蟲と丑(+おまけ付き×2)
 月が出ていた。
 落ちゆく夕明かりの向こう。
 この世の裏側から覗き込むように、細い月の薄い皓りがあった。
 覗く者は何か。~か、魔か。さりとてその正体を知りうる者はなく、その意図を解する者もない。
 細い細い月は、白く、白々しく。皓々と、意思を込めて、無関心な興味と、慈悲深き悪意を込めて、地上を照らし覗き込む。
 五条河原に、座り込んでいた。
 少年は、蟲と呼ばれている。自ら、そう名乗るからだが、何ゆえに、そう名乗るのかは誰も知らない。蟲という以外に名のあるのかも知れないし、ないのかも知れない。蟲けらのような存在というなら、確かにその通りだったし、本人も周囲も否定しまい。しかし、彼の周りにいる大勢も、置かれる状況や心身の卑しさでは変わるものではなく、要するに少年は、川原に住まう者の誰でもないと言っているに過ぎなかった。
 川の流れを見ていた。
 月皓りの落ちる水面は、細波の小さなうねりに白光を返し、きらきらと、しかしてなお、であるから、常夜の闇を呑み込み、とろり、と、ぬめり、と、水以外の何かの濃度を、粘度を増し、わさわさと、心揺さぶり誘い込む常世の門の口を開ける。それも、月の意思のなる業か。
 その川の水面を、蟲は、じっと見ていた。
 小さな皓りの灯る。
 水面から数寸ばかり浮かんだ夜の、どこか頼りなく、不安げな闇の只中に、不安も気後れも何もなく、小さな皓りが、震えて灯った。
 何を欲してか、欲さずにか、皓りはそこにあり、そこに留まっている。何かを待つように。蟲を誘うように。
 蟲は、立ち上がる。汗と垢に固まった髪の強つくのにも、同じく色褪せ別の色に染まり異臭を放ち始める衣にも、何ものも気に掛けることなく立ち上がり、川原に寄せる黒い細波に裸足を浸す。
 ひやりとした川原の風。水の冷たさと共に、粘る闇が絡みつき、何かが、水でも闇でもない、もっと身近で、曖昧で、確固たる、それは怨嗟という、かつて人であった者たちの人であることを失ったことへの嘆きが、爪先から流れ込み背筋を縛り付ける。
 川の下は、常世だった。
 何千、何万、それ以上の人々がここで死に、死後ここに捨てられてきた。何百年、何千年もの間。延々と。脈々と。これを常世と呼ばずして何と呼ぶか。
 蟲は、憎悪と詛いの渦巻く、荒れ狂う怨嗟の高波の中、ひたひた、と歩き進む。
 ただ、眼に映る皓りを求めて。
「待ちや!」
 細波を切る蟲の足が止まる。
 静かに、意思なきものの操られるかのように、振り向いた。
 草の生い茂る土手からがさがさと近寄る白いもの。白い生地に菊綴じの房が揺れる童子水干、藍の袴。童子刈りに揃えられた前髪を透かして射る眼光は、陽光を宿すように活き活きと生あるものの活力に充ちている。
「そいつは、オレのもんや。渡さへんで」
 蟲は、焦点の定まらぬ澱んだ瞳で、駆け来る少年を見た。死者の眼球を取り付けたかのような双眸は、自分と年頃の変わらぬ少年が勢い込んで駆け寄ってきても、わずかにも動じることはなく、一瞥の後には、目指すものへと向けられる。
「待て、言うとんねん」
 ばしゃばしゃと川面に割って入る。陽光を滲ませる少年に、常世の声は届かないらしい。
 貴族の子弟を思わせる白い少年。
 対する蟲。ずず黒く汚れた衣を引っかけた川原乞食ながら、その容貌は、血の気の失せた蒼白でつるりと滑らかな肌、位置形の整った鋭利な目鼻立ちは、薄く光る月皓りを浴びて、美しく研ぎ澄まされた鋼の刃をも想わせる。
 陰と陽。真対象な二人の美少年が、闇を狭間に対峙する。
「あれはオレのもんや、手出しすんなや」
 意気込み詰め寄る少年。
 名を丑という。それは父母の附けた名ではなかったが、便宜上、そう名乗ることにしていた。いかにも愚鈍で気に入ってはいないが、仕方がない。本来の名を名乗れば、命の危険にさえ繋がる。
 彼は、先だって都近くであった戦の、敗軍の将の忘れ形見だった。本来なら、鞍馬の山寺から出ることを許されぬ、事実上の軟禁の身の上である。生かされていることさえ、敵軍の将の気紛れによる奇蹟。都近くをうろついていることが知れれば、即刻捉えられ、打ち首くらいは覚悟すべきだろう。
 丑は、蟲に追いすがろうと、波間を切って駆ける。が、水辺は苦手なのか、滑る石に足を取られ、思うようには進めない。
 さりとて蟲は、いよいよ無視できぬと見てか、丑を真正面に見据える。その視線は相変わらず朧で定まらず、本当に丑を見てるのかも怪しげながら、しかし、剛胆な丑をすら怯ませる冷たい瞳は、川面の下に潜む常世の闇よりも底のない無限の暗がりを呑んでいた。
「あれはオレのもの」
 夜闇が声を発するなら、こんな声で語るのだろう。丑がそう感じるほどに、蟲の吐き出す声は、錆を含んでかすれ、呻くように低く、苦悶に充ちた響きで絞り出された。
 よた、よた、と丑が距離を置く。
 こいつ、まこと、人か。
 丑がそう疑うのも不思議ではないほど、蟲という、この取るに足らぬ河原者の乞食童の存在は、今この場において、まさしく奇異そのものだった。
 丑は、思わず腰に佩いた太刀に手を掛ける。童子向けに鍛えられたゆえに、普通の太刀よりも軽く、短いが、その切れ味は間違いなく本物。丑自身はまだ経験がないが、元服間もないころの父はこの太刀を持って国元の戦場を巡り、幾つもの首をあげたという。
「ずっと探してた、あれはオレのもんや」
「否、あれはオレが望み生まれたモノ。あれは、オレにしか意味のないモノ」
「うるさい、うるさい、あれはオレのんや!」
 激昂に駆られ、丑が、太刀を抜く。
 天の闇から注ぐ薄い白光を跳ねる刀身。
 抜かば、身体に震えが走る。腹の底から湧き上がり昂ぶる激情と、背筋を流れ落ちる一抹の不安。構えの定まるよりも早く、蟲の身体が沈むのを見る。
 何かを投擲する構え。
 せせらぎを断つ風切り音。
 丑が、見たモノ。
「な、なんや、こいつら」
 礫かと思った物が、飛来する軌跡の中で蒼白い炎を放ち、その熱よりも冷気を発する炎の中に、恨めしげな人の顔が――
「ば、化けモン――」
 ぬぉおお――、と
 ううぉおおぉん、と
 呪詛を吐き迫る。
 けたたたたた――、近寄るほどに、形の朧ろな顎を揺らし、気炎を吐きつ嗤う。
 見まいと思えば思うほど、惑わされまいと念じれば念じるほど、視線が釘附けられ、思考も感情も失われ、全身が弛緩し、だらりと、構えることなき太刀の切っ先を垂らす。
