相合傘がしたい |
今は梅雨の季節、今日もまた雨降りです。私は学校帰りに、また俳句を考えながら傘をさし、歩いていました。しとしと降る雨の音、けろけろ鳴くカエルの声、色とりどりのあじさいに、ゆっくり歩きのかたつむりさん。雨の日は俳句に書きたいものが沢山あります。 良い句を思いついちゃった!そう、私が弾んだ気持ちになった時、兄様とばったり出会っちゃったのです。「兄様、傘持っていないんですか?」そう私がきくと、兄様は「傘は別にいいんだ」と言ってにこっとしました。「駄目ですよ。風邪をひいてしまいます。私の傘に一緒に入ってください」そう言って、私が傘を兄様に近づけると、「別にいいんだって」と兄様は、ひょいとどけたのです。 以前何度も私と一緒に相合傘で歩いたことがある兄様なのに。どうしてでしょうか。そうです、きっと恥ずかしいんですよね。だから、ちょっと歩いて人通りの少ない通りに来て「ここだったら、いいですよね」と言っても、「本当に別にいいんだよ」と言う兄様。 私、なんだか寂しくなっちゃいました。家に帰って、部屋に入って今までつくった俳句を見て、私はだんだん不安になってきました。もしかしたら、兄様はもう私のことなんて嫌いになっちゃったのかも。だって、今までは相合傘に一緒に入って、雨のお歌を一緒に歌ったりしていたのに。もしかしたら、これからはもう兄様と一緒に綺麗な風景を見て俳句をつくることもできなくなっちゃうかも。 どうしよう、どうしよう。不安で胸がいっぱいで、夜もあまり眠れませんでした。でも、次の日の朝「あーあ、昨日せっかく雨の中歩いたのに風邪ひけなかったな。それに今日に限ってなんで晴れちゃったんだろう。」と嘆いている兄様がいました。理由を訊いてみたら、今日は兄様は学校で体育の時間にマラソンがあるのですって。そして、風邪をひけばマラソンが休めるから、雨にぬれて風邪をひこうとしていたんですって。それがわかり、ほっとしました。でも、兄様ったらこんなに私を心配させて。ちょっといじわるな兄様だと思いませんか? |
ぽえむ
2011年02月25日(金) 12時54分28秒 公開 ■この作品の著作権はぽえむさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.3 ぽえむ 評価:--点 ■2011-03-04 10:13 ID:W/mrYGKaFBM | |||||
私は、弟が2人いるのですが、 かわいらしい妹がいたらよかったのに、 と思うことがよくあります。 だから「こんな妹がいればいいのに」 と、物語りに書いてます。 なんだか、自分では思ってもいなかった ダメなところを指摘されるので、 とても勉強になります。 コメント、本当にどうもありがとうございます。 |
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No.2 シロクマ 評価:20点 ■2011-03-04 08:04 ID:26VugPo02oQ | |||||
読了致しました。感想になります 読んでみた感じ、最初は雰囲気を掴みかねたのですが、だんだん調子が分かってくると情景が思い浮かびました 次いで、オチに入ると「ん?」と、兄様とマラソンが結びつかず、ちょっと解釈に悩みました 私は「マラソンが第一の理由だけど、照れてるのが第二の理由」なのかな、と思ったのですが、どうなんでしょうね なかなか好ましい作風で、楽しかったですよ |
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No.1 お 評価:30点 ■2011-02-26 19:33 ID:E6J2.hBM/gE | |||||
くぁわいい。 これだけのお話なのに、妹ちゃんの表情や仕草がいきいきと浮かんできますね。かわいらしい。 会話言葉の丁寧さがちょっとレトロな雰囲気を醸しますね。そでも、可愛さを裏付けしている。 反面、兄貴の方が、ちょっと扱いが淡泊かな? なぜマラソンいやなのかを踏まえた上での傘拒否という仕草の描写だったのかな? いずれにしろ後ろめたいだろうから、ちょときょどってるくらいでも良かったんじゃないかなぁと思ったり。普段大人びたくらいに落ち着いた優しい兄様なのに……? みたいな。 最後の語りかけも良いですね。可愛らしさと微笑ましい感がそこに収斂してますね。 瞬間の切り取りがとても素直で、語り口も、やさしく温かで、作品そのもの=作者さんの優しさが二人の登場人物を包み込んでいるようにも思えますです。 ところで、今回のお話と前回のお話はとくに繋がりはないみたいだけど、どうでしょう、例えば、ちょっとレトロな時代のひとつの家族を中心に連作として描いていくというのは? ひとつひとつはほんの瞬間のことだけども、瞬間を連ねていけば、家族という大きな物語になりそう。 そんなことも、ぜひご一考。 |
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総レス数 3 合計 50点 |
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