不老不死の定義について |
少し話を聞いて欲しいんだ。 何、難しい話じゃないよ、君もきっと一度は聞いたことがあるだろう? 不老不死っていうの。 知っているかい? 老いず死なず病むことすらない、錬金術師たちが最初に夢抱いた最後の幻想だよ。 あれ、興味無いかい? んー、まあ仕方がないか。こんなものに寄り縋るのは一国を治める権力者と相場が決まっているからね、一般人には何の意味もない事柄だろう。 でも、聞いてくれよ。たまには年寄りの話相手になるのも悪くないだろう? で、どう思う? 不老不死って。 こんな老いぼれからすればとても過ぎた話なんだけれど、『老いず死なず病むことすらない』ってフレーズに関してなんだが、やはり自分で言っておいて何だけれど、『老いて死して病む生き物』である人間にとって、やっぱりそれは過ぎたものだとは思わないかい? あれ? 無言? 難しいかい? そんなことないと思うけど…。 じゃ、あれだよ。人、といっても生き物すべてに言えることなんだけれど、生き物が子供を残すのって、なんでだと思う? 増えるため、ね。 まあ、そうだね。じゃあ、なんで増えると思う? うん。そう、正解は死ぬからだよ。 生き物は死ぬから子孫を残すんだ。自分の種を残すためにね。 で、それってさ、逆を言ってしまえば不老不死ってのは、子供を残す必要が無いってことにならないかい? んー例えるなら…ハムスターとか、知ってる? 産みすぎると子供を親が食うんだぜ? 増えすぎると困るから殺すんだ。自分たちが死んだとしてもそれじゃ多すぎるから。 つまりさ、不老不死は子供を残せないんだよ。 産まれて、生を謳歌し、子を残し死滅する生き物の存在理由に矛盾してしまうからね。 矛盾だらけさ、『老いて死して病む生き物』と『老いず死なず病むことすらない』ってね。 本来、生き物が生きる上で起こる異常が『病』であるのなら、『老いず死なず病むことすらない』という異常は、病の他ならないとは思えないかい? そう、その通り。不老不死は病だよ。 それも先天性のね。 発生の条件さえ分からないが、最近では珍しくないらしいよ。 さて、と。 じゃあ、雑談は終了さ。老いぼれの最後のお願い聞いてくれるかい? 嫌とは言わせないよ。ここまで聞いてしまったんだ。君は無関係じゃない。 あのね、この先、町はずれの海岸に小さな廃屋が建っているのさ。 そこに行ってきてもらいたいんだ。 でね、約束してもらいたいんだけど、そこに何があっても驚かないでほしいんだ。傷付いてしまうからね。 じゃ、頼んだよ。 ―――――――――――――終了。 老人が何を頼みたいのか、おおよそわからない自分ではない。 ただ、それでもその廃屋にいたものを見て絶句せずにはいられなかった。 女の子だった。 癖っ毛で気弱そうなの幼面、怯えた藍色の瞳がこちらを見て、とっさに足元を 近くの布切れで隠してしまう。 しかし、少年は見たのだ。 自分と変わらない少女の肌色が腹部から瞳と変わらない藍色に染まっているのを。 そして、 「見ないでッ!」 澄んだ声色の制止。 少女は膝を庇うように背を向ける。 「なあ、それって…」 「あなたも………、」 「え?」 「あなたも、私を殺しに来たんですかっ!?」 本来足があるべき所から魚の尾ひれが伸びていた。 |
大歳 籠
2011年05月01日(日) 21時19分44秒 公開 ■この作品の著作権は大歳 籠さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.5 ウィル 評価:20点 ■2011-05-27 00:18 ID:YTo0CRkPCEI | |||||
なんとなくですが、小学校の頃の国語の問題を思い出しました。 話としては、完璧な未完結なのに続きがない。 その続きを、前の話からどう考えるのか? という読者への問いかけみたいな感じですね。 人魚を食べると不老不死というのは、有名な話ですが、日本が起源だったっけ? 尼さんの話だったような……記憶があいまい。 不老不死といえば、最近はバッカーノ!!というラノベがブームになったと記憶していましたし、錬金術関係の題材も使われやすいです。 が、やはりこのような短編には向いていないので、なかなかに使いにくい題材ですね。 |
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No.4 大歳 籠 評価:--点 ■2011-05-07 19:26 ID:lhFvAZn8V7E | |||||