 飛来する呪詛に、反応しきれぬ身体。
 ひゅん
 と耳先をかすめる。
 ごつッ
 と肩に、腹に当たる。
 肉に食い込む礫の、骨身に染み渡る痛みに身を捻る。この腹の底にずしりと沈み込む、痛みとは違う重苦しいものは何か。
「こいつ、童の化け物か。それとも術者か」
 人面の青火が、己が肉に食らい付く感触まではっきり残っているのを、気勢をあげて払い除ける。肝の細い者ならずとも、正気を留めておくことすらかなわず、心を蝕まれ、喰らい尽くされれば、心を失った生きる死体が転がるのみ。精悍だった表情に青ざめた陰を落としつつも、蟲に向けてにやりと笑むは、強がりを越えた武門の者の意地だったろうか。
「ほう……」
 蟲の焦点が初めて丑に合わされる。今まで視界に捕らえてはいても、視てはいなかった。丑という一人の少年に、今初めて興味を抱いたか。
「人の怨嗟を怖れぬのか」
「人の世の怨み節なんぞ、このオレが背負うたるわ」
 留まらぬ震えを押さえつけ、丑が、呵々と笑う。そのどこかに、丑の武士としての本音が滲んでいたか。
「面白い……ヤツ」
「こっちはちっともおもろないわ」
 言葉を交わすことで気を取り直したのか、だらりと垂れていた切っ先を、視線の先へ突き立てる。
「お返しや」
 態の捻りも鮮やかに、開いていた間合いを一気に詰める。そこから、初動から軌跡の見切れぬ一閃。少年ながら、その振るう太刀筋の鋭さ。銀光が奔る。手加減のない斬撃は、しかし――
 斬ったと思った影は、夜の闇にすぅーと滲んで溶けていく。
 上!
 見上げるならば、月の弧に対をなす、きらきらと光り返す水飛沫をまとった、漆黒の影。宙で円を描いて丑の切っ先に降り立ち、さらに身を捻って、鮮やかに着水する。
 いつどこで手にしたものか、細く長い棒きれを握る蟲。長さおよそ六尺。握りのほどよい一寸と少しばかりの円筒。身の丈を越す長棍は、丑の太刀と比べるまでもなく優美さの欠片もない。
「少し、切れた」
 感情のこもらない蟲の声は、鼻先に浮かぶ小さな朱線を示す。
「こちらも、お返し」
 丑が警戒に腰を引く。槍として使うのか、棍として使うのかで対応は変わる。大陸ならともかく、本邦に棍の使い手は少ない。槍と見るべきか。ならば間合いさえ詰めれば怖くない。初撃をいかにいなすかで決まる。そう、丑は読んだ。
 ちゃぷ、ちゃぷ、と小さな水を跳ねる音。
 水面を跳ねるような蟲の跳躍。
 突きが来ると読んだ丑の視界に、横薙ぎの一閃は映らない。
 蟲は、長棍の一方の先を両手に握り、もう一方が背後の水面に触れるほど身を捻り力を溜める。
 跳躍。と、共に放たれる斬撃は、夜を破壊する唸りと共に丑を襲う。
 眼は追えずとも、殺気のすさまじさを横合いから感じながら、丑は、身動き一つ取れない。死。あるいは、闇中の混沌。そのイメージだけが、脳裏に浮かぶ。助からない。オレの夢もここで潰えるか。と思ったとき――、
 衝撃はなかった。
 首と胴の離れる消失感もない。そんなものがあればとうに死んでる。死んでしまえば、喪失感もくそもなかろう。棒きれで首が飛ぶものか。
 丑は、自身の感慨に苦笑する。
 喉元に突きつけられた長棍の切っ先。この馬鹿長い棍を太刀として使うのか。
「ちっこいくせして、なんちゅう馬鹿力や」
 自分のことは棚に上げて吠える。なんだか、いろいろ馬鹿馬鹿しくなっている。
「やめややめや、もうえぇわ、あれはオマエのもん。それでえぇわ」
「最初からそう言っている」
 と言いながらも、蟲は、素直に棍の切っ先を反らせる。その棍を、川面に、びしゃり、と投げ捨てると、比重の軽いはずの棒きれが、音もたてずに沈む。
 先の殺気は霧散していた。
 蟲は、丑のことなど最初からいなかったかのように、川面に浮かぶ小さな皓りを目指して水面を分ける。
 静まる川原。
 誰の潜むもなく。
 冴え渡る夜。
 月光。誰の覗き見るか、含み笑いを漏らす。
 夕闇。視界すらも利かない。
 わずかに感じる息づかいは、草木や、そこに潜む虫、大気や水が奏でる、常しえの合奏曲。
 蟲が、月の雫に手を延ばす。
 それは、ひと時怯えるように震えて、相手の誰であるかを知って、ほんのりと皓りを増す。
「ちょっと、見てもええか」
 横から覗き込もうとする丑に、
「ダメだ。穢れる」
 と押しのける。その仕草は、年相応に子供っぽい。
「ケチなやっちゃなぁ」
「そうじゃない。これは、思いを汲んで成長する。他人の思いが入れば、ちゃんと育たない。そんなことも知らずにこれを欲していたのか」
 呆れぎみに息を吐く蟲。少しばかり口元のほころぶものか。
「そんなん知らん。オレはオレの願いを叶えてくれるもんを探してるんや」
「オマエは色々知らなすぎるようだ。まぁ、無知は子供の特権だからな」
「ほな、オマエは知ってんのか」
「知ってる。だからオレはこれを育てる」
「どれ」と性懲りもなく覗き込もうとする丑を、蟲が押し返す。
「やめんか、痴れ者」
「こ、このオレを痴れ者扱いするとは」
「煩いな、喩え源氏の頭領の忘れ形見でも、ものをわきまえぬ者は痴れ者だ」
「む……」
 丑が言葉につまる。否定も、肯定もできない。
 蟲は、皓りを大事に両の掌に包み込んで、そっとその中を覗き見る。
 薄ら蒼い白い皓りの中、その中心。小さく胎動する、息づかい。小さな、生命の兆し。仮初めであれ、偽りであれ、この世に生まれ出されんとする、小さな生命。それが、蟲の望むもの。望み続けたもの。ようやく果たされんとする。
「オマエが望むなら弟子にしてやっても良いぞ」
 ぽつりと蟲が言った。
 彼が他人との関係を望むことなど、これまで一度たりともなかった。蟲自身がそれを望まなかったし、また、望まれるとも思わなかった。人の世の異端である河原者。その中でも、蟲は、異端中の異端だった。
「ふん。あほかい。オレは誰にも師事せぇへん。オレがオレ自身の力で、源氏の再興を果たすんや」
 と自身の出自を明かしてしまっていることんにも気付かず胸を張る。
「そうか」
「そうや」
 わずかに目を伏せ、
「残念だ」
 と蟲が言った。
 本当に残念そうに聞こえたのは、夜風のひんやりと冷たいせいだったか。
「またな」
 丑が言う。踵を返して北へ、山へ向かって駆ける。
「またな」
 芦原に消えていく背中に、蟲がつぶやいた。

