少女の歌声
 魔女狩り(仏:Chasse aux sorcieres、英: Witch-hunt)は、中世末期から近代にかけてのヨーロッパや北アメリカにおいてみられた魔女(sorcieres、 Witch)や魔術行為(Witchcraft)に対する追及と、裁判から処刑に至る一連の行為のこと。十五世紀から十八世紀までにかけてみられ、全ヨーロッパで最大四万人が処刑されたと考えられている。


 伝承、伝説、これはその類いの物語


 ある少女の話。

 彼女は町外れにある小さな小屋に一人で住み、木の実などを採って生活していた。

 長く美しい金糸の髪はまるで月の光の様で、青く澄んだ瞳は海のようだった。
 彼女は毎日、町の広場で歌を歌っていた。
 その声は風の様に爽やかで、春の日差しのように暖かく、聞く者を包み込んだ。

 彼女の歌には不思議な力があった。
 それは、聞く者の体や心を癒し、皆を幸せにした。

 彼女は自分の歌の力を自覚し、そして理解していた。
 歌を歌う度、彼女の命は磨り減った。

 一度は歌を止めようと思った。
 しかし広場には、雨の日であっても沢山の人々が安らぎを求め集まっていた。
 皆、心や体に傷を持った人々だった。

 皆に幸せになってほしい。
 皆に笑顔でいてほしい。
 
 彼女は自分の命が消えるまで、人々を幸せにしようと思った。
 それが、自分の力の意味であり、神の願いだと思ったからだ。


 毎日、彼女は歌い続けた。
 少しでも長く、少しでも多く。


 ある朝、目が覚めると視界がぼやけていた。

 目が見えなくなってきていた。

 いや、目だけではない。
 体の節々が痛い、音も聞こえにくい。

 彼女は恐怖した。

 気が付くと体は震え、涙が溢れていた。
 まるで、死がゆっくりと近づいてきているようだった。
 恐かったが、傷ついている人々の事を思うと、独りでに足は町の方に向かっていた。
 町に着くのに何時もの倍の時間かかった。

 そして広場に着くとおかしな事に気が付いた。
 人が誰もいなかった。

 瞬間、誰かの声が聞こえた。

 「捕まえろ」

 衰弱した体に抵抗する力は無く、彼女は広場の中央に立てられた杭に縛られた。

 何が起こったか分からず困惑する彼女に警帽をかぶった男が紙を読み上げた。
  「民間の証言から、不思議な歌で傷や病を治した事は明らか、これを、魔術と断定し、異端審問の必要性は皆無、直ちに刑を執行、刑火炙りー ローマ法王庁」

 彼女は自分が置かれている状況を理解した。
 一度、魔女と疑われると、何を言っても駄目だという事を彼女は知っていた。

 そして周りを見渡すと、町中の人々が広場に集まっていた。
 
 人々は彼女に石を投げつけ罵声を浴びせた。
 意識が遠のく中、彼女は考えていた……。


 そして敷き詰められたワラに火が放たれた。
 火が放たれると人々は息を呑んでその様子を見た。
 静まる広場にパチパチとワラが燃える音だけが響いていた。

 その時、静かに彼女が歌い始めた。

 彼女の歌声は広場に響き渡った。
 その歌声は水面の波紋が広がるように、まるで人々を飲み込んでいくようだった。

 数分前まで、罵声を浴びせていた人々は膝を折り泣き崩れていた。
 十字架を片手に祈る者さえいた。
 前列に居た者は火を消そうと必死になったが、火の勢いは増し手をつける事が出来なかった。

 炎は彼女を包んだ。

 長く美しかった金糸の髪は燃え、青く澄んだ瞳は黒煙の中に消えた。

 彼女は燃え盛る火の中で一瞬の濁りも無く、歌い続けた。


 そして歌声は煙と炎の中に消えた……。



 この日を境に三世紀にも及ぶ魔女狩りは幕を閉じた。


 伝承、伝説、これは歴史書物には書かれていない物語。
1002
2010年12月16日(木) 19時07分49秒 公開
■この作品の著作権は1002さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 何度も見直して完成した童話です。
 この度この童話を短編または中編ぐらいの長さに作り直そうと思っています。
 しかし、あまり長い作品を書いたことが無いので皆さんの意見を聞きたいと思います。 
 1−この小説の評価。
 2−誤字、又はおかしな表現。
 3−短、中編を書くにあたって気をつけたほうがいいこと。
 最近叔父に文才が無いとの指摘を受けて、見返してやりたい気持ちでいっぱいです。
 どうか皆さんの知恵をお貸しください。