>ゆうすけさん 感想ありがとうございます。 クトゥルー神話ですね、わかりました探してみます。 さて、少女が不老不死であることに関してですが、本文の『終了。』より後はあまり深く考えていなかった節がありまして、作者のメッセージに書いたところを読んでもらえばいいかな程度にしか思っていなかった訳です。 少女は人間であり、その足は既に本来のモノとは別のものであり、不老不死であると。 ここも(というよりか全てにおいて言えることなのだけれど)表記するべきだったんですが、人魚を題材にしている時点で自分の中では日本の話でして、どれだけアニメ色が強かろうと黒髪黒眼であることがジャスティスであります。 なので、藍色の瞳を持ち合わせて言う時点で異常と……。 まあ、読み返して自分の世界観が出しきれていないんだなと思い知らされたので、今後に生かすことが出来るよう頑張りたいです>< |
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No.3 ゆうすけ 評価:10点 ■2011-05-04 13:40 ID:KDK/MQZX1DE | |||||
拝読しましたので感想を書きます。 情報量が足りず、内容がわかりにくいのは自覚しているようなので指摘はしません。 不老不死、面白いですが難しい題材ですね。私が好きなのは、クトゥルー神話における深きものです。この作品からその雰囲気を感じました。もし知らないのでしたらクトゥルー神話を調べてみてくださいね。きっと参考になると思います。 少女が不老不死である、その確証も必然性も見当たらないのが残念です。例えば、太古の文献に載っていたものと同一人物であったとか、殺そうとしても死なないとか、あっと言わせるオチがあると面白くなると思います。 |
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No.2 大歳 籠 評価:--点 ■2011-05-04 10:35 ID:lhFvAZn8V7E | |||||
>toriさん 感想ありがとうございます。 自分自身、ふと思いついた言葉を並べただけの感覚がありまして、深い内容などありません。それに一度書いた文章がバックアップなしで消えていますので、本来とは違った流れになっております。 ただ、『不老不死は先天性』というのは、自分の中でなかなかよい発想なのではないかと思いました。感想で頂いた様に『薬物』による副作用というのが自分の中にもあります。 生きているモノから生まれるくせに死なない。と言う気持ち悪さに自分は惚れて今回を書いた次第ですが、やはり、表現力が未熟が故あまりよく伝わらないようで、正しい日本語の遣い方を学びなおす必要があるのか、勉学に励まざるを得ない>< |
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No.1 tori 評価:20点 ■2011-05-04 01:38 ID:nyv4PhU4HKM | |||||
楽しく読ませて頂きました。 toriと申します。よろしくお願いします。 最後まで読んで思ったのは、謎が深まるなあ、ということ。不老不死は先天性で、でも少女の尾ひれは天然?ではないという。訳ありな空気を感じ取ることはできるのですが、ぴん、と来るところがないような、あるようなという不思議な感覚です。 不老不死といえば、ファンタジーの王道でいえば錬金術でエリクサとか普遍薬だとかそんなものを飲むとなるといいます。和風だと人魚の肉ですよね、よく和風ファンタジーというか和風な怪奇譚で必ず一度はでてくるお話だと思っています。この作品だと、そのどちらとも取れる、けれど確証はない。もしかしたら、もっと凄いものが行間に埋まっているのかも、と思わされる。 そんなところが面白くもあり、物足りなくもありました。 あと、せっかくの少女はもっと可憐に描写して頂けると、個人的にはより萌えられると思います。 では、短いですが、私からは以上です。 これからも頑張ってください! |
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総レス数 5 合計 50点 |
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