FIN

†−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−†

(おまけ その1)蟲と竹姫

 耳元にざわりとまとわるぬめった風。
 なぜともなく、験の良くない気運を産む。
 旅路への門出だというのに。
 西国へと向かう行列は、朱雀大路を羅城門に向けて、もさりもさりと、無駄に煌びやかに飾り立てて行進していく。
 公卿の子息がわざわざ任国に下がっていくとあって、これほどの見せ物を京の人々が見逃すはずもなく、大路には、牛車が並び、その間を身分に関わらぬ物見高い人々がひしめき合っている。
 その中には、遊行の説法法師、大道芸人の軽業、路辺にござを引いて物を売る人など、にわかな市のごとき様相をていする。
 ひしめく人の多くは知らないが、六位五位にもなろう身分の者なら知っている。この行進の主が、いかに苦々しい思いで任国へ下がり行こうとしているのか。国衙の中に造反の動きあり。付近の荘園の荘官と組んで新田を開発し、領主への寄進を滞らせ、地場勢力を蓄えているという。その目的は分からない。相馬の小次郎のごとく新皇を騙ろうというのか。そのことの愚は歴史が証明している……はずなのだが。
 とはいえ、そんなことは多くの庶民雑人には関わりない。鬱屈する日常に、名目はともあれ、お祭り騒ぎができれば何だって良いのだ。
 それすらも、ただ疎ましいと思っている少女もいたが。
 竹という名の姫は、なよ竹の君とあだ名される、摂関家に連なる家の姫君である。どんな催しがあっても、一条にある邸宅の、自分の対屋から出ようとせず、また、女房の繋がりから聞こえるはずの、彼女についての噂もまるで伝わらないことから、弱々しく儚い少女像を勝手に想定して、名前からの連想で付けられた名だった。
 なよ竹のかぐや姫。それが彼女に付けられたあだ名。けれど、彼女の本性を知る者は、呆れ気味に苦笑する。なよ竹というより、竹を割ったようなと言う方がよほど相応しいと。
 そもそも東国育ちである。母の身分もさして高くない。父卿が、公の用向きで治国を訪れたときに、付けた種だった。
 幼い頃は男の子に混じって山野を駆け巡った。未だに、同世代の男の子になら、乗馬でも、喧嘩でも負ける気がしない。
 ただ、都ではそのような女は求められない。認められない。だから、対屋にこもっている。都育ちの女房たちから、都の女の手ほどきを受けている。それは手厳しく。
 本人の望まぬ理由で都に連れてこられ、会ったこともない老人を父と呼ばされ、苦行のごとき躾を受ける。それが彼女の実情。
 行列見物は、厳しい躾の合間の息抜きという名目だった。竹がせがみにせがんだのだ。にもかかわらず、さっきからずっとぶすっと顔を膨らませっきりだった。まさか牛車に閉じこめられての見物とは思っていなかった。当たり前といえば当たり前なのだが、竹は間近で行列を眺めたかった。いっそ、その内に紛れ込んで、遠国にでも逃れてしまいたい気持ちだった。
 蟲は羅城門の上にいた。
 行列の来るのを待っている。
 行列を見物しようなどという好奇心が、この冷め切った少年にあるとは思えない。行列そのものに用などあろうはずもない。にも関わらず、蟲は、羅城門の楼閣から、じっと大路を見詰め、行列の先頭が訪れ来るのを待っていた。
 その頃、七条より下がった塩小路付近に駐められた牛車に、異変が起こっていた。間もなく行列の先頭が差し掛かってくるというので、同乗する三人の女房たちが浮き足立つ。そのうちの一人の女房が、ふと傍らを見ると、今の今までそこで膨れ面をしていた姫君がいないではないか。女房は慌てたものの、どうして良いか分からない。随行の若い郎党にそれとなく聞くも、特に変わったことはなさそうだった。
 三人の内、一人落ち着いてた女房が言った。
「放っとけば帰ってきますよ」
 彼女は、竹と共に東国から来た、幼少から彼女を養ってきた乳母で、彼女のことは何でも知っていた。こうなることも、予想できないはずがない。
「息抜きというなら、息を抜かせてやりましょう」
 こともなく言う彼女に、他の二人は、おろおろと、でもだの、けれどだの、ぶつぶつと言っていたが、結局自分で責任を負うのを嫌って、彼女に一任した。
「ほら、先頭が参りましたよ」
 しぶしぶの態を装いながら、二人の女房はそわそわと牛車の物見に顔を寄せた。
 当の竹姫である。
 塩小路よりも、二つ下の梅小路まで歩いてきていた。着込まされた衣装が動きにくいが、足腰には自身がある。少し目立つかとも思ったが、堂々としていれば、そう見咎められることもあるまいと、群衆の間に分け入って、最前列で行列の通るのを待っていた。
 見物なのは、やはり先頭を勤める武者の、容姿の秀麗にて、煌びやかに飾られた装束、頼もしげな体躯、誇らしげな表情の美しく、威厳に満ちたところだろう。都でも話題の美青年で、貴族の姫君たちの間でも人気は高い。帝と同じ血を引き、物腰柔らかく、東国武者の精悍さも併せ持つ。
「悪くはないの」