この作品の感想をお寄せください。
No.8  1002  評価:--点  ■2011-01-17 02:16  ID:0AQwZ7VS.L2
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 いるまがわ さん 
 感想、アドバイスありがとうございます。
 この文の文末がほとんど同じなのは昔話のような感じを出したくてやりました。
 です、ます、調は挑戦したいと思いますが最近はなかなかストーリが出ません。
 アドバイスありがとうございます。

 中佐世保 さん
 感想ありがとうございます。

 今短編考えてますが、、、、思いつきません。
 厳密には思いつきはするのですが、なんというか、ちょっとラノベ気味になったので中止しました。 
 この作品はこのままで良いのかもしれませんね。

 とにかく最近はアイディア不足で、、、。

 頑張っていきたいと思います。
 そして感想、アドバイスありがとうございました。
 
No.7  中佐世保  評価:20点  ■2011-01-11 22:39  ID:dDNaw5buW96
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 これはこの長さでいいのでは? むしろ省くところがあるぐらいで。この作品の内容で文章を付け足していっても、意味はないと思います。短編、中編に直すのであれば、新たな縦軸を用意しないと、読む人は味気無さを感じると思いますよ。
 このお話は好きなので、作者さんの今後の作品に期待したいです。
No.6  いるまがわ  評価:40点  ■2010-12-20 22:35  ID:.ZAC8AFY9y.
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こんにちは。
私はアイデアが上等なら、オッケーという立場です。
素晴らしいアイデアで、書きようによっては大化けする話だと思います。

書き方ですが、ほとんどすべての空行を、一度とっぱらってみるのはどうでしょうか。空行に頼らない文章を書けるのが、文才だと思いますよ。

> 彼女は自分の歌の力を自覚し、そして理解していた。
> 歌を歌う度、彼女の命は磨り減った。

最初から歌の力を自覚してるのはオッケーなのですが、その後が唐突です。話を広げるならここでしょう。この作品に欠けているのは、具体的なエピソードです。魔法をかけられたとか何とか、アイデアをひねる必要があると思います。

> 一度は歌を止めようと思った。

ここもそうです。お話というのは、具体的に書かなくてはならないのです。エピソードとしてきっちり書くと、生き生きとしてくると思いますよ。

あと、小説ならば動機がしっかりしてないと駄目なのですが、童話だと必ずしもそうではありません。人々の為に歌うのはヒロインの属性として動機なしでもオッケーだと思います。ただ、やはりもっと具体的に書くべきでしょう。

命が削られていくことと、魔女狩りは関係ないことのように思えますが、実際は、前者がミスディレクションになっていて、魔女狩りで意表を突かれました。私が一番評価したのは、そこです。

文才とありますが、例えばこの作品、文末の語尾がほとんど同じです。そのへんを推敲するだけでも、ずいぶんと変わりますよ。いっそ、ですます調に挑戦するとか……。
頑張ってください。

No.5  1002  評価:--点  ■2010-12-19 14:12  ID:0AQwZ7VS.L2
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 お、さん 感想ありがとうございます。
 覚えてもらえていて嬉しいです。
 文字数が少ない分シンプルになり過ぎていたと思います。そこのところを気をつけて短編に挑みたいと思います。

 HONETさん 感想ありがとうございます。
 対象読者は曖昧に考えていたので今回制作するにあたってよく考えていこうと思います。
 冒頭の説明表記に関しては、物語に入る前の、なんと言うか、雰囲気作り?かな。
 ひとまずこれはスタイルってことでおさめていただけたら助かります。 
 やはり皆さんの感想を見て思ったのは、文字数が少ないと凄く曖昧な物語になってしまうということですね。
 ここを気をつけて物語を掘り下げていこうと思います。

