんか消えちゃえば」って私と言ったことと同じことを言われた。鏡の世界って自分がした事と相手がした事が反対になるんだ。だったら、これから……。 目の前に黒いウサギがまた現れて二ヤリと笑ったの。「これくらい、別にいいじゃないですか」涙がどんどん溢れて、目の前がくらくらしてきた。涙で周りが見えなくなって……。 涙をふいた時、私は病院にいてお兄ちゃんが隣にいたの。「運が良かったな。危ないところだったぞ」優しい目……ごめんね、お兄ちゃん。 |
ぽえむ
2012年01月23日(月) 16時00分35秒 公開 ■この作品の著作権はぽえむさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
No.4 陣家 評価:20点 ■2012-02-19 21:00 ID:1fwNzkM.QkM | |||||
いいと思います。 初々しくて、瑞々しくて。 本当に作者様が女子小学生みたいで。 いや、中身おっさんだったら、違う意味でもっとすごいとは思うんですが。 目立った誤字脱字が無いところにも流暢さを感じてしまいます。 「何よ、こーしちゃうもん!」 このセリフが読めただけでもこの作品を読めて良かったなあと思いました。 この、プリンに対する至宝感、リアリティがあります。 「さぁ……後々気づくことでしょう」 このセリフを口にのぼしている時のうさぎの表情を思い浮かべるだけで幸せになれます。 (だめだ、こりゃ…… 的な) ここで笑ってしまうとその後の冷華が冷やし中華に見えてしまう自分はかなりおかしい人間です。 でもまあ、鏡地獄と言うよりは、リフレク地獄って感じですね。古いか。 とてもよかったです。わけのわからん感想ですいませんでした。 |
|||||
No.3 ぽえむ 評価:--点 ■2012-02-17 14:20 ID:XPFl/s866Ik | |||||
コメントありがとうございました。 zooeyさんの評価を読んで「本当にその通りだな」と 心から納得しました。 せっかく黒くて怖いうさぎを出したのに、 表現が足りなくてあまりイメージがハッキリしなくて 少し残念かな、と思えたからです。 「赤い目を光らせて」や、どんな服を着てるかなど、 書き込んでいけば、童話らしくなるかなと気づきました。 ラストのところでも、黒うさぎのぬいぐるみが……などと 書いてもおもしろいと思いました。 母親にも「あんたの童話は情景があまり浮かばない」と 言われて、もう少し書き込む必要があると考えました。 |
|||||
No.2 zooey 評価:30点 ■2012-01-26 02:27 ID:1SHiiT1PETY | |||||
はじめまして、読ませていただきました。 既出の意見ですが、黒うさぎの雰囲気がいいなあと思いました。 ただこわいものより、普通なら可愛いものがこわい、という方が不気味さが際立ちますね。 その辺り、意識されたのであれば、成功しているのではないでしょうか。 アイディアも面白いものでした。 鏡=自分のしたことと相手のしたことが逆 悪いことをし続けた人にとっては、最適な地獄なんでしょうね。 ただ、心理的な恐怖を描くためには、もっと描写を濃くしなくてはならないんじゃないかなとも思います。 うさぎの姿や様子を描きこむ必要もあるだろうし、 それまでの主人公の行動をもっと丁寧に描いて、相手を蔑ろにしている様子や心情を強く印象付けたほうが、「行動が逆になる」と悟った時の恐怖がより伝わったかなと思います。 ラストのところで黒うさぎが何らかの形で絡んで来たら、オチもついて面白かったかなと思います(バッドエンドということではなく)。 |
|||||
No.1 白星奏夜 評価:20点 ■2012-01-24 17:47 ID:q/PXrGiEazY | |||||
はじめまして。拝読させて頂きました。黒ウサギ怖いっす。ぱねえっす。あれが出てきたら泣きます。自分の言動が逆だったらって思うと、背筋が寒くなります。気をつけようなんて、思ったりしました。拙い感想ですみません。 | |||||
総レス数 4 合計 70点 |
E-Mail(任意) | |
メッセージ | |
評価(必須) | 削除用パス Cookie |