 それが竹の感想だった。
 先頭が通り過ぎてしばらく、その後も精悍な武士の護衛に囲まれた、家人たちが主の荷物を運ぶ、その荷の量や、行李の豪華さに人々が感嘆する中で、年若い武士の随行するのを眺めながら、そろそろ潮時かと思い始めた頃。
 先頭の方で、なにやら騒ぎが起こる。
 ざわざわと。
 それだけではない。誰かの叫び声。
 叫び声の連鎖。
 ざわめきが波のように押し寄せる。
 何が。
 一体、何が起こったのか。
 知りたいと思う。見に行きたいと思う。駆け出そうとする身体。けれど、なおのこと、戻らなければ。彼女は、無茶で無謀なこともするが、決して常識知らずでもなければ、彼女の乳母に、過度の心配を掛けたいわけでもなかった。
 見物に集まった有象無象の人々が先頭めがけて走り出す。京の民は物見高い。貴族の屋敷での催しに侵入したあげく物をかっぱらっていくほどに、物見高い。そんな彼らが騒動の種を見逃すはずがないではないか。
 群衆の押し寄せるのを避け、竹姫は粗末な家の合間を通る路地から、牛車に戻ろうと考えた。
 そこで鉢合わせるした少年に、竹は、眼を惹かれた。
 蟲は、逃げていた。
 逃げねばならぬことをしたから、逃げていた。なすべき事をなした。やり方はもっと他にあっただろう。ただ、このやり方しか、ないと思った。それは今も変わらない。他の手を使っていれば、逃げる必要などなかったと分かっていても。
 小さな家の並び立つ隙間の細い路地を、蟲は走った。遠くに怒声がする。まだ、追いつかれていない。
 そこで見た意外なものに、一瞬眼を疑う。
 お姫さま……
 どこかに家に仕える女童のようにも見えるが、それにしても着ている物が良すぎる。さぞ、人目を引いたことだろう。
「オマエ!」
 少女の声が、想いもよらぬ蟲の動きを縛る。
「何をした。何をして、逃げおる」
 鋭いな。蟲は、らしくもなく舌を巻く。たいした洞察力だ。いや、それ以上に、この情況で声を掛けるか、お姫様が、騒動の主と目星を付ける者に。
「人を殺しても動じぬ者の眼は、私も知っておる。オマエの眼は、その中でも最悪の者の眼じゃ」
 蟲は、そっと、少女を、竹を見る。
 いつもの、焦点の定まらぬ澱んだ瞳。
 竹が、びくりと怯む。
 感情の観じられないとよりは、そもそも感情などというものを持ち合わせていまいと確信させる瞳。
「そなた、鬼か」
 羅城門には鬼が棲まうという。
 けれど、それを確かめた者はいない。確かめようとする者は、確かめる前に不慮の死を遂げる。だから、羅城門に踏み込もうとする者はない。その下をくぐる者は、神仏の加護を願いながら、息を詰めて早足で通り過ぎる。特に、朝――、曙の頃。夕刻――、夕間暮れの頃。夜よりも鬼どもがのさばる。けれど、今は昼。昼に蠢き出す鬼など聞かぬ。大江山の鬼の大将とて、都に攻め入るのは夜と決まっている。
 それを知った上で、竹は確信していた。目の前にいる少年は、間違いなく、鬼、だと。
「おい、おまえら、怪しいヤツらだな」
 おそらくは、連絡を受けて近くを捜索していた検非違使の放免だろう。無駄にごつい身体、ごつい顔、ごつい髭。手には、白木の杖を持っている。
 ちっと舌打ちして逃げようとするのは、蟲ではなく、竹姫。検非違使などに関わるのはご免だと思ったのか。判断は間違っていなかったが、情況に即していない。
 男は、逃げようとする竹を、反射的に打ち据えようと杖を振りかざす。
 身を固くする竹。大人相手の喧嘩には慣れていない。ましてや、相手は検非違使、人を傷つけ慣れている。
 その間に分け入ったのは、蟲。
 振り下ろされる杖を、腕で受ける。
 ごつ、という鈍い音。
 男が状況を認識するよりも、蟲の動きの方が早い。男の顎に強烈な頭突きを喰らわせ、怯んだ手から杖を奪い、膝を突いた頭頂に、容赦なく叩きつける。
 身の毛のよだつ殴打音が、耳にへばり付く。
「殺したのか」
「命ぜられた者以外は殺さん」
 痙攣しつつ気を失っているが、生きてはいるようだ。
「命ぜられる……、オマエ、何者じゃ」
「だから、鬼」
「閻魔王の命令だとでも言うつもりか」
 蟲は、薄く嗤い、
「いや、もっと邪悪なものだ」
 と言った。
「オマエ、私とともに来い」
 竹の言葉を、蟲は理解できずに、竹を見詰める。
「オマエが何をしたかは知らんが、恩人であることに変わりない。直に追っ手が押しかけよう。私の車でどこへなと連れて行ってやる」
 それでも、蟲に、竹の意図が飲み込めない。
「ただし、それだけじゃ。それ以上のことは、私は知らぬ。それ以降、私に近づくことも許さぬ」
 そう言って、早々にも踵を返し、北へ駆けようとする。
「面白い、お人だ」
「別に、私は面白くなどない」
 似たような遣り取りを、最近したような気がする。
「では、お言葉に甘えようか」
「ああ、そうするが良い」
 言うが早いか、竹は駆け出す。
「何をしておる、早くせぬか」
 蟲は、その後ろ姿に苦笑いを向けて、本当におもしろ人だとつぶやいた。