 あや あつし さん感想ありがとうございます。
 周りの風景、少女の人格、それを取りまく環境。
 読み手がもっとハッキリと状況を把握できるような物語りを作ろうと思います。


 この度は感想、指摘、アドバイス、とてもためになりました、
 短編が出来たらまた投稿しようと思いますのでそのときはよろしくお願いします。
No.4  あや あつし  評価:50点  ■2010-12-18 14:28  ID:n/TBWkEwj6A
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誤字がありました。ごめんなさい。
No.3  あや あつし  評価:20点  ■2010-12-18 14:27  ID:n/TBWkEwj6A
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拝読させていただきました。
思うのですが、超短編と言える短いお話はご自身が伝えたいことをはっきりと書かれたほうがよいのではないかと……。このお話のメッセージ性は周りの人たちにあるのではないでしょうか?「魔女」の疑惑をかけられた主人公に対して豹変した周りの人たちの態度、主人公の気持ちと周りの人たちの気持ちのコントラスト、それを書かれたら物語の重みが増したのではないかと思います。超短編だからなおさら、そのことを全面に押し出したほうがようと思います。
立派な、お話の育て上げてください。
No.2  HONET  評価:20点  ■2010-12-17 22:10  ID:PXdx.MJ.3aM
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 はじめまして。読ませていただきましたので感想を。
 童話、というジャンルに関しては疎いところがありますので、これからの発言の視点がずれていたならば申し訳ありませんが、と先に謝っておきます(笑)
 この作品は、対象読者をどのあたりに置いているのか、それがまず1点気になりました。
 たとえば、冒頭では英語やフランス語標記を辞書のように配置していたりしますが、正直に言えばこれはなんのためにあるのか疑問でした。その後の展開にこの標記が活かされているとも思えませんし、読者層をどこと見込んでこのような演出を何のために行っているのか、そういった文章の意図が全体的に見えにくいように思います。
 物語の展開としても、少女の持つ「力」が唐突に現れた感もあり、全体のバランスが取れていないようにも感じました。たとえば、少女の「力」をゆっくりと読者が感じられるエピソードを追加するという手段も効果があるかもしれません。
 展開としてはもう1つ。「少女は歌うと何かを失う」という設定が、ラストの「少女が魔女として処刑される」エンディングにうまくリンクしていないように感じました。“いったい何のために歌い続けたのか”。物語の主人公として少女を置く場合、そこは外せないように思うのですが、どうでしょうか。
 全体の感想としましては、非常に曖昧な物語、と言いましょうか。厳しく言ってしまえば「ああ、うん、ありそうだよね」という部分に物語が留まっていて、この作品だからこそ味わえる何か、という点が非常に薄く感じられた点が残念でした。といって、この作品が駄目というわけではありません。この物語をベースに、作者さんが書きたいことをどんどんと盛り込んでいけば、物語はさらに発展していくように感じます。これからボリュームアップをするにあたっては、物語のどこを深く掘り下げていくのか、そこを考えてみるといいのではないかなと思います。
 乱筆、失礼いたしました。
No.1  お  評価:20点  ■2010-12-16 22:56  ID:E6J2.hBM/gE
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こんちわ。
これは、前にもTCにUPさていた作品ですよね。
あんときと、感想書いてること変わってたら、ごめんなさい。
ということで……。
うーん。
主題がわかりにくいなぁ。
メッセージ性があるように思えて、何を言いたいのか、よく分からない。
うーん。
人間の業かな。
まぁ、だけど、それにしても。
人間をステロタイプに見過ぎているというか、うーん、群衆が、作者の意図を反映したただの人形というか、プログラムされた背景のように思えてないらないのは、僕だけかなぁ?
どうも、主人公だけしか見てないなぁと思えちゃうわけです。
中短編にするなら、もう少し周囲との相関とかとかを掘り下げていかないと、薄っぺらな話しになってしまいそうですね。
群衆も、一人一人、生きた人間なのです。
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