(おまけ その2)蟲と羅生門の鬼

 柳の枝を払う錆色の風が、小さなつむじを巻いて、ひょうっと跳ね損ね、ぬるっと、ぬめっと、生温い湿り気を帯び、街路の隅の隅にわだかまるのを、飽食した野犬が踏みつける。
 蒼灰色の空。平坦に、のっぺらに、どこまでも続いて、柳の下、側溝にたまった雨水から眺める蛙をうんざりさせる。
 降り注ぐ陽差しは、白く、蒼く、くすんで濁った灰色に都の街並みを照らし、京の民をうんざりとさせた。
 梅雨の入りも近かろう昼時。
 何もこんなときにと思う朱雀大路を、名門公卿家の御曹司である伊予守の行列が、しゃなりしゃなりと、行進していく。贅を尽くして飾り立てられた、随行者の衣装や荷を収めた行李、同行する家人の車など、選りすぐりの武者たちに囲まれ守られた旅の一行が、一町もの間延々と続く。
 延々と、だらだらと。
 なんとかならんものかのォ
 行列の者は、皆、そう思っていた。
 気を吐くのは馬上の若武者らで、自らの若さ、美しさ、逞しさを集まった人々に見せつけることに余念ない。
 とりわけ、先頭を行く馬上の若武者は、誇らしげで、少々居丈高に、人々の喝采を浴びて頬を上気させ、照れ笑いを堪えながら、ぽっくらぽっくら馬上に揺られる。
 その絢爛な行列を一目見ようと、今日中から物見高い人々が集まり、賑々しく、お祭騒ぎのごとくに囃し立てる。
 のらり、だらり、と行列の進む。らんちき騒ぎもつられて南へ。まっすぐ、まっすぐ、大路を下がっていく。
 京の南には羅生門。
 門をくぐれは、京の外。
 門を、くぐり出れたなら。
 羅生門には鬼が棲まう。
 それはずっとずっと昔から言い伝えられている、まことしやかな噂話し。目撃談は数多く、巷の庶民雑人から、地位のある貴族方まで、鬼の恐ろしさを伝えるのに事欠かない。近い昔では、源頼光の四天王の一人として名高い渡辺綱が羅城門にて鬼の腕を切り落としたとか、もう少し遡れば、盗まれた帝の琵琶を、盗んだ鬼から源博雅が取り返したとか、視ただの聞いただのという話しを揚げれば枚挙に暇がない。
 果たして、羅城門に棲まう鬼とは、いったいどのようなものなのか。
 その、羅城門。門上の楼閣。
 ひとりの童が、格子から朱雀大路を眺め見る。蟲である。
「なぁ、蟲よ」
 背中からかけられた声にも、蟲は反応を示さず、ただじっと、大路の先を見詰めている。
「本当に殺るのか」
 陽差しのほとんど入り込まない、昼だというのに薄暗い楼閣の中。幅五間、奥行き二間という細長い空間で、声の主は、光を避け、中央辺りに身を埋めている。
「代わりに殺ってやっても良いんだぞ」
「今のあんたは情が濃すぎる。よくそれで、鬼であり続けられるな」
「あほ抜かせ。ワシは別に情なんぞ濃くもなんともないわい」
「そうやってすぐに感情を露わにする。そういうところが、情が濃いと言うんだ」
 言葉を交わしても、蟲の視線は、北を睨めて放さない。
 ぐぅと喉を鳴らしたソレは、のっそりと、身をよじり、億劫げに尻を掻きながら立ち上がった。六尺は越えていよう巨漢は、隆々たる胸板に比して、手足が細く長い。渦巻く頭髪、濃く太い眉、薄い瞳の色、毛むくじゃらの体表を、薄物の衣と短すぎる袴が申し訳程度に隠している姿は、およそ、人間離れして見える。
「別に悪いことではなかろう」
 空しい反論を試みる。
「鬼でなければな」
 予想通りの切り返し。
「心の揺らぎは隙を生む。付け込まれもするし、墓穴も掘る。良いことは何もない」
 巨漢の鬼は、それを重々承知した上で、重い息を吐く。蟲のような、元服まで十年近くもあろう幼子から聞かされる言葉としては、気持ちの晴れる類のものではない。喩え、彼自身が、それを教え込んだ当本人だとしても。
 蟲のような子供は、蟲ばかりではない。数多くの、心を持たない、心を削り取られた子供を見てきた。巨漢の鬼は、長くそういった童に鬼としての技を教えてきた。技というよりも、業か。蟲は、彼の最後の教え子で、彼がほとんど手解きをすることのなく、彼の技量を遙かに超えてしまった、希有なる童だった。
 そのあまりに際だった技量から、彼は、蟲の監視を命ぜられていた。自ら望んで買って出た役目だった。
「オマエは、鬼であり続けるのか。それで良いのか」
 ふと漏らすような言葉。
 蟲は、その言葉に、師でもある鬼を見た。
「他に何がある」
 蟲にとっては至極当然の応え。
 鬼には、広く世界を見てきた、かつて鬼ではなかった頃の経験の記憶を持つ鬼には、それはとても小さく矮小な答えだった。
「出会いがオマエを変えてくれることを願っている」
 その言葉は、声には出さす飲み込んだ。鬼を否定し、鬼であることを否定することは、鬼である上では許されない禁忌だ。
 今まで仕込んできた他の童どもにこんな感慨を持ったことはない。次々に仕込んで式神として送り込み、次々に死んでいった。使い捨ての遣い魔。その時期を越えて、鬼と呼ばれる、術者に使役されず、自己の裁量で仕事をこなす一人前になれる者は、ほんの一握りにも充たなかった。
 蟲は、最年少の鬼だった。かつて天才と称され、随一の術者とまで成り上がった、あの白狐の子にも並ぶ。蟲ならばあるいは――、と思わぬこともなかった。が、それにしては、蟲は、あまりにも純粋に鬼でありすぎる。
 巨躯の鬼――阿蘇丸は、蟲を希代の術者にまで引き立ててやりたかった。身元などはどうにでもなる。能力は充分。ただ、本人にその気があるかどうか。激しい野望がなければ、かなうことはない。
「来た」
 短く発せられた蟲の声。
 遠くに人々の騒めきが聞こえる。
 蟲が身支度を整え始める。
「本当に殺るのか、今ここで」
「この場、この時を選んだのはオレだ。他にいくらでも方法はあるはずなのに。オレも、案外と情に流されているのかも知れない」
 確かに、公衆の面前でやるような行為ではない。だが、反面、効果も高い。その効果の方を採ったのかと、阿蘇丸は思っていた。
「今を望んだのは、あいつだ」
 蟲は、ぽつりと言い残すと、ど真ん中の格子を開け放った。
「オレは、鬼としてあまり優秀ではないのかも知れない」
「オマエは、鬼から人に還りつつあるのだ」
 安蘇丸はそう言いかけ、その言葉が、もはや蟲に届かぬことを知った。
 蟲の姿は、もうそこにはなかった。
 先日、蟲が川原であったという武家の少年。丑と名乗った彼は、蟲の話しを聞く限り、おそらくは先だっての戦さの敗軍の将、源義朝の子であろう。母親を平家の将に奪われ、武士の子としての身分も自尊心も踏みにじられた上、鞍馬寺に幽閉された。彼はその激しい気性ゆえ鬼にもなれるところを、自らの意志の強さで人に留まった。あるいは、彼なら、蟲を変えることができるかも知れない。
 安蘇丸は、自らの望みの、わずかながら細い線が繋がるのを感じた。
 蟲ならば、都の鬼を一掃することができるかも知れない。一説に、聖徳太子の創設といわれる鬼と式神の仕組みを。二百年前にそう誓った幼い鬼は、やがて鬼の頭領として都の闇に君臨した。その轍を踏まさせないよう、見届けなければならない。
 安蘇丸は、格子の傍に立ち、大路を見下ろした。
 梅雨入前の、むしむしと蒸気のこもった朱雀大路を、もっさりもっさりと進む行列。
 その先頭を行く若武者は、いささかも姿勢を崩さず、誇らしげに真っ直ぐ前を見て、馬を進ませる。
 誰かが、何ごとかを叫んだ。
 叫び声は意味を為さず、ただ、畏怖をだけ周囲に伝えた。
 人々が指す。
 前方、その上空。
 巨大な門、羅城門。その二階楼閣。
 そこに、立つモノ。
 金色に陽光を跳ねる。
 極彩色の翼。
 人か、魔か。
 ふわり、と飛び立つ。
 翼を広げ。
 鳥――、迦楼羅鳥。
 神話にあって蛇を喰らう~鳥。
 わらわらと押し集まる雑兵の、見上げる額に突き刺さったのは、六尺にも迫ろうという棒きれの先端。
 呻き声を上げて倒れる雑兵を棒の先でにじり、別の雑兵の頭上に足を着く。一人、二人、三人を足蹴に行列に近づき、六尺棒を大路に突き立て、その上に直立するその姿は、人々にはやはり、~から遣わされた人成らざるモノとして映った。
 馬上の若武者は、畏れつつも、太刀を引き抜く。口元にはしかし、後日見る者に首を傾げさせる笑みが浮かぶ。
「~を騙る魔のモノよ」
 愛馬を駆り、
「我が刃を受けよ」
 神速と思われた横薙ぎの斬撃を、~鳥はひらりと跳躍して躱し、着地するところを狙った二撃をも紙一重の見切りで避け、馬の腹を蹴り上げる。
 いななく馬上から若武者が転げ落ちる。
 その、転落する秒にも充たない時間。
 交わる視線と視線。
 閃く黒い閃光。
 死にゆく者の浮かべる笑みは、陽光に煌めいて、呆れるほどに美しかった。
 胴から離れた首を、鳥は、恭しく、彼の愛馬の鞍上に据えた。
 数瞬。誰も、身動き一つすることができなかった。息を詰め、生きることを忘れたように、立ち尽くす。自然の動静すらもが。時がこの世に飽いたように。
 鳥に化けた虫は、偽りの翼以外に羽を持たず、自らの力では飛び立つこともできなかった。
 蟲は、長杖を振るい、活路を見出さんとする。
 動き出す時間。
 沸き立つ怒号。
 半狂乱の悲鳴。
 畏れ、哀しみ、ない交ぜの敵意。
 押し寄せる、人の意思の波。
 蟲は逃げる。逃げなければならない。逃げなければ、何の意味もない。逃げ切らなければ。彼の死も、全ての意味が失われる。世の中の諸事に意味などあろうとなかろうと、このことの意味だけは消してしまいたくなかった。今の蟲には、その思いしかなかった。
 押し寄せる人の波の厚さに、蟲の振るう杖の威力が鈍る。
 逃げなければ。
 と、眼の端に映る、一際大きな人影。
 にやりと笑った剛毛の男は、小さな火種を持っていた。それを、地面に落とす。巨大な炎が沸き立ち、見る間に紅蓮の壁を造り、黒煙と共に人々を取り囲む。
 炎をまとうのは、~でもなければ、術者か、鬼。火の気のないところに炎を呼び、意のままに操る。古来より人の手に余る猛威である炎を自在に扱うことで、その神秘性を高め、畏怖を煽り、地位を固めてきた。それが世の暗部にはびこるモノの正体の一面である。
 もうもうと立ち上る黒煙。めらめらと盛る紅い炎。容赦なく襲う熱気。人々を怯ませるには充分すぎる演出である。
 その期に乗じて、蟲は、着ていた迦楼羅の衣装を脱ぎ捨て、ただの小汚い童に戻り、群衆に紛れる。
「来世でなら――、」
 一度だけ、蟲は振り向き、
「弟子にすることを考えてやっても良いぞ」
 蟲は、南の空を睨める、美しい首だけになったかつての友に別れを告げ、群衆の中に消えていった。
2011年03月27日(日) 17時54分23秒 公開
■この作品の著作権はおさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
全回のリベンジで戦闘シーンメインで。
色々適当。続けたい気もするけど、院政期はあまり、というか、ぜんぜん分からないから、うーん。困ったね。
こういうストーリーのないのが書きやすい。物語を紡ぐのってあまり得意じゃないみたいだなぁと今頃気付く。
困った困った。

おまけ。
あぁ、時代考証もくそもあったもんじゃないや……。

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No.12  お  評価:--点  ■2011-04-06 15:49  ID:E6J2.hBM/gE
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返信です。

>ゆうすけさん
まいど、おおきにさまです。
気力の快復、なによりです! 
日常から気持ちに少しでも余裕が生まれれば、また、書き出せる日も近いんじゃないかと期待しますよ。と。
蟲のような主人公は、やっぱり、短期は厳しいですね。長期的に、他のキャラより出番を増やして、いろんなキャラとの交わりの中で、彼自身を浮き彫りにしていくというのが、正攻法です。いちおう、頭の中にぼんやり流れはあるのですが、うーん、続き書くかなー、書かないかなーって感じです。


>水川さん
どもどーも。無理矢理感想書かせてしまって、申し訳ないっす。
僕は基本的にキャラ物書きと思っているので、キャラが立っていると言ってもらえると嬉しいです。つづき、ぼんやりと流れは頭の中にあるにはあるんですが、うーん、どうしようかなぁ……。


>らいとさん
どもども。ちなみに、投稿時には☆はないんですね。いや、なんとなく。
ストーリーないですね。ない。まったくない。反省がない……。
体言止めは、大好きですね。ただ、他の方の作品へ僕自身も書いたことですが、体言止めを多用しすぎると、文章がぶつ切りの印象を与えてしまうので、そういうマイナス面がることも承知してます。この辺は、普遍的な意味での限度と、あと、個人的な音読リズムとかに寄ってくるところとがあるように思います。その辺りで、僕の個性と見なせるラインと、だらが視ても多すぎるだろうというラインとの判別が、客観的に出来ればいいんですが、まぁ、結局は主観の好みに陥っているのが現状ですね。この辺りは、結局、第三者さまからの意見を頂く中でしか判断できない。まぁ、そんなかんじすかね。
イメージボード。バレましたか。前に一度、長編を書くときに、こう言うのを幾つも書きながら、イメージを詰めていったことがありました。結局、時間が掛かりすぎて飽きちゃいましたけど。そのときの書き方と、まったく同じですね。



感想寄せていただいた皆様、ほんとまに、おおきにさん。
No.11  らいと  評価:30点  ■2011-04-02 23:27  ID:iLigrRL.6KM
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拝読させて頂きました。
面白いと思います。ただ作者からのメッセージにも書かれていますが、ストーリーがないですね。タイトルから薄々ないんじゃないかと思いましたが、やっぱりなくて少しがっかりしました。
じゃ僕の読んだのはなんなんだろう? と思ってしまいましたが、そういうものならしょうがないですね。
あと、文章がすばらしくウマイと思います。しかし、これは好みの問題かもしれませんが、気になったのが体言止めですね。これが、おさんの個性と言われればそれまでなんですが、なんか、慣れていないせいか、少しひっかかりました。
短編でもない。長編でもない。イメージボードのような作品でしたね。完成品を是非読ませてもらいたいです。
拙い感想で失礼しました。
No.10  水川 朝子  評価:40点  ■2011-04-02 00:38  ID:u3lyy/5P.xY
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読ませていただきました。
かっこよかったです。私もこんな小説が書けるようになりたいなあ。
戦闘シーンに力が入っていて、臨場感があふれていました。描写から妖しさが伝わってきて、すごくお話の中にのめりこみました。
登場人物たちのキャラクターも立っていると思います。でも、もっと蟲の心の内面を見たかったです。
あとがきを読みましたが、やはりあえて続きが読みたいと思いました。
No.9  ゆうすけ  評価:30点  ■2011-04-01 16:44  ID:1SHiiT1PETY
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ようやく気力回復してきたゆうすけです。
さて読み始めますと、おお、これぞおさんの文体ですね。丁寧に練りこんだ描写が独特の雰囲気を醸し出しています。芳醇なダシが効いたスープを飲むようです。セリフもぴりりといいスパイスとなっていて楽しめました。

さてキャラクター。蟲、ダークヒーローなのでしょうか。やや自己主張が弱い気がしました。所謂少年漫画における主人公のようでして、個性的な脇役があってそれらの対比によってその存在感が出るような雰囲気だと思いました。
丑と竹の方が、明るくて面白いですからね。陰と陽みたいな感じですね。

壮大な物語の第一部か、あるいは第ゼロ部、本編では語られなかった主人公達の出会いの場面を抽出したような感じです。或いはこれから連載スタートみたいな。まあ読み切りでもありという気もするし。
No.8  お  評価:--点  ■2011-04-01 01:01  ID:E6J2.hBM/gE
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返信です。

>Phys さん
うしゃしゃしゃしゃ。
げへげへ。
……もぉ、ええっちゅうねん。
どもども。
過分なオコトバ、ありがたくも恐縮しつつ、堪能しています。僕は褒められ好きです。褒めて伸びる子なので、どんどん褒めましょう。
蟲の正体……、一応、鬼とは書いてますね。鬼ってなんだろう? 何をもって鬼と名乗り、どういう経緯でそうなったか。僕も知りたい。うーん。安倍のナンチャラの隠し子とか、そんな感じでダメですか? ダメですね。僕がだめ出ししますよ。
うーん。楽しんで貰えたのなら、冥利に尽きます!



>G3さん

どもども。
冗長なんて……、何を仰いますか。ぜんぜん、僕は本気じゃないすよ。本気モードで思い入れびしばしに書けば、同じないようで、1.5倍の文章量にする自身があります!
まぁ、自慢にゃなりませんけどね。
行列の先頭で起こったことについては、おまけ2で。(たぶん)



>昼野さん

まいど。内容はないよう。いやいや、内容ありきでこの分量ではなく、意地でもこの分量にしてやるつもりだったので。内容なんてモノは、ないよ! まぁ、300枚ものなら出だしだから、初っぱなからとばしてもねぇ。まずは序の口、探りぎみ。といって、のこり280枚も書ける予感はまったくしないけど。てか、書こうとも思ってないけど。
語彙はまぁ、普通ですよ。にやり。



>べらんめいさん
……まちがえた、のんべいさん

意気込みなんてもなぁ、まったくないす。
コメント欄に書いたとおりす。
20枚以内でぱぱっと書いてぱぱっと読めるものというのが前提。しかも、前に書いたヤツの部分的な焼き増しな感じもしなくもなく。
川原は僕の定番舞台。蟲と丑は前に使ったキャラ。月の雫は、まったくの思いつき。なーんも考えなくても書ける取り合わせです。
まぁ、今回は、長編に挫折したので、とりあえず、何でも良いから、考えずにすかっと書ききりたかったというのが本当のところ。
展開も演出もなーんも考えずに、一文目書き始めました。とりあえず、月だなと思って。まったく、そんなけのもの。きちんと、傾向と対策を示していていただいちゃって、なんだか、申し訳ないくらい。
まぁ、蟲も丑も長台詞吐くようなキャラじゃない気もしなくはないけど。なんかこう、見せ場を作ってやんないとねぇ。……続くのかな? 続かないのかな。 自分に興味津々。
No.7  のんべいキャサリン  評価:30点  ■2011-03-31 22:03  ID:8RZFFJ7S5.E
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読ませていただきました。
おまけがつくところからも筆者の意気込みを感じさせられます。
蟲をはじめキャラクターが心にしっかりあるのでしょうね。
文章もしっかりしていて好感を持てました。

改善点を言うならば会話文でしょうか?
短文の会話で登場人物がからんでいますが、印象的な逸話などを挟んでもう少し長文でのやり取りがあっても良いなと思います。
俗に言う「セリフで動かす」なんてことです。

何はともあれ良い作品をありがとうございました。
No.6  昼野  評価:30点  ■2011-03-31 00:37  ID:MQ824/6NYgc
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読ませていただきました。

文章もキャラクターも魅力的ですね。特に蟲のキャラクターが好きです。
難を言えば、構成がアクション中心で、ドラマ性が稀薄な感じで、いまいちキャラクターが描ききれてない感じがしました。蟲というキャラクターがどういうこと考えてる人なのか、とかもっと掘り下げて欲しかったです。
語彙が僕にとってはむずかしい感じですが、世界観の雰囲気を出すのに寄与してるなと思いました。いっそのこと難しい語彙をさらに増やして、ゴテゴテにしてみるのも面白いかなと思います。読者は減りそうですが…。
点数は40に近い30です。
No.5  G3  評価:30点  ■2011-03-30 23:26  ID:wfVGn00IRSE
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読ませて頂きました。正直、内容がよく掴めませんで3回ほど読ませて頂きました。文章フェチの方にはたまらんのかもしれませんが、現在の私には少々冗長に過ぎた気がします。そうこうしているうちに追加されたおまけの方がむしろ解り易かったかと。できれば、二人が争ったモノの正体をもう少し語って頂きたかったです。役にも立たない感想で申し訳ない。
No.4  Phys  評価:40点  ■2011-03-30 09:39  ID:PwBtA6fFHnY
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拝読しました。

こんにちは。おさんに感想を書くのは初めてかもしれません。溢れんばかりの
想いを平凡な言葉で伝えたいと思います。

印象として、シャープでクールな小説でした。文そのものがお上手なのは言う
までもないですが、不気味さの演出や戦闘シーンの臨場感溢れる描写には息を
飲みました。月光に照らされ、水面に浮かぶ二人の少年の影が脳裏に浮かんで
くるようです。
>こいつ、まこと、人か。
この一文だけで、蟲さんの雰囲気をありありと肌に感じることができました。
こういう『台詞で映像的な情報を伝える』ことが私にはできないので、勉強に
なります。

>「やめややめや、もうえぇわ、あれはオマエのもん。それでえぇわ」
>「最初からそう言っている」
殺伐とした雰囲気が落ち着くこの一節も、絶妙な呼吸というかリズムでした。
(あれ、なんか台詞ばかり褒めています……?)

まぁ、そういった諸々の分析的なことは正直私の中でどうでも良くて、
ああ、すっごい。めっちゃかっこいい……。どきどき……。
と言いたいです。毒だとか艶を感じます。

おまけ、の方も楽しませてもらいました。蟲さんの正体が気になります……。
彼は何者で、『思いを汲んで成長するもの』とは何なのか、謎がいくつか残さ
れています。それを紐解くのかと思っていましたが、まだ引っ張るのですね。
ひどいです。読後の強烈な引きはひどいです。続編に期待しています。

また、読ませて下さい。
No.3  お  評価:--点  ■2011-03-29 23:27  ID:E6J2.hBM/gE
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返信です。

>楠山さん。
げへげへげへへ。
てへ。てへてへてへ。
うひゃひゃひゃひゃー。
どもども。

>HALさん
どもども。
あー、セリフっすね。僕は、今回の中で、お気に入りのセリフがふたつあります。そのうちの一つですねぇ。僕の壺に、HALさんがはまってくれて、うれしいです。
えー、気紛れで、おまけ、書いてます。舞台設定がちゃっと定まってないので、あくまでおまけ。独立して投降するほどもないから、ここにくっつけました。もう、一つ二つは書くかも。そうこして、舞台設定が整ったら、ちゃんと書こうかな。


そんなことで。感想寄せてくださった方々、どうも、ありがとうございました。
No.2  HAL  評価:40点  ■2011-03-27 22:43  ID:FC5Grk/FMjQ
PASS 編集 削除
 拝読しました。

 語り手の呼吸が紡ぎだす暗く妖しい情景と、丑の元気さ・力強さがとても対照的でした。
> 「人の世の怨み節なんぞ、このオレが背負うたるわ」
 このセリフ、すごく好きです! 男前!

 面白かった! と思うのと同じ強さで、もっと読みたい、と思います。せっかくこれだけの設定とキャラクターの魅力を展開されたのだから、このあと二人がどうなるのか、生まれてきたものがどうなるのか、彼らがどうしてそれを求めたのか、読んでみたいです。
 だけど、あとがきからすると、少なくともすぐに書かれるおつもりはないのでしょうか……。自分には、資料をあたって時代物を書く根性の持ち合わせがないのに、ひとさまには読みたいというのも、なんだか無責任かなあと思いつつも、でも読みたいです。

 いつもながら拙い感想、どうかご容赦くださいますよう。
No.1  楠山歳幸  評価:50点  ■2011-03-27 20:58  ID:sTN9Yl0gdCk
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 拝読しました。
 
 かっこいい! めっさかっこいい! 僕が女性なら惚れています。
 読みやすい上に脳を揺さぶるような文章、本板で読ませていただいたことに感謝します。雰囲気という言葉では足りない、古都の独特の空気と霊的な(?)空気を堪能させていただきました。舞台が川原と言うところも、独特な世界を上乗せしていると感じました。
 台詞が関西弁なのも良かったです。歴史ものって専門用語で押しているようなイメージもあるのですが、この空気の中ではかえって邪魔だと思います。

 僕的には50点では足りないです。と言うより、僕みたいな素人が評価なんておごがましく思います(いっそ無評価?)。

 変な感想、失礼しました。
総レス数 12  合計 320

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